表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

第5話 脱出

「きゃあああああっ!」


 リーニアちゃん悲鳴まで可愛らしい。ただ、おんぶした状態で叫ばれると耳がキーンとするからやめてほしい。


 牢屋を脱して外に出た。


 とりあえず、街から出よう。


 どこから行こうか。大通りはまずいよね。裏路地もよくないな。道わかんないし。


 そうだ! 上なら追って来れないじゃん。


 建物の屋根にジャンプ!

 建物の上をぴょんぴょん跳ねていく。


 リーニアがぎゅっと背中にしがみついてくる。木に張り付くセミみたい。ビビってますなあ。


 街の端に着いた。壁というか石の柵がある。高さ3メートルくらい。

 一足で飛び越える。


 おお。街の外出た。

 もっと離れるか。


 ッスタタタタ。素早く足を動かして高速移動。アニメに出てくる忍者の如く。


 十数キロほど移動した。そろそろいいか。


「はい到着ですよ」


「え、もう?」


 リーニアがつぶっていた目を開ける。


 ここ、実はあれだ。

 最初に転移で訪れた場所。


「ここでいいですか?」


「あ、ありがとうございます」


 びっくりというより、若干引き気味の様子。

 バケモノを見るかのような目で見ないで!


 地面に降り立ったリーニア。さっと身を引いて頭を下げてくる。


「と、とにかく助かりました。ありがとうございます。これで自由に活動できそうです」


「いえいえ。こちらこそ短いお付き合いでしたがありがとうございました。あ、これ手錠の鍵です」


「ありがとうございます」


 脱出時に盗賊から盗んでおいた鍵を渡す。


「それにしても、手錠を付けられたままでも使える魔法があったんですね。目から鱗です」


 そういうわけじゃない。


「俺の魔法は制限があるんですよ」


「制限?」


「使える回数が厳しいというか……」


「ああ! 制約があるから強力だったのですね!」


「その通りです」


「あんな魔法、前世も含めて今まで見たことがなかったので、本当に人間かと疑ってしまいました」


 お前は俺をなんだと思ってたんだ。


 その後、少し彼女と話をした。


 彼女が行きたい場所はここから遠く離れていて、現状一人でたどり着くのは難しいだろうと。


 俺も俺でこの世界の魔法について知らないから、少し教えてほしい。


 結論。

 リーリア様と一緒に活動することと相成った。


 お互いの思惑が合わさった結果だ。


 こちらとしては、とにかく魔法について知りたい。


 現在、2本分あった魔力タンクは1.995本分くらいまで減ってる。

 さっきので0.005本分減った。


 これが尽きた時が俺の命日だ。

 魔力タンクの残量を見ながら「あと俺は100日で死ぬのか……」って。お医者さんの余命宣告よりも高い精度で死亡時期を推定できる。いいね!


 でも対策しないとね。


 てことで、森を歩いて、川を渡って、山に登って。

 目的地に向かって冒険しつつ、リーニアから魔法を習った。


 この世界の魔法は特殊だ。

 詠唱とかは特にナシ。

 リーニアに手をにぎってもらって、俺の体に魔力的なのを流してもらう。

 リーニアが魔法を使う。

 で、俺の手から火の玉が出てくる。

 この時の感覚を覚える。


 頑張って魔法を使う。

 使えない。

 以上。


 技術もクソもない修行方法。マンガじゃあるまいし。

 こんなんじゃ絶対使えるようにならん。


 アホか? リーニアはバカ? とりあえず修行って言っとけばなんとかなると思ってるやろ。


 1週間経過。


 火の玉が出た。

 魔法、使えました!

 バカとか言ってすいませんでした! 神! あなたは神です!


 と思ったら意識がプツンと切れた。


「テンはマナが少ないみたいね……」


 起きがけに言われた。

 マナ少ないらしい。


 俺の仮想魔力タンクに消費は見られない。

 なるほど。


 この世界の『マナ』は、俺の魔力とは別物みたい。


 こっちの世界の魔法にはマナが必要。俺の世界の魔法には魔力が必要。

 互換性はナシということで。


「ま、コツコツ続けてれば強くなれるはずよ」


「精進します」


 そして冒険スタートから1ヶ月経過。


「俺、成長してますかね?」


「結構、強くなったと思うけれど?」


「……そうですね」


 俺のマナ量は10倍になった。

 火の玉10発分。


 うん。

 強くなってる。確実に。


 でも……うーん。

 火の玉10発分。

 六本木ヒルズ倒すんだったら1万発ぐらい必要だと思う。


 物足りない。


「時間を戻す魔法ないんですか?」


「そんなのあったらみんな使ってるわよ」


「ですよねえ」


 タイムリップもできない。

 不老不死も、性欲制御もできない。


 仕方ないか。

 まだ1ヶ月も修行してないし。

 文句は1万年修行してから言うことにする。


 で、魔法の修行をしてるうちに、次の街に着いた。


 前の街よりもだいぶ規模の大きい街。

 中心にはお城のようなものも見える。


「ここでお別れね」


「え、もう目的地ですか」


「いえ、そうじゃないけど……ここから先は一人でもすすめるから」


「そうですか」


 ま、無駄に二人行動する意味もないか。


「魔法を教えてくれてありがとうございました」


「あの時助けてくれたお礼よ」


「牢屋の中で言ってたことは忘れておきます」


「……そうね」


「では、また会いましょう」


「ええ」


 あっさり別れた。


 で、街に入ってやることと言えば、仕事だ。


 飯も睡眠も、金がないとできない。


 だから仕事だ。


「冒険者ギルドしかあるまい」


 探しました。

 ありました。冒険者ギルド。


 受付嬢、柄の悪そうな冒険者、ギルドマスター。冒険者ギルドだったらこいつらだろーなという感じのが一通り揃ってる。


 綺麗な受付嬢に「冒険者になりたい」と言ったら金が必要だと言われた。


 銀貨1枚。なにそれ。

 貨幣の概念を教えてもらう。


 低い順から、屑鉄貨、鉄貨、銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨。

 屑鉄貨が1円玉。以降10倍ずつ価値が上がる。


 銅貨、100円。銀貨、諭吉。金貨、100諭吉。


 つまり銀貨1枚は、日本円での1諭吉。いちまんえん! たけえ。欲しい。


 銀貨無いよ。って言った。帰れ。って言われた。帰りまーす。


 金を稼ぐためには金が必要とな。世の中の真理ね。


 帰る前に、ギルドの依頼掲示板をちらっと確認しておいた。ギリギリ読める。

 ダンジョン探索ってやつがあった。近くにダンジョンあるらしい。


 ダンジョン。うーんいい響き。行ってみるか。


 てことでダンジョンに向けて出発。


 2日間歩き続ける。


 到着。意外と遠かった。

 もっと近くだと思ってたのに、途中で何回も狩りをして飯を調達する事態になった。もう少しちゃんと調べとけばよかったと後悔。


 ダンジョン。つってもただの洞穴にしか見えない。一応、門番らしきおっさんが立ってる。


「すいませーん」


「冒険者か?」


「違います」


「入りたいのか?」


「はい」


「ま、別にいいけどよ。死んでも文句言うなよ?」


「あ、はい」


「あとモンスター大量に引き連れて出てくんのもナシだ。やったら処刑。いいか?」


「分かりました」


「よし、通っていいぞ」


 洞穴に入る。マジでただの洞穴にしか見えない。

 中に入って少し進む。


 ブオン。


 アレ? いま転移した? タイムスリップした時と同じ感覚したけど……。


「え」


 めっちゃ広い。迷宮だ。いつの間にか迷宮に転移してるぞ。


 道幅20メートルくらいのど真ん中に立ってる。遠くにT字路が見える。壁に10メートルくらいの等間隔で松明がかけられてて、なぜかずっと燃えてる。不思議。


「すげー」


 とりあえず進む。


 分かれ道に遭遇。右。

 

 また分かれ道。右。


 右。右。右。


 ……おかしい。


「一周以上してんのに……空間バグってない?」


 どう考えても、もと来た道に戻ってきてるはずなのに、既視感が全然ない。


 右に5回曲がって、ああ、このままだとさっきと同じ道だなって思ったのに。


 なぜか違う。ないはずの十字路が、ある。


「すげーなダンジョン」


 十字路を、右。


 うわ、敵が出てきた。


 ゴブリンだ。

 ゴブリンって調べたら出てきそうな見た目のゴブリンだ。緑色の肌。想像通り。違和感0。


 とりあえず逃げるか。


 ゴブリンは足が遅いみたいで、すぐに逃げ切れた。魔力は節約しないとな。


「あ、宝箱」


 これまた宝箱って調べたら出てきそうな宝箱が道の突き当りにおいてある。


「いえーいゲットー」


 と思ったら、足場が急に消えた。

 落とし穴じゃん。

 しかも底が見えない。クソ深い。真っ暗闇。


 落ちた瞬間、本能的恐怖ってやつを感じた。


「ひっ……身体強化! 障壁! 灯火!」


 怖い怖い怖い。

 死にたくないマジで死にたくない。


 1分経過。


 目をつぶったままずっと落下中。


 3分経過。


 いつまで落ちるの?


 10分経過。


 スカイダイビングに慣れてきた。

 今では空中制御もできる。

 けど壁がない。広すぎて壁に手を付けない。


 転移魔法使えないと、地上に戻るのは厳しそうな深さ。

 地球ならマントルさんがこんにちはしてくる頃合いではなかろうか。

 ボーイ、ミーツ、マントル。


 と思ったらこんにちはしてきたのは、地面だった。


 ドガーーーーーン!


 隕石みたいな音と一緒に落下完了。


 無傷。0ダメージ。

 太陽に入っても大丈夫なレベルの身体強化。

 核爆発でもびくともしない障壁魔法。

 これなら何メートル落下しようと耐えられる。


 あ、床が大変なことになっていらっしゃる。

 それこそ隕石落ちたー! みたいな感じにクレーターがグワンと広がってる。


 灯火魔法で昼間みたいに明るく照らす。


「……血?」


 地面に青い血が流れとる。

 何かを踏んづけちゃったみたい。ごめんね。


「うっ! なん、だ」


 体の中に謎の何かが流れてくる。

 魔力……いや違う。もっと別の何か。不思議と嫌な感じはしない。温かいエネルギーみたいな何か。


『レベルアップしました』

『レベルアップしました』

『レベルアップしました』


「お!? え!?」


 なんか『レベルアップしました』が頭の中でエンドレスループしてるんだけど。


 うるさいし。


「えーっと、この音って止められないのかな」


「ガウゥッ!」


 なんかでかいトラが襲ってきた。黒と紫のマダラ模様。シンプルにキモい。

 とりあえず、トラの顔面を平手打ちしとく。


 パアン!


 吹っ飛んで遠くの壁にめり込んだ。動かなくなった。


 で、レベルアップの音は鳴り止まない。


「うっ」


 また生暖かい何か。

 トラの方から流れてきてる気がする。


「経験値?」


 昔やったゲームでこういうシステムあった気がする。

 150年周期ぐらいで流行る。RPGゲーム。


「ゲームと現実ごっちゃにしちゃあかんて……ステータス!」


 ブオン。


 うわ、開いた。半透明のウィンドウ。

 

 マジですか。


 これじゃまるで。


「ゲームの世界じゃねえか……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ