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唯一無二の最強テイマー 〜世界最強の種族をテイム出来るのは俺だけです。俺の力を認めず【門前払い】したのはそっちでしょう。俺を認めてくれる人の所で楽しく過ごすつもりなので、今更戻るつもりはありません。〜

作者: 赤金武蔵

短編です。

連載版を書きました。以下URLです。


https://ncode.syosetu.com/n1949gs/

「ここもダメか……」



 たった今門前払いされた冒険者ギルドを振り返る。

 大きいが、寂れた古い建物。

 最悪のギルドだとは聞いていた。

 だけど、まさか話も聞かずに帰らされるとは思わなかったな。



『テイム出来ないテイマーなど、我がギルドには不要です。お引き取りを』



 さっき、ギルドマスターから言われた言葉を思い出す。

 漏れるのはため息と、将来を憂う言葉だけ。

 ここがこの国最後のギルドだったのになぁ。


 本当、これからどうしようか。


 唸っていると、俺の肩に乗っている小さな女の子(、、、、、、)がギルドに向けて唾を吐いた。



『ほんっっっっっと! なんでコハクが門前払いされるの!? 激おこよアタシ!』

「まあまあ、仕方ないよ」

『仕方なくないわよ!』



 と言われても、もう決まったことだしな。

 苦笑いを浮かべ、クレアの頭を撫でる。



『むぅ……頭撫でてくれるのは嬉しいけど、あんたはもっと自分のために怒りなさいよ!』

「クレアが俺の代わりに怒ってくれるから、俺は怒らなくて済むんだよ。いつもありがとうな」

『ぐぬぬ……! ふん!』



 腕を組んでそっぽを向く。

 ただ口角が僅かに上がってるから、喜んではいるみたいだ。



「さ、行こう。ここにいたら邪魔になる」

『全くもう……!』



 納得がいっていないクレアを連れ、俺はギルドから離れた。

 


   ◆



 神が与えし職業は、天職と呼ばれていた。


 その中に、テイマーという職業がある。

 魔物をテイムし、使い魔として使うことの出来る職業。

 それがテイマー。俺の天職だ。



 犬系魔物、猫系魔物などの獣種。

 蜂系魔物、ワーム系魔物などの昆虫種。

 岩石系魔物、植物系魔物などの自然種。



 他にも様々な種族の魔物がいるが、ここでは割愛。

 これらをテイムし、戦うのがテイマーなのだが……。


 問題は俺のテイマーとしての資質にある。

 俺は、これらの通常の魔物をテイムすることが出来ないでいた。

 理由は不明だ。


 ただ一つだけ、俺がテイム出来る種族の魔物がいる。

 強力だがこの世で最も数が少なく、人前には姿を現すことのない幻の種族。



 幻獣種(ファンタズマ)。それが俺のテイム出来る魔物で──。



『全くもう、全くもう……!』



 今なお、俺の肩でぷりぷり怒っている彼女がその魔物である。


 幻獣種(ファンタズマ)、火精霊クレア。


 俺が契約しているうちの一人である。

 ただでさえ見つからない上に、彼女達は普通の人間には見えない。

 そのせいで、俺はどの魔物とも契約出来ない無能扱いされていた。


 自分がどの魔物と契約出来るかは、本人にしか分からない。

 だから「幻獣種(ファンタズマ)としか契約出来ない」と言っても嘘つき扱いされるのだ。


 嘘じゃないんだけど、世知辛いなぁ。

 肩を落としていると、クレアが小さな羽をはばたかせて俺の顔の前まで飛んだ。



『それで、これからどうするのよコハク。もうどこも所属させてもらえるギルドなんかないわよ』

「……どうしようね」

『はぁ……どうしようねじゃないわよ、どうしようねじゃ!』



 あ、怒った。

 クレアは器用に後ろ向きで飛びながら、腰に手を当てて激昂する。



『テイマーじゃなくて、魔法師ってことにすればギルドに入れてもらえるじゃない! 何で頑にテイマーに拘るのよ!』

「無理だよ。職業を偽ると捕まっちゃうから」

『あーもー! あんたら人間は天職に固執しすぎなのよぉ!』



 確かに言えてる。

 この国。いや、この世界は天職至上主義だ。

 いい職なら高待遇。悪い職なら冷遇。

 分かりやすく格付けされている。


 ただ、こんな世界に生を受けたんだ。

 ルールに従う他ないんだよ。


 クレアを連れ、俺はこの街で拠点にしている安宿へ戻ってきた。

 木造で古く、歩くとミシミシ音が鳴る。

 お金もないし、こんなところでないと泊まれないのが悲しい。



 2階の一番奥の角部屋が俺の部屋。それ以外は空室だ。

 わざわざこんな所に泊まる物好き、俺以外にいるはずないか。


 ため息をつきつつ、鍵穴を回す。

 すると、俺に気付いた皆が出迎えてくれた。



『コゥ、おかえりー!』

『お帰りなさいませ、ご主人様』

「ただいま2人とも。いい子にしてたか?」



 クレアと同じく人型の幻獣種(ファンタズマ)が1体。こっちは体の大きさも人間サイズだ。

 そして、俺より巨大な狼型の幻獣種(ファンタズマ)が1体。


 これにクレアを加えた3体が、俺がテイムしている仲間だ。



『コゥ、どうだった? どうだった?』



 俺の体に擦り寄ってくる、大型の狼。

 滑らかで触り心地のいい毛並みが、淡い金色に輝いている。


 幻獣種(ファンタズマ)、天狼フェンリル。


 テイマーになる前から俺の傍にいる、幼馴染みみたいな子だ。

 何故かフェンリルは、小さい頃から見えたんだよね。

 はは。当時は、俺が空想の友達と遊んでるって虐められたっけ。


 そんなことを思い出しながら、フェンリルの頭を撫でる。



「ごめんねフェン。今日もダメだったよ」

『大丈夫。ボクはずっとコゥと一緒なら、どこでも嬉しいから』

「……ありがとう」



 そう言ってくれるだけで、本当に救われる。



『ご主人様。お召し物をお預かりします』

「ありがとう、スフィア」



 俺が脱いだローブを受け取り、大事そうに抱える女の子。

 闇夜を孕んでいるかのような漆黒の髪に、陶器のような白い肌。

 神が造形したとしか思えないプロポーション。

 もし人間なら、国中の男が求婚するであろう絶世の美女。

 だが表情は変わらず、まるで無機質な人形のようだ。


 幻獣種(ファンタズマ)機械人形(マジンドール)スフィア。



『ちょっとスフィア。匂い嗅ぎすぎじゃない?』

『何のことでしょう』

『でも顔填めてたじゃない』

『そんなことはありません。それは普段クレアが妄想しているから、そう見えてるだけでは?』

『はぁ!? そ、そんな妄想してないわよ!』

『ではそれ以外の妄想はしていると? くすくすくす。いやらしい火精霊ですこと』

『あんたねぇ!』



 ぎゃーすかぎゃーすか。

 元気だなぁ、2人とも。

 ま、こんだけ騒いでも他の人には聞こえないから、近所迷惑にはならないんだけど。



『コゥ、これからどうする?』

「そうだねぇ……」



 ターコライズ王国全土のギルドを回ったけど、どこも受け付けてくれなかった。

 これはもう、この国は無理かなぁ……。



「……皆聞いて。もし皆がよければ、俺は他国へ行こうと考えてる」

『他国、ですか?』

「うん。他国のギルドなら、まだ望みはあると思うし」



 ターコライズ王国に隣接している国は、多分噂が流れてるからダメだ。

 だとしたら、少し遠いけど俺のことが知られていない国に行こう。



「ブルムンド王国に行こうと思うんだ」

『ブルムンド王国? 確か、テイマー専門のギルドもある場所よね』

「そうそう」



 俺の意図を汲んでくれたクレアの頭を撫でる。

 子供扱いするなー!と怒るが、満更でもなさそうなところが可愛い。



『ボクはコゥが行くなら、どこでもいいよ!』

『私もお供致します』

『仕方ないわね、私もついて行ってあげるわ!』

「……皆、ありがとうね」



 俺には勿体ないくらい、いい子達だよ。



「じゃあ、早速準備しよう。明日の朝出発だ」



   ◆



『な、何ですって!? コハクきゅんがターコライズ王国を出る!?』



 白く何もない空間。

 そこに集まっているのは、神聖な雰囲気を纏っている人外の存在達だった。


 数にして数百……否、千は超えているだろうか。

 人外の存在が、宙に映し出された映像を見て驚愕する。


 映し出されていたのは、漆黒の髪にメイド服を着た美少女だ。



『はい。ご主人様は先程、ターコライズ王国を見限りブルムンド王国へ移る決意を固めました』



 ザワッ──!


 青天の霹靂。

 まさか、ターコライズ王国を出るなど予想だにしていなかった。



『そ、そんな……!』

『コハクきゅんがいるから、わざわざこんな辺鄙な国に移ってきたのに!』

『私なんて既に神として崇められてるのよ!』

『俺も、加護を渡した人間が数人いるんだぞ!』



 ザワザワとざわめきが大きくなる。

 そんな人外の存在を、少女は無機質な目で見つめる。



『皆様、落ち着いて下さい』



 ピタッ。

 少女の声に、黙って耳を傾けた。



『先程も申し上げた通り、ご主人様はこの国を見限りました。つまり……この国はご主人様の素質を見抜けず、国を出るという苦渋の決断にまで追い込んだのです』



 少女の言葉は、普段他者の話を聞かない人外の存在をも引き付けた。

 今、この少女が喋る言葉を一言一句逃さまいと、無心になって聞き入る。



『皆様。ご主人様を……聖なる魂を持つあの方をここまで追い詰めたこの国に、未練はありますか?』

『『『『あるわけがない!!!!』』』』



 人外の意思は決まった。


 この国を──ターコライズ王国を捨てる。


 そして人外の……全幻獣種(ファンタズマ)の決断が、ターコライズ王国を破滅へと導くことになるのだった。

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