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宇宙を目指して〜  作者: 東雲もなか
1章 ロケット少年との再会
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02話 入学式

 ロケット少年(名前を知らないので勝手に名付けた)と出会って数日。

 彼も今頃は中学校が始まってるんだろうなぁ、なんて思いながら通る、初めての通学路。


 両端には桜の木が連なっているので、入学式を満開の花びらで祝ってくれるだろうと期待していた。

 しかし、気候変動のせいかかなり散り際で、残念な見た目になっている。



 嘆いても仕方ないので記念に自撮りをして、中学の時の友達、笹倉雪に送りつける。

 高校は別になってしまったが、今でも連絡は取り合っている仲だ。


 写真は送ってすぐに既読が付き、『もう散っちゃってるじゃんw』と返信が来た。

 私はそれに適当なスタンプで反応する。

 更に帰ってきた意味もないスタンプには、つい笑ってしまった。


 私も彼女と同じ高校を受けていたのだが、私の学力が足りなかった為、落ちてしまった。

 でもそれはそれで、行きたかった女子校に行くことになったのであまり後悔はしていないつもりだ。

 まあ、自分でも言い訳臭いとは感じているのだけど。



 昇降口に張り出されたクラス割から自分の名前を探す。


「中島明、中島明・・・」


 指を刺しながら、順番に見ていく。


「あ!あなたは‼」


 何処かで聞いたことがあるような、少し高い少年の声。


「あっ、ロケット少年」


 そこに居たのは、あの時、河川敷で出会った少年だった。


「ロケット少年?」


 彼は何のことだろうとばかりの顔をしている。


「ここ女子校だけど、何しに来たの?あ、もしかせて誰かの弟さん」


「儂はこう見えても、女でござる、中島氏」


 え?女?

 あの性別の方の女?


 よく見て見るとたしかに私と同じ、うちの学校の制服を着ている。

 当然ながらはいているのはスカートだ。


 そんなことより、


「なんで私の名前知っているの⁉」


 私は彼、もとい、彼女に名前を教えた記憶が無い。


「そりゃ、あれだけ自分の名前を大声で連呼していたらわかるでござるよ」


 つぶやいているつもりだったのだが、少しばかり力が入ってしまったらしい。


「そ、そっかー。えっとあなたの名前も教えて?」


「良いでござるが、その私の名前知ったなら、自分も名乗れみたいな顔はやめてほしいでござる。・・・えっと儂は、雲雀輝ひかるでござる」


 おんなじ学校だったのか。

 そもそも、中学男子だと思ってたのだけど。


 とりあえず、自分のクラスを探す。


『三組だ(でござるか)』


 ちょうど輝も同時に見つけたみたいで、声がかぶさる。


「なんだ、一緒のクラスじゃん。よろしくね」


「ああよろしく頼もう」


 彼女は右手を出してくる。私も右手を出して握れば、彼女も固く握り返してきた。



「ねえねえ、ひーちゃん部活何処にする?」


 卒業式ということもあり、今日は午前中で終わった。

 SHRで明日から部活動体験が始まると言っていたこともあり、私はその話題を切り出した。


「無論。工作部ででござる」


 即答も即答。

 準備していたと言うように、答えが帰ってきた。


「へー、やっぱりロケットなの?」


 私の中では、ひーちゃんこと輝ちゃんはあの河川敷でのイメージが強い。

 だから彼女が工作と言ってまず思い浮かぶのがペットボトルロケットなのだ。


「うむ。まあ、今年できたばかりの部活で部員は居ないらしいでござるが。ほらここに」


 ひーちゃんは、プリントを見せてくる。

 さっき配られた部活動一覧。

 そこには、部活動名と部員からの一言コメントが乗っている。


 工作部はというと・・・確かに、今年出来たばっかりのようで、顧問の先生がコメントしていた。


「私はまだ決まってないし明日は、とりあえずおんなじとこ行ってみようかな」


「おお、それは嬉しいでござる」


「そう言えばさ・・・」


 私が、言うとひーちゃんはどうしたのかと首をかしげてくる。


「いや、関係ないなら別にそれで良いんだけど・・・、ひーちゃんお侍さんとか好き?」


「何故それを⁉」


 お前はエスパーか?と言わんばかりに、驚きを顕にしている。

 これがネズミとネコが殺し合いをする、某アニメだったら目玉が飛び出ていたことだろう。

 現実なのでそんなことにはならないけど。

 なったら怖いし。


「なんでって、だって、語尾にござるとかつけてるし。そうなのかなぁって」


「なっ、無意識の内につけていたでごz、」


 ひーちゃんは、咳払いで誤魔化す。

 誤魔化せて無いけど。


 でも、この様子を見る限りでは、本当に無意識でやっているのかも知れない。


「別に良いんじゃない?私は好きだよ」


「そ、そうでござるか?」


「うんっ!」


 ひーちゃんは嬉しいやら、恥ずかしいやらの表情で頭を掻く。


「実を言うと、儂は武士というもに強い憧れを抱いているのでござるよ」


 ひーちゃんは照れついでのように告白する。


「でもどうして、そういう人にあ憧れたの?」


「どうしてとござっても、うーん。ただ、幼子の時から好きという記憶だけはあるんでござるよ」


 言い終わるなり「あ、そうそう!」とスマホをいじりだす。

 しばらくすると、目的の画像を見つけたようで、私に画面を見せてきた。


「これでござる」


「これは?」


 なんだろう?ビニールテープのような物でペットボトル?に名前が書かれている。


「ふふふ、これは何を隠そう儂のペットボトルロケット、武者むしゃ31号でござる。ちょうどあの時飛ばしていたやつでござるよ」


 31号って後三十台もあるんだ・・・


「あの時は痛かったなー、今でも古傷が・・・」


 アイタタと大げさに頭を押さえる。

ぶつかったのは顔面なので頭はそもそも怪我してないけど。


「だからあのときは、すまなかったでござるって!」


 鬼の勢いで地面に突っ伏し、ジャンピング土下座をかますひーちゃん。


「冗談だって(笑)私怪我の治りだけは早いから、もう傷も綺麗になったよ。あの出血はほとんど鼻血だし」


「そもそも気にしてないなら、こんなに掘り下げないでござらんか?儂が言えた義理じゃ無いのはわかってるでござるけども」


「うーん、それならさ」


 私は、自販機の方を指差す。ひーちゃんは私が指差したほうを見て再びこっちに視線を戻してきた。


「ファンタ♡」


「・・・もう、わかったでござるよ。でもこれで本当に許してくれるんでござるな?」


「もちろんっ」


 もちろん嘘だよ?


 面白そうだからしばらくこれでひーちゃんをイジろう。

 あと勘違いしないでほしいことが一つ。

 ちゃんとお金は渡してるから、たかってるわけではない。

 パシってるだけだから。

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