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2【リヒト視点】僕の婚約者となる人

 

 母の言っていた内容をようやく咀嚼できた僕は、後日、城の書庫に足を運んだ。婚約者となる人について、一応、調べておこうと思って……。

 ヴィアラテア・ルポルト侯爵令嬢……面識はないが、母も言っていた通り、その名前は知っている。……希少な闇属性の魔力を持って生まれた子だと、有名だからだ。

 

 僕の住むこの国、アルフェイムは、国民の殆どが魔法を使える。遥か昔、変わり物で人間好きなエルフと人間である国王が愛し合い、手を取り合って興したのがこの国だ。僕らには、エルフの血が入っているらしい。

 その為か、僕らは血で魔法を使う。各自生まれ持った固有の属性魔法であれば、余程大がかりなものでない限り、詠唱なしで魔法を使う事が出来る。ある程度までは、誰から教わらずとも成長と共に自然と使えるようになる。

 

 属性は、四大元素魔法と呼ばれる火・土・水・風が最も多く、国民の大半を占めている。そこから派生するように、四大元素魔法の上級変異種、雷・光・氷・雪などがある。上級変異種は貴族位に持つ者が多い。これは、かつて戦争が繰り返されていた時代に、より強い魔力、より攻撃力の高い属性を求め、貴族たちが婚姻を重ねてきた結果と考えられている。魔力量もやはり()()()()()貴族達の方が多い。

 属性の遺伝は先祖返りも多く、血筋の中に一度でも他種の属性が入っていれば、両親と違う属性が生まれる事もある。その最たる例が、単一種と呼ばれる緑属性や闇属性だ。

 

 他の属性は、似通う属性同士ならば複数持つ事も可能だ。かなり高い技術と修練が必要になるそうだが。単一種は、他のどの属性にも属さない為、自身の属性魔法以外を使うことは出来ない。緑も闇も、元はエルフに多い属性だったそうだ。緑属性は、植物を操る力。闇属性は、精神に関与する力。……つまり、人や獣の心を操る事が出来るという。

 

 闇属性に関しては、どの国でも扱いが非常にセンシティブだ。かつては、魅了や記憶の改変、意識操作の魔法を恐れ、闇属性魔法使いに対する幽閉や迫害の歴史もあったと言う。けれど数百年前、魔力溜まりの拡大を抑え、魔獣の暴走を食い止めているのが他でもない闇属性の魔法である事が分かった。それから、かなり希少になってしまった闇属性魔法使いを、どの国も恐れつつも重用するようになった。


 闇属性魔法に対向できるのは、今のところ、同じ闇属性魔法のみ。その為、比較的温厚で、国民の意思や自由を尊重するアルフェイムでも、その力は国を傾ける可能性のあるものとして、王家の保護・監察の下に生活する事、平時は魔力抑制装置を身につける事、年に数回、魔獣や魔力溜まりに対してのみ魔法を使用する事、国外へは出ない事など……様々な制限を設けている。もし、闇属性魔法使いの存在を隠匿したり、その制限を破れば、それなりの罰則も用意されている。ここ百年、その対応は変わっていない……との事だ。


 文字を追って、状況を頭の中で整理すると、婚約の意図が分かってきた。つまり、貴重な闇属性の子を、早々に()()()()()()()()()()()()という事だと思う。魔力溜まりの拡大と魔獣の被害は、どの国も頭を悩ませる最重要課題だ。人里と魔獣の森との間には、様々な魔法によるシールドが張られているが、万能ではない。魔獣すらも操れるというのは、味方にすればこれ程心強いものはないだろう。しかし、治世に影響力の高い者を宛がって、万が一、魅了などで傀儡にされてしまえば国の危機だ。王位継承権の低い第三王子の僕なら、確かにぴったりだ。特に今の僕は、”ひきこもり”で影響力など皆無だし。


 これはきっと役立たずな僕に父から与えられた、初めての課題なのだろう。闇属性の少女と仲良くなり、王家の味方につける事。......僕に出来るかな? そもそも、震えずに、話す事ができるかな?


僕は、何度目かわからない溜め息を吐く。どうしたら良いのか、わからない。わかっているのは、陛下の命令は絶対と言うことだけだ。

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