10話 うまい棒と十円ガム
部室の扉を開けるとそこには、ひーちゃんともう一人、ロッキーの姿があった。
「どうして居るの?」
しかもロッキーはうちの学校の制服を着ている。
「さっきそこの廊下であったんでござるよ」
「そうそう。あ、それでさ、羽の角度を後、〇・五度あげるとより効率がよくなると思うんだよね」
え?説明それだけ?もっと聞きたいことがあったのだが、二人は自分たちの話を初めてしまった。
ここの廊下にはパソコン部しか無いから、もしかしてそこの部員なのだろうか。
それ以外にこっちの方に来る理由が見当たらないし。
あれ?それより・・・
「ロッキー体育の選択何取ってる?」
「体育は、ソフトボール!」
やっぱりだ。
今まで気が付かなかったのもおかしな話だが、私とロッキーはもう既にあっていた。
ソフトボールの授業で。
服装が変われば雰囲気も変わる。
帽子をか被っていればなおさら気が付かないだろう。
いくら同じ授業を取っていると言っても、顔をまじまじと見ているわけじゃないのだ。
「ロッキーってもしかして名前、斎藤彩だったりする?」
「そうだよ⁉もしかして今までロッキーって読んでたのって名前を覚えてなかっただけ⁉」
「ごめんね、サイトウアヤサン。人の名前を間違えるなんて。本当に申し訳ないとおもってます。サイトウアヤサン」
「ふざけてる?殴っていい?」
「サイトウアヤサンの名前を間違えた、私はサイトウアヤサンが私を殴りたいと思うならそれを拒む権利なんて無いよ。サイトウアヤサン」
「悪かった。もうわかったから。名前で呼ぶのやめてくれる。なんかよくわからないけど、明が言うと気持ち悪い」
「じゃあなんて呼べばいいの?」
名前で読んだらだめなのだったら、もう名無しさんとかしか呼べない。
「・・・ロッキーでいいです」
「ロッキーこれからよろしくね!」
正式にあだ名を認めたロッキーはしばらくの間、項垂れていたのだった。
ロッキーが時間の経過でメンタル面が回復した頃。
「ロッキーって結局何部ななの。もしかして、工作部入った?」
「私は、パソコン部だよ」
そういえば、バイトの時もパソコンを持ち歩いてたなと思い浮かべる。
「そうだ、せっかくだからさ、袖振り合うも多生の縁って言うし、私達の部活入らない」
ロッキーは私とひーちゃんの顔を交互に見比べる。
「儂は歓迎するでござるよ」
「そっか・・・ 私も、輝たちと一緒にやっていけたら楽しいだろうなって考えてたんだ」
ロッキーは嬉しそうに笑う。
これが心が通じ合うという感情なのかもしれないと確かに感じた。
思いの周波数がピッタリと合い、今という時を共有している感覚。
「でも、パソコン部のほうが楽しそうだからやめとく!」
さっきまで恥ずかしいことを考えていた私を殴ってやりたい・・・
「どうせ私達なんて・・・」
「ござるね・・・」
「いやいやっ違うから!」
私達の反応に慌てて言い訳を始めるロッキー。
「ほら、こっちの部活結構不定期じゃん。だから普段はパソコン部行って、時々こっち参加しようかなぁ、って・・・ だめかな?」
「いいですよー どーせ私達は都合のいい部活何でしょ。ええ、いいですとも。私達はそうやって騙されながら生きていくの。奥さんとは分かれると男に言い聞かせられながら、ダラダラと不倫を続ける四十代女性のように」
「例えが生々しいでござる・・・」
かろうじてツッコミを入れるひーちゃんと、完全に引いているロッキー。
本気でそんなこと言っていると思われても嫌なので、咳払いをしてごまかす。
「まあ、私はそれでも構わないけど、一応顧問の木村先生に伝えて置いて」
「わかった!伝えとく。それじゃ私はパソコン部の方行ってくるから〜」
狭い部室で大きく手をふるので、勢いよく掃除用ロッカーに手をぶつける。
一斗缶を思いっきりバットで殴ったかと思うくらいの音が立ち「痛ってー」と自分の手を抱きながら去っていった。
「なんだか愉快な人でござるね・・・」
「そうだね、でもひーちゃんが言うことではないと思うけど」
「明氏も同じでござるよ」
「この車ってどこに向かってるんでござるか?」
ひーちゃんとロッキーそして私は、先生の車に乗のって目的地に向かっていた。
向かっているのはこの前の科学館。
この前の強制労働で雲雀さんに呼び止められた時頼まれたことだ。
私は、ロケットを飛ばそうとしている活動を宣伝させてもらうことを条件に受けることにした。
聞けば突然予定していた人が来られなくなったとかで、誰でもいい仕事でもないので困っていたそうだ。
平日ということもあるのでなかなか見つからず私にお願いしてきた。
私というか、正確にはひーちゃんなのだが。
このことはまだ、ひーちゃんには伝えてない。
知ったらぐずりそうだったから。
「あれ聞いてなかったの?今日また科学館で・・・」
私は慌てて唇に人差し指を当てて黙らせる。
真実を伝えるのは、もっと逃げられない状況になってからにしたかったから。
「ん? もしかして・・・」
何かを察したのかひーちゃん
「儂はいやでござる!先生殿、ここで下ろしてくだされ!」
ひーちゃんが無理矢理扉を開けようとするのを、ロッキーが必死に止める。
「輝危ないってっ」
先生はといえば、涼しい顔で後ろのことなんてまるで知らないように運転している。
「先生後ろであんなことが起こってるのによく冷静ですね。・・・ていうかどうにかしないと危なくないですか?」
「大丈夫大丈夫。こういうこともあろうかとチャイルドロックかけてるから、内側から扉あかないよ」
チャイルドロックかー。ひーちゃん先生からそんなに子供だと思われてたのか。わからなくもないけど。
「明のとこもだから、安心して発狂していいよ」
私も同列扱いか・・・ 少しショックだった。
「それにしても、よく公欠なんてとれたでござるね」
「んぁ、ああ、ちょっとね」
「どうやって許可とったんですか?」
本当のところは、どうせいけないだろうと思っていたのだが、こんなにうまくいくとは思わなかった。
先生に相談したとき「じゃあ、公欠もらえるように相談しとくから」と言われ、次の日には成功の報告をされたのだ。
「簡単だったよ。お菓子を持って校長室に行くだけ」
お菓子ってあれだろうか。
よく時代劇とかで見る・・・時代劇見ないけど、よくある山吹色のってやつだろうか。
金で釣られる校長も校長だと思うが、私にとってはいい結果なので気にしないことにする。
「なんだかすみません。ちなみにいくら掛かったんですか?」
先生は何でそんなことを聞くのだろうと不思議そうにしている。
「え?三〇円くらいだっけ?」
「こうちょー、うまい棒三つで買収されてる!」
ていうか本当にお菓子だったんだ。
「十円ガムだけど?いつからか入れっぱなしにしていたやつ」
せめてうまい棒であってほしかった。
それに、校長先生ゴミ渡されただけじゃん。
実質ゼロ円じゃん。
「っていう冗談はさておいて、普通に交渉したよ。校長先生の名誉のためにも言っとくけど」
「そりゃそうですよね。いくら先生でも上司に食べれるかかなり怪しいガムなんてあげませんよね」
「・・・・・・」
あれ?そこは冗談じゃ無かったのか・・・




