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凛子と僕  作者: 空乃すず
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喫茶店

雨の降る日曜日、僕達は喫茶店にやってきた。

先に店に入った凛子は奥のソファ席と手前の椅子の席とどちらがいいか僕に尋ねる。

「好きな方に座りな」

 と言うとやはり凛子は少し悩んで奥のソファ席に座った。

「わ、このソファふかふか!」

 凛子はその座り心地に感動したように僕の顔を見る。

「よかったね」

「じつはソファ席って座ってみたかったんだ」

 恥ずかしそうにもじもじと言う凛子はいじらしかった。

「僕とくる時は聞かなくていいから。好きな方座りな」

「うん!」

 無邪気に微笑む凛子の笑顔は、僕がこの子を守らなきゃという思いに度々させる。

 僕はブラックコーヒーを、凛子はミルクティーを頼んだ。雨で冷えた体にあたたかい飲み物が染み渡る。

「つーくん、ブラック飲めるの大人だね!」

「まぁ、大人だからな。凛子がお子ちゃまなだけか」

「ひどい! お子ちゃまだったらオレンジジュースとかでしょ? ミルクティーは大人の女性って感じするとおもうんだけど」

「ミルクティー飲んでれば可愛いとか思ってんならやめとけ。好きなもの飲みな」

「好きだもん。……ホント言うと、プリンパフェ食べたいけど」

 凛子がポツリと零すと僕は店員を呼ぶ。

「プリンパフェ一つください」

 僕がそう頼むと凛子は目をぱっちりと開きこちらを見つめた。

「いいの? でも一人で食べきれるか分からないよ」

「そのために僕がいるんだろ」

 凛子はこくんと頷き、パフェがくるまでそわそわと落ち着きなく手遊びをしていた。

「おまたせいたしました」

 パフェが運ばれると、凛子は感嘆のため息を漏らした。

「うわぁ、おいしそう。食べていい?」

「どうぞ」

 凛子はプリンをひとすくいし口に運ぶ。途端に目尻が緩んだ。

「おいしい~とろける」

 よくほっぺが落ちそうとか言われるけど、それをよく表している表情だな、と思った。

 凛子が何かをほしいというのは珍しく、思わず頼んだ僕は彼女には甘くなってしまうなと思いつつもそうせずにはいられなかった。

「つーくんも食べて。おいしいよ?」

「じゃあいただきます」

 一口もらうと、凛子の言う通りなめらかで美味しいプリンだった。

「つーくんはチーズケーキ頼まなくてよかったの?」

 メニューには僕の好物のチーズケーキもあった。凛子は自分が食べたいものだけ頼んでもらって気にしているようだった。

「僕は凛子の顔見てるだけでお腹いっぱい」

「なにそれぇー。顔が美味しそうってこと?」

 と凛子は口を尖らせる。当たり前だが凛子の顔が食べたいとは思わない。まぁ、美味しそうにしているという意味ではあっている。

 凛子はアイスと生クリームとプリンの配分を考えながら食べている。僕は少し冷めたコーヒーを啜りながら、残りのパフェを食べる彼女を眺めた。

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