人間相手に親切にしたい魔王3
魔王はなにやら悩んでいた。
「ああっ、人間の女子にモテたいんじゃー!」
いつもの事なので従者はスルー。
魔王は深いため息をついた。そしておもむろに従者に話しかけた。
「美女っぽさを出すためにお前をゲボスタシアに改名したがお前はちっとも色気がないわい」
「なにその無駄な代償行為。これで分かったでしょう。昔の名前に戻しますよ」
こうしてゲボスタシアはゲボリアンに戻った。
ゲボリアンは赤くてエリマキがあってお腹にはカンガルーの子供がいるという思い付きで書いた魔族なので種類は不明だ。オリジナルと言ってもいいぐらいだが先行者に鵺がいるので、その言葉は即却下した。
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それから豆腐に包丁を入れて刺さるまでの時間が過ぎたころ。
「なあゲボリアンよ。わしはもう辛抱溜まらん。人間のギャルにモテたいんじゃ」
「まだ言ってるんですか! 異種族愛は変態ですよ」
「変態と呼ばれてもいい。わしは一度でいいから人間のギャルにちやほやされたいんじゃ」
「キャバクラへ行ってください」
ゲボリアンのお腹の子供が「キャバクラって何?」と訊こうとして、空気を読んで止めた。
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それから納豆の最初の糸が切れる間ぐらいの時間がたったころ。
「なあゲボリアンよ。商売女は嫌じゃ。わしは素でギャルにモテたいんじゃー」
「魔王様は非モテだったんですか!」
「いやワシをチー牛と一緒にするな。見よこの禿げあがった頭。コイン投入口のような瞳、上を向いた鼻、突きでた口、二重アゴ、そしてウサギ耳」
「チー牛ではないですが、魔王様ぶ男だったんですね」
「うぬぬ」
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それから一万年の時が過ぎた。というのを黙読したぐらいの時間が過ぎたころ。
「よし決めた。わしはやるぞ」
「魔王様に言っても無駄ですが、犯罪だけはおやめください」
「モテるために人間に親切にするぞ」
「またそこかい」
魔王は諫めるゲボリアンの忠告にも耳を貸さず、人間界で商売を始めた。
【ダンゴムシ高価買取】
三秒後。
「売れぬ」
「どういう経緯でその結論に至ったか。30字以内で説明してください」
「誰もが始末に困るダンゴムシを高価買取したら」
「なんでそこで終わるんですか!ちゃんと数えてください」
魔王は必死に指を使っていたが、足の指で間に合わないので魔法で指を増やした。見てて気持ちが悪い。
「だれじゃこんな気色の悪い魔法を使ったのは」
「あんたじゃ」
ゲボリアンを始め、周囲にいた全員が突っ込んだ。なぜかみんな針千治さん、じゃなかったハリセンを持参して。
乾いた音が三千世界にとどろいた。
「よし、次の手だ」
魔王は次の看板を作った。
【鼻水つっぺ(栓)サービス部】
「部なんて言葉を付けて青春しないでください」
「いやなんか。甘酸っぱい気分に浸りたくて」
「だいたい鼻に栓をするなんて自分で出来ますよ」
とそこへ、両方の鼻から鼻汁を垂らした中年サラリーマンが駆けてきた。
「ずびび、ずびび」
「男は却下」
「ずびび、ずびずば」
中年男は悲しそうに佇んでいる。
「魔王様、可愛そうじゃないですか。なんとかしてくださいよ」
「野郎に親切にしても見返りがなぁ……。わかったやるよ。やればいいんでしょ」
魔王は男を素っ裸にしてしまった。
「魔王様、そっちの趣味があったんですか」
「違う。服に鼻水が垂れるのを防ぐためじゃ」
「ぶわっくしょい」
男は風邪をひき、魔王はつきっきりで看病するのだった。こうして魔王はシリーズ1・2作目の願いをかなえることができたのだった。
「モテたいという望みがかなえられるのは5作目ぐらいだろうか……」
魔王は寂しげに頭を垂れた。今作者が書けなくなってしまっているので次回作は何年後になるやら……。