第四話 ネオ・アルカディア (未来編)
当たり前の幸せとはなんだろう?
美味しいご飯をお腹いっぱい食べる事?優しい友達に囲まれてはしゃぐ事?親からの愛情を受ける事?幸せとはみんな平等にあるものでは無いの?
痛みは愛情?暴言は愛情?苦しい実験は愛情?
愛情じゃ無かったらどうして私にするんだろう?
バンッバンッバンッ
銃声が研究所に轟く…
「お願い…止めて…死んじゃうよ…」
「type εごときが…黙れ!死ね!死ね!」
仲間達の悲痛な叫びが轟く…
ハッキリ言って此処は地獄だ…私達、超進化人類にとっては…
7892年11月27日 水曜日
私の名前は梨花、名字は…分からない、だってお父さんとお母さんの下の名前しか知らないもん…
でもね!私はよく type ζって呼ばれてるから、名字はゼータ?なんじゃないかな?
耳を澄ませてみて…!研究所の人が来たよ!
「type ζの様子はどうだ?こいつの友達のtype εの状態は?」
聞いた!?イプシロンちゃんはね、生まれた頃から仲良しの友達なんだ!将来の夢は一流の女優さんなんだって
「type εか…もう、役に立たないからな、超進化人類のコアだけ取って、本体は処分したよ」
嘘でしょ?私達超進化人類にとってコアは命の源なんだよ?!取っちゃったら死んじゃうよ!?
殺してやりたい…でも…出来ない…お父さんとの約束を破っちゃう…人を殺す事は絶対に駄目だって…
「次は…ζか、こいつはなかなか使えるからな、
実験室に連れて行くぞ…」
実験室!?嫌だよ…また、あんな痛い思いするなんて、私達超進化人類が何をしたって言うの?
「主砲。副砲。発射!!」
大きな鉄球が飛んできた。重さは10トンあるらしい…それを私達超進化人類が唯一使えるサイコキネシスで弾道を変えろなんて…出来ないよ
バキッ…メキメキッ
「痛いよ…!!もう、止めて…」
私は当たってしまった、手足を拘束された状態で動けず、サイコキネシスだけで弾道を変えて避けるなんて…出来る訳無いよ!
「なんだ?もう限界か?まだマッハ7だぞ?
超進化人類ならマッハでも弾道を変えれるだろう?」
「室長…超進化人類とはいえ、まだ生まれて6年ですよ?しかも滅多に生まれてこないtype ζですよ?それならまだ幾らでも替えがきくtype εでやった方が…」
イプシロンちゃんの替えだって…?そんな物無いよ!イプシロンちゃんはイプシロンちゃんなの!
私の唯一の友達だったのに…
「悪いが、type εは実験で全て使ってしまってな
もう、ストックが無いんだ、type αとtype Δを使う訳にもいかんしな」
イプシロンちゃんだけにも留まらず…アルファさんとデルタさんにも手を出すって言うの!?
あの二人は室長、あんたの事を自分の本当の親だって思ってるのよ!?そんな純粋無垢な子供を騙すなんて、このゲス外道が…!
「なんだ?type ζそんなにも私が憎いのか?そんなにも私を殺したいのか!?お前達は超進化人類だ…悪いが憲法は通用しないぞ?お前の味方は誰も居ないし、お前は全人類の敵だ…」
こいつ…これで完全に分かった…こいつは私達超進化人類の事を道具としか思って居ない…この拘束が解除されたら、命は無いと思え…
「実験再開だ、次はマッハ20で打て」
「了解」
バキバキッ…メキメキッ
私の骨が砕けた瞬間、物凄い痛みが私を襲った
「覚えてろ…恨みは、この痛みで身体に刻み付けたぞ!!!!」
室長は嘲笑った
「人を恨むのは構わんが、まずその拘束を解除しないとな!何も出来ないぞ、type εみたいにな!」
その時、私の中の何かが壊れた、ずっと抱えていた何かが壊れた
私の中に"本能"が目覚めた
7896年12月○日 ○曜日
「type ζ、実験だぞ、早くしろ」
また実験か、勝手にしろ…何も見えないんだ…
手足も拘束されて、頭に制御装置を付けられて…
頼れるのは聴覚だけだ
「次はマッハ49行きます、発射!!」
バキバキッ…ドカーンッッ
「ぐぁ"ぁ…ゲホッゲホッ…」
研究者は残念そうに言った
「超進化人類だろ?サイコキネシス使えよ!この悪魔が…」
悪魔だって…?私が超進化人類だからって、実体実験をして、いじめ抜くお前らの方がよっぽど悪魔じゃないか!
ブーッブーッブーッ
警告音が鳴り響く…また誰か脱走したか?さしずめtype Ψが脱走に失敗して見付かったって所か?
「大変だ!何者かにハッキングを受けて、制御装置が勝手に解除された!!」
ガシャンッ
制御装置が外れた私は真っ先に室長の顔を見てやった…青ざめている、待ってろ!私が今すぐ楽にしてやるぞ!
手足の拘束が外れるなんて久しぶりだ、いや、生まれた瞬間から拘束されてたから…これが初めてか!実に気分がいいな!
「ま、待て…!まさかζ、此処の室長である私を殺す気か?!良いのか?!私を殺せば人殺しだぞ?!人は殺したら駄目なんだぞ!」
慌て過ぎてこいつ…小学生みたいになってるな…
本能が囁く…
(殺してしまおう、こいつは生かしてはおけない…嬲り殺せ、大丈夫だ、こいつは"人間では無い")
ザシュッドグジュッ
瞬間、室長の首が吹き飛んだ、私は本能の声に逆らえない…
「此処の警備はザルだな、リーダーシップである室長が死んだのがそんなにも悲しいか?
イプシロン…待っててくれ、必ず人類を滅ぼしてやるからな…」
「居たぞ!撃て撃て撃てぇぇ!」
ズドドドドドドドドド
「そんな鉛の玉で私を止められるとでも思っているのか?生憎、私はマッハ50で鉄球を食らっていたからな…あの時とは違うんだよ!」
私は、銃の玉を全てサイコキネシスでねじ曲げ
警備隊の連中に当てた、警備隊は全滅し、残りは研究者だけとなった
「ヒィィ!?許してく…」
ザシュッドグジュ
「哀れな奴だな…敵に命乞いとは」
この時私は油断していた…
ズドオォォォォォォォン
「ぐぁ"ぁ…狙撃か!!!!!」
私は右目をやられた。みるみるうちに私の視界は赤く染まり、私は意識を失った。
7896年12月○日 ○曜日 兵庫県
「ここは…何処だ?確か研究者は神奈川県にあったから…」
本能が囁く…
(お前が気を失った後大変だったんだぞ?追っ手はくるわ、射撃されるわ、死ぬかと思ったぞ…)
「それは、災難だったな…!?どうしてお前が私の身体を動かせるんだ?!」
(どうやら…お前が右目を撃たれた時に弾がコアに当たり、真っ二つに割れてしまったようだな、原因はそれだろうな)
弱った…弱ったぞ。これじゃ不意に頭に衝撃を受けたら、一定時間こいつに自我を乗っ取られるのか…
「お前!大丈夫か!?その右目…病院に行った方が良いぞ!」
誰だ?こいつ…見たところ同い年っぽいが…
「お前には、関係無いだろう…とっとと帰れ」
少年は怒った様に言った
「怪我人を放っておけるかよ!ついてこい、病院に行くぞ!」
「あぁ…!わかったから、手を離せ」
不覚にも、ちょっと心がキュンとしてしまった…
人間にここまで優しくされるなんて…初めてだった。
治療を終えた私は少年にお礼を言い帰ろうとした所、声をかけられた
「お前、名前なんて言うんだ?俺の名前は伯斗って言うんだ、言い名前だろ?母ちゃんが付けてくれたんだ」
母親か…久しぶりに聞いたな、結局私は両親に会え無かったからな
「梨花…だ、名字は名乗る必要は無いだろう」
「梨花か、梨花ちゃんって呼んで良いか?」
なっ?!梨花ちゃんだと?!馴れ馴れしい奴だな
「か、勝手にしろ…」
こんなに人間でときめいたなんて初めてだ
「お前、明日暇か?俺さお前に見せてあげたい所が沢山あるんだ!楽しいぞ」
この人なら…信用しても良いのかもしれない…
どれだけ人間を恨んでも、どれだけ人間に恨まれても、一人ぼっちは辛いんだ…
「じゃあな!明日の午前9時に此処で待ち合わせだからな!」
伯斗は走って行ってしまった…さて、住み処を探さなければ…
本能が囁く…
(今日寝る所を探しているのだろう?だったら簡単だ、そこら辺の人の家を奪ってしまえばいい…お前にはそれが出来るだけの力を持っているんだからな)
人を殺すなんて…そんな事許される事じゃあ無いぞ!
(何を言っている?この世に人間なんて居ないだろう?いるのは超進化人類と悪魔だけだ)
私は本能には逆らえなかった…
私は人間を殺していない…そう信じたかった。
血にまみれた人間に幸せなんて訪れないのかもしれない…だけど私は運命に抗ってやる…!奇跡っていうのは待つ物じゃ無い…奇跡は起こす物なんだ!私は負けない、たとえ神に見放されていたとしても、私は人間を駆逐してやる…
次の日の朝
「やっぱり来てくれたんだ!早速行くぞ!時間は有限だからな」
「勘違いするなよ…別に楽しみで来た訳じゃない、お前が可哀想だから来てやったんだ…!」
本当は私は楽しみであまり眠れなかった、それと死体が私を見つめて、見つめて離さなかったから…眠れなかった
水族館
「着いたぞ!俺のお気に入りの場所だ!綺麗だろ?俺のオススメは…言うまでも無かったか…」
「わぁ!凄い…凄いよ!この魚めっちゃ大きいよ!あ!この魚は鋭い歯が…」
ハッキリ言って私は人生で一番楽しんでいた…
本当に魚を見るのが楽しくて…少しだけ、嫌な気持ちが無くなった気がした…
伯斗は子供の様にはしゃぐ私に呆れながらも私のペースに合わせてくれた
「本当に変な奴だな、たかがエイごときであんにもはしゃげるなんて…今まで魚を見た事が無かったのか?」
「うん…今まで、私ね魚を見た事が無かったんだ」
伯斗は嬉しそうに言った
「だったら、目に刻み込めよな!なかなか入れないからな!」
私達は時間を忘れて遊び回った、正確に言うとはしゃいでいたのも、無我夢中に走り回ったのも私だけだったが…伯斗は何も文句を言わずに付いてきてくれた、その優しさだけで私は嬉しかった。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、気付けば私達は帰る時間になっていた
「俺、親が心配するから帰るわ、明日も今日の場所で待ち合わせな!まだまだ見せたい所が沢山あるんだ!」
嬉しさで言葉が出なくなっていた私とは逆に、伯斗は流暢に喋った
「うん!約束だよ!早く明日になってくれないかな!」
すっかり心を許してしまったと気付き後悔したが、私は初めて感じた幸せを手放すなんて…絶対にしたくなかったから…初めて"人間"と出逢ったから、大切にしよう…
「遅いなぁ…どうしたんだろう?まさか…私との約束をすっぽかして、他の女の子とデートしてるとか…?って私は何を言ってるの?!別に…アイツの事なんか…好き…だなんて思ってないし!」
私はもしかしたら、遅刻しただけで後で来ると思い…いや、思いたかったから、私は待ち続けた…夜になっても待ち続けようと思ったが…
見知らぬおっさんに声をかけられた
「君!何をしているんだ!もう、夜中の19だぞ?!子供は早く帰った帰った」
うるさいな…このおっさん、どうやら警察みたいだが、鬱陶しいな…殺してやろうか?
私は超進化人類だぞ?このおっさんには分からないかもしれないが、人類の領域を遥かに超越した究極生命体なのだぞ?その気になればお前なんか即死だ
だが、私の余裕はこの警察によって打ち砕かれた
「どうやら…此処ら辺りに凶悪な殺人鬼が潜んでいるらしい…人の家を襲っては、その家に住みつき、また違う家に…って感じで、今この街は危ないんだ、子供は早く帰りな!」
この警察が言っている凶悪な殺人鬼っていうのは私の事で間違いないだろう…だが、一つ間違いがある、私はまだ"人間"を殺した事はない…
仕方なく、私はこの警察の命令を聞いた、これ以上罪を重ねる訳にはいかない…伯斗に迷惑をかける事になったら私は…本当の悪魔になってしまうかもしれないから。
「もう、そろそろこの家も替え時だな…」
随分久しぶりに本能の声が囁く…
(おいおい、また罪を重ねる気か…?気付いているんだろう?この人達はなんの罪も無いのに、殺してもいいのか?ってな)
何もかも見透かしているかのような話し方をされ、頭に来た私は言い返した
「黙れ!こいつらは人間じゃない!悪魔だ!こいつらは人間じゃない!」
怒った私を宥めるかの様に…優しく囁やいた
(じゃあ、あの少年も悪魔か?こりゃ酷いな!あんなにも自分を大事にしてくれた優しくていい子なのにな!)
核心を突いた言葉だった…正論だった。
あの子も人間だ…他の人間とは何も変わらないのに、ただ私は自分に優しくしてくれただけで人を差別していたのだ、あんなにも恨んでいた研究者の人間と、結局同じ事をしていたんだ…結局私自身も"悪魔"なのかもしれない
「あ……ぁ」
(しまった…つい熱くなってしまった…いいか?これからは私が命令した事に従え、いいな?)
私は考える事が出来なかった…既に私の脳は機能していなかった
「わかった…私はどうすればいい?」
本能は優しく囁いた…
(実験の時に決めた言葉…まだ覚えているか?)
実験の時か…もう、あんな日々に逆戻りなんてごめんだ!
「勿論、覚えているさ…言うぞ?」
「安らぎ求めず生きてこそ、救われるでしょう」
「無言で甘えを消してこそ、救われるでしょう」
「優しさ等捨ててこそ、救われるでしょう」
(よく覚えてたな…感激感激)
「それで?私はどうすればいい?」
(お前はいつも通りにしてればいい、私が替われって言った時に替わればいい。大丈夫さ、悪い様にはしないさ…)
「あ!今日は来てくれたんだ!良かった~」
私が待っていたのは言うまでも無く、伯斗だった昨日は遊べなかったから…今日、沢山遊べるといいな…
「悪いな…昨日さ、親が今出掛けたら、殺人鬼に殺されちゃうかもって煩くてさ~殺人鬼さんも殺人鬼さんだよな、さっさと捕まってくれればいいのに…」
伯斗は何気無く言ったつもりなのだろうが、私の心には大きな棘が刺さった…
「あぁ…そうだね…早く捕まって欲しいね」
私にはこうするしか無かった…もしバレてしまったのなら、この子はきっと私を怖がり二度と近付かないだろう、そうすれば私は言うまでも無く独りぼっちに逆戻りだ…
「さ!早く行くぞ!こんな面白く無い話は終わりだ!後2分でバスが出ちまう!」
やっぱり…伯斗は優しい…研究者の人間なんかとは大違いだ、やはりお前は悪魔なんかじゃないよ
「あぁ!負けた~もう一回!」
伯斗は顔色一つ変えず優しく言ってくれた
「ハイハイ、どうぞ」
「ありがとう!行くぞぉ~」
ふと、疑問に思ったのか、伯斗が質問してきた
「お前、ゲーセンも行った事無かったのか?
逆に何処なら行った事あるんだ?まさか…学校も行った事無いんじゃ…?」
不味い!此処で正直に言ってしまったら…私が超進化人類のtype ζだってバレてしまう!
「いや~?学校には行ってるよ、何せ"普通"の人間だからね~」
私は嘘に嘘を重ねる事しか出来なかった…この人を失ったら私は…生きる意味を失う!
普通の人間だったら…こんな10歳まで生きてきていじめ抜かれた事しかないなんて…私は何の為に生きているんだろう?私は所詮、人類の進化の踏み台でしか無いのかな?
一度でもいいから、普通の人間だって言われたいな…
楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、伯斗はもう帰らなければならない時間になってしまった
「俺な、実はお前に合うのがこれで最後かもしれないんだ…」
そんな!貴方が居なかったら私は…私は…どうすればいいの?!誰を信用して生きていけばいいの?!ねぇ教えてよ!教えてってば!
「梨花ちゃん…止めて…苦しい…よ」
気付けば私は伯斗の首を絞めていた…まただ…時々私は自分をコントロール出来なくなってしまう…これも全部、お前が優し過ぎるせいなんだからな!
「でもな!明日の祭りには行くよ!もう逢うのは
最後になるかもしれないけど…」
それだ!いい事を思い付いた!私が祭りの終わりに伯斗に好きだって告白して、実は親が居ないって事を打ち明ければ…優しい伯斗は私を見捨てないはず…!
「じゃあさ、お祭り一緒に行こうよ!絶対楽しいよ!」
私の希望はいとも簡単に打ち砕かれた…
「ごめんよ…実は他に約束してる友達がいるんだ…その子が二人っきりが、いいって煩くてさ」
そんな…私はどうすれば…どうすれば、伯斗に見捨てられずに済むの?!独りぼっちは嫌だ独りぼっちは嫌だ独りぼっちは嫌だ独りぼっちは嫌だ!!
「梨花ちゃん…止めて…死ん…じゃ…うよ」
まただ、また私は伯斗を絞め殺そうとしてしまった…そうだ…伯斗に私の事を忘れられないようにしてしまえばいいんだ!
「伯斗…最近私は自分が自分じゃ無くなってしまう時があるんだ…だからさ…もし将来私が悪い人になったら…私を殺してくれないか?最後にお願いだ…私はこの3日間が人生で一番楽しくて、一番、大切な日々だって思ったんだ…伯斗しか私は信用出来なくなってしまったんだ」
伯斗は決心したのか、爽やかな笑顔で言った
「わかった!お前がもし悪い奴になったら俺がブッ殺してやるよ!」
安心したよ…これで私は心置きなく"悪魔狩り"が出来るよ…
「…ありがとう」
私はふと、気になった事を聞いた
「そういえば、その友達っていうのは…さ…その…あの…その子はさ!…女の子…か?」
「い、いや、男の子…さ、そう!男の子だよ」
だったら良かったよ…お前に私以外の女は要らないからな…
「そうか!わかった、帰りは電車だろ?見送るよ!」
伯斗は一緒焦った様な表情をしたが、すぐに普通の表情に戻して言った
「そ、そ、そうか!あ、ありがとうな!俺帰るわ!親が心配してるだろうからさ…!じゃな!」
「じゃあな!また明日会おう、絶対だぞ!」
明日が楽しみだ…作戦が上手く行けばいいんだけど…
研究所
「で、被害は間宮室長と警備隊と制御装置一式と
」
研究者は青ざめた顔で言った
「はい、逃げ出した超進化人類が一人…type ζが逃げ出しました…」
社長は怒り狂いながらも、自我を保ちながら言った
「今すぐに連れ戻してこい!生け捕りでな!
type χの使用を許可する!」
研究者は青ざめた顔を元に戻せずに言った
「は、はい!必ずしも、type ζを捕らえて来ます」
コンコン
扉をノックする音が俺の部屋に響く
「入れ」
要件は大体予想できる
「係長!あの…」
やはり、思った通りだ
「要件は分かっている、早速type χの収容所に向かうぞ、万が一に備え各自、武装を怠るな…最悪死ぬぞ」
あっという間についてしまった…いくら相性がいいtype χとはいえ、type ζを殺す事など可能なのか?ただ闇雲に実験材料を無駄遣いするだけ無駄だ…ハッキリ言って、type χがtype ζに勝つ事など不可能だ…あの方は何を考えておられるのだ…?
「type χ起きろ!任務だ、type ζを連れ戻してこい、くれぐれも無理はするな、type χはコアが不安定なんだ…修復は出来ないぞ」
ガンッガンッガンッガッ
研究員が怯えた様子で言った
「係長!この音は…?」
仕方ないから教えてやる事にした
「隣の収容所にいる、type Δが怒ってドアを真空波で叩いているのだろう…アイツは仲間想いだからな、勝ち目の無い勝負をさせる事に不満なんだろうな」
研究員は納得したのか、いい返事をした
「成る程!!納得です」
(私に何か御用ですか…?)
ドアから声が聞こえてきた、やっと起きたか
「type χ任務だ、type ζを連れ戻してこい
(出来れば私の事は卯月と呼んでください…)
めんどくさいやつだな!お前は人間じゃ無いんだから、分類名でいいだろうが…!
「取り敢えず、制御装置を99%解除する」
(ありがとうございます…)
ガシャッガシャッ
「ふぅ、制御装置を外してくれたのは随分久しぶりですね!気分がいいです!」
「それじゃ、早速、type ζを連れ戻してくれ」
「分かりました!…あの、もし、成功したら…
お願いが…」
「分かっている…デートだろう?」
「は、はい!!よろしくお願いしますね!」
不思議な事にそいつは顔を赤らめ喜んだ、こんな中年の何が良いって言うんだ?一応、結婚済みだが…
待ってろよtype ζ、我が研究所の設備を破壊し脱走した罪は重いぞ…
今日は待ちに待った祭りの日だ。
「私はちゃんと伯斗に言えるかな?……言えるさ!だって友達は男の子らしいし、妨害されたりはしないよね…?今夜の19時までの内に練習しておかないと…」
本能が囁く…
(随分浮かれている所悪いが…お前は今日祭りに行かない方がいいぞ)
突然そんな事言われたって私の意見は変わるはずもなかった。
「何を考えているんだ!?今しかないんだ。もしかしたら、二度と伯斗に会えないかもしれないだろう?!」
私はつい熱くなって怒鳴ってしまったが…まぁこいつには丁度いいだろう
(超進化人類の勘なんだが…今夜お前は…)
私はそれ以上こいつと話たく無かったので適当に話を遮って無理矢理終わらせる事にした
「あーあー、聞きたくないね。そんな未来の事なんて。第一、お前の勘違いかもしれないだろう?」
本能は不満そうにしていたが、納得したのか、これ以上喋る事は無かった。
私は知らなかった。不幸にも、こいつの勘が的中するなんて。
同時刻 19時 ○分
私は浮かれながら祭りの会場へと向かった。
告白の練習も完璧にしてきた。失敗はあり得ないだろう!
「どうしようかな~もし伯斗がキスしたいって言ったら。私、そういう経験無いからな~…うふふ」
本能が囁く…が、今の私全くには聞こえていなかった。
(相変わらず。こいつは浮かれているな。研究所のやつに襲われないといいんだが…)
「見つけました!!…ゼータさん。話があります!」
私は突然声をかけられた。
なんだ?同族か。人間だったら即、首の骨を折っていたぞ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい!」
バレたか。無視して置いて行こうとしたのだが、どうやらこいつにはそんな小細工は通用しないらしい。私から話を聞くか。
「なんだ?話とは。内容によってはお前を殺すぞ」
精一杯、脅したつもりだったのだが。目の前に居るこいつは全く怯む事無く自分の意見を主張した。
「貴方には…はぁ…研究所に戻ってもらいますっ!」
やっぱりか。警告だけはしてやろう
「ひゃっ!?」
「動くな。今動いたら、首の骨が粉状になるぞ?首の骨の細胞を全て分解するだけでいいからな」
目の前に居るこいつは、怯えながらも要らぬ勇気を振り絞り言った
「聞きました!…貴方は、沢山の人を殺したらしいですね!…許せませんっ!」
人を殺しただと?勘違いするな。私が殺したのは悪魔だけだ…伯斗は殺していない。
「私は、人間を殺した事など一度もない」
「動かないで!それ以上動くと…首の骨を折りますよ!…貴方さっき言ってましたもん、首の骨の細胞を全て分解するだけでいいんですよね?」
こいつ…!頭に来た!仏の顔も三度までだぞ!!
「チャンスをやろう。今すぐ此処から立ち去れば命は奪わない」
「私は…貴方を研究所に連れ戻します!例えこの体がどうなろうとも…貴方を連れ戻してみせます!」
「貴様…ぐぁ"ぁ!」
瞬間。私は壁に打ち付けられた。この半透明の触手…まさかこいつは…!
「気付きましたか?そう、私は遠距離なら最強の超進化人類ですから!貴方に勝ち目は無いですよ!…えっへん!」
そう、こいつは超進化人類の中でもトップクラスのtype χだ。面白い、殺し甲斐があるな!
「全力で来い!全てねじ曲げてやるぞ!」
私は肝心な事を忘れていた。
「何っ?!届かないだと!?私のより射程が長いのか!?…ぐぁ"ぁ!」
そう。射程だ。どれだけ高火力だろうが、届かなければ意味が無い。何でもいい!こいつの隙を突かないと。私に勝ち目は無いだろう
突然、見知らぬ親子が近付いてきた。
「こら!歩夢!勝手に歩かないの!」
「ママ-こっちだよー此処までおいで~」
これだ!丁度良い所に来たな!此処で私が敢えてこの子供を殺すフリをすればこいつは少しだけでも焦る筈だ!
「うるさい!邪魔だ!死ね!」
案の定、アイツは…
「駄目です!この子は関係無…」
ザシュッッ
決まった!
「あ…あぁ…嫌ァァァァァァァァァ」
私はこいつの左腕を千切る事に成功した。
「どうだ?私が怖いか?」
目に大粒の涙を浮かべながら、こいつは反抗した
「全くです!私…こんなの…全然痛くありません!」
惜しい事をしたな。今の内に残りの手足にキスでもしとくがいいさ。
ザシュッッ
「イヤァァァァ!…こんなの…全然…痛く…ありませんから!」
左足を千切ってやったのにまだ抗うか。
ザシュッッザシュッッ
「ガァァァァァァァ!…痛いよ…痛いよぉ、助けて、助けてよぉ、お父さん…痛いよぉ。
うわぁぁぁぁん!!痛いのもう嫌だよぉ」
これは、これは。傑作だ!もう両手両足全部無くなったな!まるでダルマだな!
「アッハッハッ!どうだ!?これで思い知ったか!?お前とは抱え込んでいる呪いの量が違うんだ!折角だ。あの親子も殺してやろう。」
「ママ…怖いよ。あの子、普通の人間じゃ無いよ…」
母親は、優しく宥める様に子供に言った。
「大丈夫。大丈夫だから…私を信じて。」
何が大丈夫なんだ?!この女は何も理解していないな!
「安心しろ!今楽にしてやるからな…」
「止めて下さいっ!」
まだ意識があったのか。しぶといやつだ。
「邪魔だ。死ね…」
バゴォォォォォォン
「研究所の奴らか…」
私は間一髪躱したが、あれが当たれば私の命は無いだろう。
「はっ、係長自らお出ましって訳か」
「卯月…どうして位置を知らせた後。逃げなかった?」
こいつ。卯月と言うのか。まぁ今から殺すから意味無いがな。
「だって…もし私がゼータさんを捕まえたら、お父さんは私を褒めてくれるでしょ?だから…ごめんなさい」
「馬鹿言え!私は、お前の体の方が大事だ!」
「やっぱり。私が珍しいタイプ・カイだから?」
「違う!お前は、私の大事な娘だからだ!痛い思いをさせてすまなかった。この通りだ。」
茶番劇はうんざりだ…やりたいのなら私が居ない所でやれ!
「死ねっ!χ!…出ない。お前ら、私に何をした!」
しまった。アイツらが撃ったのはスナイパーライフルじゃ無かった。アイツらが撃ったのは…
「そう、それはスナイパーの弾薬じゃないさ、お前のコアに直接作動する神経ガスだ。暫くはお前の得意なサイコキネシスは使えないぞ」
現在時刻は19時12分。しまった。祭りが始まってしまった!早く行かなければ…!伯斗に想いを伝えられないじゃないか!
「悪いが、お前達に構っている暇は無いんだ」
私はさっさと逃げた。祭りに行く為に。
その後。type χがどうなったのかは、分からない。いや、どうでもいい。
「やっとついた…」
時刻は19時39分。少し遅れてしまったが、告白するには何の影響も無い。
「伯斗。何処に居るんだろ……」
私が見た物は想像を絶する物だった…
「嫌だ嫌だ嫌だ!はっくんが引っ越しちゃうなんて嫌だよ!はっくんは私と結構するの~」
私の勘違いじゃなければ。その子は女の子だった。いや、見間違いなんかじゃない。確実に女の子だった。
「あ…ぁ…そんな…」
ドンッ
私の頭に衝撃が走った
見ると30歳位の男が私の頭をぶったようだ。
「邪魔なんだよ!道の真ん中で立ち止まるなってんだ」
駄目だ。意識が保てない。
本能が叫ぶ…
(相棒。どうやらアイツはお前のサイコキネシスを封印したつもりだが、どうやら私の方はサイコキネシスが使えるようだ。大丈夫さ。悪いようにはしないさ。任せておいてくれ)
ザシュッッグシャッドガッバギッッ
「きゃあ!?テロよ!みんな逃げて!」
意識が保てなかった私が最期に聞いた声は恐怖と絶望にまみれた悲鳴だけだった。
「お…おい!起きろよ!起きてくれよ!」
なんだか声が聞こえる。この声は、私が初めて愛した男の声だ。
「此処は?何処なの?」
「良かった。ケガは無いみたいだな」
今、私は伯斗と二人きり。今がチャンスだろう。
「あのね。私、伯斗に言いたい事があるんだ!」
「何かな?何でも力になるぞ」
私は覚悟を決めた。
「伯斗。私はお前の事が好きなんだ!私は初めて自分以外の人を愛した。だから…お願いだ!私と付き合ってくれないか?」
伯斗は一瞬驚いたが、すぐに覚悟を決めた顔になった。
「ごめん。お前とは付き合えないんだ」
「残念でした~伯斗は私と付き合っているんだよ~」
瞬間。私は前が見えなくなった。そんな。また独りぼっちに逆戻りなのか!?
「はっくん~私の事。絶対忘れちゃ嫌だよ?」
私の前にさっきの女が躍り出た。こいつを殺せば伯斗は私に振り向いてくれるかもしれない。
…しかし。こいつは何も関係無いただの一般人だ。本当に殺してもいいのだろうか?
女が私に耳打ちしてきた。
「さっきの騒動。貴方のせいだよね?今此処で私も伯斗も殺すの?」
嘲笑うような、邪悪な笑みを浮かべた。
その時。私は自制心を失った。まともな考えが出来なくなった。
間も無くして。伯斗が乗る電車が来た。
「じゃあな!また神奈川で会おうぜ」
「じゃあね!私の事忘れちゃ駄目だよ」
電車が過ぎ去ってしまった。初めて私が愛した男が私の側から離れていく。私を見捨てるかの如く
あの 女が私を罵るかのように、私に挑発してきた。
「あら、こんな殺人鬼と一緒に居たら死んじゃうわ。私、帰るから付いてこないでね」
ザシュッッッ
首が弾け飛んだ。
「伯斗。すまないな。どうやら私はお前のせいでおかしくなってしまったみたいだ」
私は家に帰った。家と言っても、私が見知らぬ人間を殺して得た、仮拠点だが。
研究所にて
「社長。任務のご報告です」
無論。結果は残酷な様だったが…
「無惨な結果になったのだろう?」
「どうしてそれを?」
どうして社長が戦果を知っているんだ?
「最初から既に決まっていた未来だ。最初はtype χが優勢だったが、何者かの邪魔が入り致命傷を与えられた。そんな感じだろう」
まさか…社長は最初から…
「もしかして、社長は卯月が負ける事を既に分かっていたのですか?」
社長は醜く大笑いした。
「当たり前だ!これは既に決まっている事だからな。type χに勝ち目など最初から無かったに等しい」
私は怒りに燃えた。社長だからといってこいつを殴れない自分が憎かった。
「type Δとtype αの使用を許可する。必ずしもtype ζを連れ戻してくるように」
「分かりました」
あの男。超進化人類を悪魔だと非難しているが、本当の悪魔はアイツじゃないのか?
「それと。もう一つお前に任務がある。type χを処分してこい。」
卯月を殺すなんて!間違ってる。頼むから間違っていてくれ
「手足の無い超進化人類など税金の無駄に過ぎない。あの姿はきっと苦しい筈だ。楽に殺してやれ」
「分かりました。こ、殺してきます」
私は社長室を抜け、医療室へと向かった。
「卯月…どうやら手術をする事になったらしい。ちょっと眠っててくれ」
卯月はこんな私に優しく、まるで女神のような笑顔で微笑んで言った。
「お父さん。私は死ぬのでしょうか?」
どうしてそれを知っているんだ?!偶然かもしれない。バレないようにしなければ。
「違う。お前は死なない。絶対に死なせたりしない」
「そうでしたか!それは申し訳ありません!
では、眠る前に一つ言っていいですか?」
「あぁ、何でも言ってくれ」
卯月はおかしな事を言い出した
「今までありがとう…それじゃ…おやすみなさ…い」
「卯月……許してくれ…」
バンッッ
私は卯月を騙した。騙した上に殺してしまった
「もう、失敗は許されない」
私は、type αの収容所に向かった。
「凄い殺気だ。部屋越しでも震え上がる程に強いなんて。相当人間を恨んでいるらしいな」
バンッバンッガンッガンッ
αがドアを叩く。手足を拘束してるから、己の波動でドアを叩いているのだろう
「type α。話がある」
(知ってるよ。カイの敵討ちでしょ?私にも手伝わせてよ)
「だったら話は早い。早速制御装置の80%を解除する」
(勿論。デルタも一緒に行くんだよね?)
「あぁそうだ。二人でtype ζを連れ戻してくるように」
(了解)
私はtype αを連れて、type Δの収容所へ向かった。
「デルタ。私だよ。係長から任務を与えられたよゼータを連れ戻すんだって」
バンッバンッ
type Δがドアを叩く
(制御装置を外せ。話はそれからだ)
「分かった。装置を外す」
私はtype Δの制御装置を外した。
「随分久しぶりだな…手足が自由に使えるなんてな」
「デルタ。任務の事だけど…」
「アルファか…随分久しぶりに話したな。会いたかったぞ」
二人は生き別れた姉妹のように再会を喜んだ。
「アルファ。早くゼータを連れ戻すぞ」
待っていろ。type ζめ、私の娘をあんな目にした罪は決して軽くないぞ。
「伯斗と別れて、もう3日か…早く会いたいな」
私は伯斗と別れて気持ちが沈んでいたが、時期にそんな事を言ってる暇は無くなる。
「ゼータ。探したぞ。研究所に戻って貰おうか」
こいつらは!?近距離最強の超進化人類のアルファと、スピードだけなら最強の超進化のデルタ!
「黙れ。もう、私は研究所に…ぐぁ"ぁ?」
突然。デルタが波動弾を私に撃った。
「すまないな。貴様が早く連れ戻したいんだ。悪いが、此処で殺られて貰うぞ」
アルファが調子に乗っているのか、嬉しそうな声で言った
「きゃはは!喰らえ!」
ドガァァァン
アルファが私の居た場所に拳を叩き付けた。
私が居た場所は大きな穴が空いていた。当たれば間違いなく一撃で御陀仏だ。
「遅すぎる!」
「くっ……」
私は翻弄されるがままに二人に攻撃され続けた。
もう此処までか、そう思った瞬間。
本能が叫ぶ…
(相棒!私と変われ!絶対に勝って魅せるぞ!)
私は本能と入れ替わった。
「これが、type ζの力か…体に轟くな!」
アルファ?とデルタ?が、私に向かって言った
「きゃはは!貴方、一人で何を言ってるの?もしかして恐怖で頭イカれた?きゃはは!」
「安心しろ。係長がきっと治してくれるさ」
さて。どうやってコイツらを潰そうか。
「それじゃ。全力出させて貰いますか!
"トランスファー"」
アルファ?とデルタ?だったけな。が、目を見開いて驚いた。
「トランスファーだと?!そんな大業を使えるのは、絶滅したtype Σだけな筈…」
シュバババババザシュッッ
「デルタ!?大丈夫?!」
久しぶりだが、成功したようだな。奴の左足を切り落としてやった。
「ぐあああああああああ!痛い…!」
アルファが怯えながら言った。
「もしかして…その技は…」
折角だから教えてやろう。どうせ此処で死ぬから意味無いがな。
「そう。私が使ったのは"カマイタチ"だ」
カマイタチ…空気中の気体を全て斬撃波に変換し相手の身体を斬りつける大業だ。
「そんな…大業使えるなんて…聞いて無…」
シュバババババザシュッッ
「嫌あぁぁぁぁぁぁ!腕が…腕がぁぁ」
「おや?どうやら、間違ってしまったようだ。右腕を斬り裂くつもりだったが…両腕を斬り裂いてしまったようだ」
デルタが痛みに悶えながら叫んだ。
「大丈夫か!?もう私達じゃ勝てない。逃げよう!」
逃げるだと?馬鹿な事を言うもんだな。私が逃がすと思うか?
「そうね…ぅぐ、逃げましょう!」
アルファはデルタを置いて逃げ出した。
「おい!アルファ!私は脚を斬られてしまったんだ!助けてくれ!」
アルファは笑いながら言った。
「ごめんねぇ。囮になって頂戴ね!」
デルタが激怒した様に叫んだ。
「貴様ぁぁぁ!あぐぅ!?」
さて。次の技を準備しなければね
「"トランスファー"タイプ・アルテミス」
途端に地面から沢山の小型ミサイルが飛び交う。ざっと見ただけでも1000はある。
チュドドドドドドドドドドォォォーン
ミサイルが着弾し大きな爆発を起こした。間違いなくアルファは死んだだろう。
「さて。次は、君か」
私は取り残されたデルタを見つめた。
「ヒィ!?頼む。助けて…お願いだから…」
「お前はスピードが自慢のタイプ・デルタだろう?早く逃げればいいだろう?」
デルタは怯えて言った
「どうか、命だけは…お願いしま…」
シュバババババザシュッッッッ
「うるさい。黙れ」
私はデルタとアルファを殺した途端。
「魔力切れか…そろそろ眠るか…」
ピューン、ザシュッ
「な?!…カハッ」
私の胸には大きな光の槍が刺さっていた。
「殺られてたまるか!。トランス…」
私は倒れた。身体に力が入らず魔力回路が断ち切られた。
「すまない…どうやら私は、いや、私達は此処までのようだ…」
私の頭には、伯斗の笑顔が浮かんだ。
「相棒…聞いてくれ。私はあんなにも人間を恨んでいたのに…」
私は胸から滝の様に流れてくる血を抑えながら叫んだ。
「私も、伯斗の事が好きになっていたんだ…!どうやら私達は約束を果たせず死ぬ事になる…だろう…な」
私は意識を失ったが、それはとても心地よかった。鎖から解放された様に私達の魂は消えた…
研究所にて
「社長、ご報告です。type ζを捕獲するのに失敗してしまいました」
社長は笑いながら言った
「どうせ、光の槍で殺してしまったのだろう?」
何故それを?社長は未来が見えるのか?
「被害報告をしろ」
「はい。被害は、αとΔが死にました」
社長は自慢気に言った。
「やはりな!type εを使って正解だったな!」
イプシロン?!昔死んだと聞いていたのだが…
「これで脱走した超進化人類は居なくなったな!人間に敗北などあり得ない!」
社長室には、大きな邪悪な笑いが轟いた。
ネオ・アルカディア 完
(バッドエンド)