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君の中のあなたに  作者: 古川瑛瑠
3/7

先輩

 あれから三日。

 今日は瑠華ではなく麗衣と登校していた。

 その間も麗衣が何に悩んでいるかを考えていたが一向に分からず麗衣に少しは探りを入れてみようと思ったのだ。


「それでなんて断るかは決まったのか?」

「ええ。だいたいは決まったわ。」

「へぇ~。なんて断るんだ?」

「それは、秘密。でも、きちんとお断りするわ。」

「そっか。それで、どこで告白されたんだ?」

「普通に教室で・・・って何?気になるの?」

「いや。そこまで興味ないけどちょうど暇だしいいかな~って。」

「・・・はぁ~。まあいいわ。先生の頼まれごとを片付けてたら遅くなっちゃって教室で帰る支度をしてたの。

 そしたら彼が入って来て「前からずっと好きでした。付き合ってください。」って言われただけよ。」

「意外に普通だな。壁ドンでもされたかと思ってた。」

「・・・そんなわけないでしょう。それに好きでもない人にされたら怖いもの。」

「まぁ、そうだな。急にあんな至近距離まできたら怖いよな。普通・・・それで、いつ返事をするんだ?」

「それは教えられないわ。それに、興味ないんでしょう?」

「・・・まぁな。」


 麗衣と話せたのはいいがあんまりコレと言った収穫はなかった。

 本当に麗衣が何に悩んでいるのかわからず心の中で「はぁ~」とため息をついていると


「ねぇ、郁。ネクタイ曲がってるわ。」

「ん?ああ。こんなもの適当でいいよ。先生たちも付けてないとうるさいけどちゃんとしてれば何も言って来ないだろうし」

「そんなんだから友達出来ないのよ?もっとちゃんとすればいいのに。」


 まさかこんな悲しいことをこの短期間で二度目を聞くことになるとは思わずなんか心にダメージを受ける

 ・・・そこまで心配されることはしてないはず。


「直してあげるから。ちょっと止まって。」

「いいよ別に。さっきも言っただろ?つけてればそれでいいんだよ。」

「郁の意見なんて聞いてないわ。いいから止まって。」

「はい。はい。」


 麗衣は手際よく僕のネクタイを直してくれた。

 やっぱりどこか棘のある言い方だがその中に相手に対する優しさがある。

 告白した相手はそんな麗衣の魅力に気づいたのかもしれない。


 そんなことを考えてた僕はネクタイを直す麗衣の手が僅かだが震えているのに気がつくことができなかった。



 今日も何の収穫もなくいい加減瑠華の勘違いを疑ってきた。学校も終わり僕は昇降口を目指して廊下を歩いていた。

 窓の外を見るとさっきまで小雨だった雨がいつの間にかザァーザァーと本格的に降り始めていた。

 朝、麗衣と一緒に登校するときは晴れていたため、あいにく今日は傘をもっていない。

 濡れて帰るしかなさそうだ。

 気分が憂鬱になるが何もないのに意味もなく学校にいるよりましだと思い僕はそっと覚悟を決めた。


 昇降口についた僕は下駄箱のドアを開けて中の靴を取り出そうとするとそこには黒い一般的な折りたたみ傘が入っていた。

「何故?」と思い傘を手に取ると傘の下には手紙が置いてあった。

 その手紙を手に取り開くとそこには、綺麗な字でこう書いてあった。


【今日は午後から雨が降るそうです、

 どうせ、郁の事だから傘なんて持って来てないでしょうからこれを使ってください。麗衣】


 まったく直接渡せばいいのにと思うが本当に麗衣らしいささやかな気遣いに僕は自然と笑みを零してしまった。

 麗衣のこの気遣いや優しさが今度は僕以外の人に向くのかと思うとやっぱり少し寂しいがそれでも、どこか嬉しくさっきまでの憂鬱だった気分はもうすっかり晴れていた。



 麗衣に貸してもらった傘をさしながら昇降口を出て校門を目指す。

 傘に打ち付ける雨の強さにもし麗衣が居なかったらこの中を帰っていたということを思い

 心の中であらためて感謝していると陽々希が体育館の端にある扉を開けて涼んでいた。


「まだ部活があるのか?」

「ん?あぁ、雨宮か。まぁな、バレー部は室内だから雨なんか関係ないんだよな。」

「それは・・・ドンマイ」。

「ほんとな。まぁ、楽しいからいいんだけどな。」


 そんな他愛もない話をしていると不意に陽々希が何かを思い出したのかこんなことを僕に言ってきた。


「そういえば雨宮さ前に祐輔先輩の事聞いてきたよな?」

「ん?そうだな。それがどうした?」

「いやさっきそこで祐輔先輩とすれ違ったんだけどさ。その時にそういえばって思い出したことがあったんだよ」

「それで何を思い出したんだ?」

「祐輔先輩って実は結構思い込みが激しいタイプなんだよ。」

「ん?どういうことだ?」

「まぁ、あんまり人の事を悪く言いたくないんだけどさ。少しストーカーっぽいんだよ。前にある女の子がつまずいて祐輔先輩がそれを受け止めたんだけどさ。それだけで、あの子は僕に惚れてるだから僕の前でつまずいて僕にアピールしてきたんだ!ってことがあったんだよ」

「・・・その子その後どうなった?」


 坂東先輩にストーカー気質があったとしても麗衣の事を大切にするなら僕は何も文句は言わない。

 第一、麗衣は断ると言っていたから変なことにはならないと思うが・・・


「・・・聞きたいか?」


 そういった陽々希の目はいつもの彼が見せる暖かいものではなく深い悲しみや同情のものだった

 おそらく・・・いや確実に何か良くないことがあったのだろう。


「いや・・・大丈夫。」

「それで、その坂東はすれ違ったときなんか言ってなかったか?」

「・・・確か返事を貰いに行くとかいってたな。あとは、これであの子も・・・だったかな。」


 とても嫌な予感がする・・・

 僕の大切なものが壊され二度ともとには戻らないそんなとても嫌な感じ。

 まるで、死神の鎌の刃がもう首元まで迫り、今にも首と体を断ち切りそうだ・・・


「麗衣!!」


 僕はカバンと傘を投げ出して走り出した。


「おい!?雨宮!?・・・まったくどうしたんだあいつ・・・」


 急に校舎に向かって走りだした郁を心配し陽々希は声を漏らす。

 その後、郁の投げ出したカバンや傘を親切に拾っていた陽々希はふっとさっきの事を思い出しある疑問を口にした。


「それにしても・・・「麗衣」って誰の事だ?」



今日は後、1話かできたら2話更新します。


古川瑛瑠。


※瑠華が麗衣の事を言うときに漢字だったのをひらがなに変更しました。



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