麗衣
放課後、僕は廊下を歩いていた。
重い荷物をもって。
「おい、雨宮。これ図書室まで運んでおいてくれ。」と担任が面倒なことを押し付けてきたのが5分前の事だ。
おおかた僕が一人で暇そうにしていたからだろう。
最悪だ。
「失礼いたしました。」と図書室を出て帰宅しようと廊下を歩いていると麗衣と出くわした。
「よう。麗衣やっと出てきたのか?遅かったな。」
「ちょっと悩み事があってね。寝坊したわ。」
麗衣は、落ち着いた雰囲気で少し近寄りがたいが話して見ると言葉の端々から不器用な優しさが伝わってくる。
ミステリアスに見えて実は優しいというタイプの人だ。
瑠華が髪をしばっているのに対し麗衣はストレートにおろしていることが多い。
落ち着きがありどこか大人びている僕のもう一人の幼馴染。
「・・・いくらなんでも遅すぎだろ。」
「明日から気を付けるわ。それに、今はそれどころじゃないし。」
「それって告白されたことと関係あるのか?」
「え!?何で知って・・・瑠華ね。まったくあの子は・・・」
「悩んでるってことは、OKするのか?」
「いいえ。断るつもりよ。でも、告白された時戸惑ってしまって返事ができなかったの。
だから、今変に期待させてるかもしれないからなるべく傷つかないようにしたくって」
「なるほどな。・・・別に、他に好きな人がいるって噓ついて断っても良いと思うけどな。返事待ちってことは断られる覚悟もしてるだろ。」
もし自分が返事を待っている立場なら断られる事も考えるな。と思い麗衣に提案する。
OKなら嬉しさ倍増の天国行きだ。
まぁ今回は地獄行きだけど・・・
「・・・それもそうね。でも、嘘つくのは嫌だから別の理由をもう少し考えてみるわ」
「麗衣らしいな。まぁ、なんかあったら言ってくれできる限り手を貸すよ。」
「ええ。ありがとう。頼りにしてるわ。それじゃあまたね。」
麗衣は僕に手を振り教室の方へと向かっていった。
何んとなくだが少しは麗衣の力になれたのではないだろうか。
僕はそんなことを思いながら下校した。
翌日、まだ6月の半ばだというのに外は暑くじめじめとしていて気持ち悪い。
少しでも外にいれば汗が出てきてすぐのどが渇くそんな中僕は外でサッカーをしていた。
1組と2組の合同で体育の授業だ。
サッカーと言ってもそんなちゃんとしたやつではなく、みんなが楽しんで体を動かすというのが目的もの。
そのため、コートもそれほど大きくなくサッカー部の奴らは審判やキーパーをやっている。
いかにも学校の体育らしいものだ。
「ハァ、ハァ。きっつ。」
あんまり体力に自信がある方ではない僕は早い段階で限界を感じ、わき腹を抑え上がった息を整える。
「雨宮!そろそろ交代しようぜ」と天使の声が聞こえた。
そんな天使の声に甘えて僕は陽々希と交代する。
「あとよろしく。」
「おう!任せとけ!とりあえず一点とってくる!」
そんな言葉を残して陽々希は意気揚々と走っていった。
これでこっちが負ける可能性はグッと減っただろう。
僕は木陰に腰を下ろし休んでいると瑠華がやってきた。
「もうおつかれ?少しは風間くんを見習いなよ。」
「いいんだよ別に。陽々希が出れば負けることはほぼないし僕みたいなやつはさっさと引くにかぎるよ」
「はぁ~、そういう考えだから友達できないんだよ?わたし、ゆうがちょっと心配だよ。」
まるで母親みたいなことをいう瑠華に僕はうんざりし話題を変える。
「麗衣はどうした?また寝てるのか?」
「うんん。なんか前半ある程度まではできたからあとはよろしくって言って私と変わったよ。まぁ、わたしはすぐに下げられたけどね。」
「まぁ、瑠華は運動音痴だもんな仕方ないよ。それより、麗衣の奴最近さぼりが多いな。」
「まぁ、仕方ないよ。昨日も凄く悩んでたし。」
「え!?」
「ん?どうしたの?」
「いや。・・・なんでもない」
確かに麗衣は悩んでいたがそれは告白をどう断るかだと僕は思っていた。
それに関しては、あの時ある程度だが断る内容が決まったという感じだったはずだ。
けれども、麗衣と一番仲が良い瑠華がまだ悩んでいたというのなら麗衣の悩みはもっと他のことだったのかもしれない・・・
あんまり人に頼る事をしない麗衣のあの発言・・・少しは気になる。
「瑠華。麗衣に告白したのがだれかわかるか?」
「え!?なに?気になるの?もしかして、れいの事好きになっちゃった!?
わたし協力するよ。なんでもいってね!」
最近の女子高生らしく瑠華も恋バナへの興味が尽きないようだ。
けれども、今はそんなことどうでもいいので瑠華を黙らせよう。
「協力してくれるの有難いが・・・瑠華って恋人いたことあるの?」
「え・・・」
なにかを思い出したらしく瑠華がおとなしくなり次には涙目になってしまった。
・・・ほんとに麗衣に言われた事がショックだったんだなぁ
・・・かわいそうに
うるうると目に涙をためている瑠華がいたたまれなくなったので素直に瑠華に協力を仰ぐことにした。
まぁ僕が思い出させたことだが・・・
「・・・瑠華。悪かったよ。協力してくれるか?」
「・・・うん。なんでもいってね・・・」
「ありがとう。」
瑠華が落ち着くのを待って僕は気になっていたことを聞く。
「それで、麗衣に告白した奴って誰かわかるか?」
「え~と。確か2年の坂東先輩だったかな?」
「どんなやつなんだ?」
「わたしも詳しくは知らないけど真面目で優しくていい人ってクラスの子が言ってたよ」
「そっか。ありがとう。助かったよ」
「え?こんなことでよかったの?もっと他にない?」
「大丈夫。ほんとすげぇ助かった。」
「そう?ならいいけどさ。」
麗衣なら絶対に僕には相手の名前を言わないだろうが瑠華になら言ってるかもと思い聞いてみたが上手くいったみたいだ。
坂東先輩か・・・正直言って聞いたことがない。
瑠華もあれ以上知ってることはなさそうだったしどうしようかと悩んでいると。
女子たちも黄色い声援が聞こえてきた。
何事かと思い考えごと一端辞めてコートの方に目をやると見事にボールが相手のゴールに入っていた。
どうやら決めたのは陽々希らしい。その証拠に僕に向かって手を振り「おれが決めた」とジェスチャーしていた。
そのまま陽々希の決めた点が決勝点となり2組が試合に勝った。
体育が終わり教室で着替えていると陽々希が戻ってきた。
「見てたか雨宮!すごかっただろ?」
「ごめん。瑠華と話してて見てなかった。」
「マジかよ!まぁいいや次の機会にでも見せてやる。」
「期待しとくよ」
「おう!まかせとけ!」
陽々希との会話がひと段落したところで僕はさっき瑠華に教えてもらった名前を聞いてみる。
「あ、そうだ。陽々希って坂東先輩知ってるか?」
「ん?坂東・・・ああ。祐輔先輩か。知ってるぞ」
「どんな人なんだ?」
「う~ん。普通にいい先輩だよ。面倒見もいいし明るいし。次期生徒会長候補とか言われてるな。」
「なるほどね。」
「なんか気になる事でもあったのか?」
「いや、別に。よく聞く名前だから気になっただけだ」
「そっか。」
陽々希の話を聞く限りではあんまり欠点があるような人には思えない・・・
陽々希は嘘をつくようなやつではないし第一今ここで嘘をつく理由がない。
・・・麗衣は何に悩んでいるのかますますわからなくなってしまった。
※瑠華が麗衣の事を言うときに漢字だったのをひらがなに変更しました。




