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第3話

 アリスとヘビさんとコマドリさんは、ヘビさんの案内で森の中をどんどん進んでいきます。


 やがて向こうから川のせせらぎが聞こえてきました。


「もうすぐオンボロ橋だよ!」


 ヘビさんの言った言葉にアリスはビックリして思わず聞き返します。


「オンボロ橋?」


「そうさ! 森のみんなはそう呼んでるぜ!」


 やがて森が開けて川にかかった今にも崩れ落ちそうな吊橋のたもとにアリスたちは着きました。


「こんな橋渡れるの?」


 アリスが聞くと、ヘビさんは自信満々に


「もちろんさ! オイラはいつもこのロープを渡ってるよ! アリスもロープに巻き付いて渡れば大丈夫だよ!」


 コマドリさんは、申し訳なさそうに


「あたしは飛べるから気にしたことなかったの、ごめんなさいこんなにボロボロだったなんて……どうりで最近人間が森を通らないわけね」


 と言いました。


 でもドングリ池に行くためには、この橋を何とか渡るしかありません。


 アリスは勇気を出して足を踏み出そうとしますが、ところどころ抜け落ちた板や、その隙間から見える川のザァーザァー流れる音で胸がドキドキして指先が冷たくなるのを感じました。

 

 残っている板の、今にも崩れそうな頼りなさにも足がすくんでしまいます。


「こんなの絶対に無理よ」


 アリスは泣きそうになって、橋のたもとで、みんなとどうしようかと悩んでいたその時です!


 近くの茂みの中から、小さなアライグマと大きなクマが、追いかけっこをしながら飛び出してきました!


 でもおかしなことに、追いかけているのは小さなアライグマのほうです。


 大きなクマを小さなアライグマが追っかけて、クマはアリスたちの後ろに隠れるように逃げ込みました。


 クマは肩をすくめて小さくなって、アリスの肩越しにアライグマに必死に何かを謝りました。


「ごめんよぉー悪気はなかったんだよー」


 アライグマは立ち上がって、クマを見上げて腰に手をやり、シマシマの大きなしっぽをぶんぶん振りながら


「デカい図体してんだからもっと気をつけて歩けよ! オレさまの自慢のしっぽがちぎれるところだったんだぞ!」


 と、もうカンカンに怒っています。


 どうやら、クマがアライグマのしっぽをうっかり踏んでしまったのがケンカの原因のようでした。


 ケンカが嫌いなアリスは、仲直りして欲しくてクマと一緒にアライグマに謝りましたが、アライグマはちっとも許してくれません。


 そこでアリスはリュックからマドレーヌを2つ取り出してこう言いました。


「お母さんが言ってたわ。おなかが空いてるときは怒りやすくなるって。だからアライグマさんこれを食べて落ち着いて! クマさんも一緒に食べて落ち着けば、きっとすぐ仲直りできるわ」


 まだ鼻息荒いアライグマさんも、アリスの差し出したマドレーヌの甘いにおいに釣られたのか、小さな両手でしぶしぶ受け取ってくれました。


 アリスは振り向いて、後ろのクマさんの大きな手にも1つ乗せました。


「甘いお菓子を一緒に食べるのは、一番の仲直りの方法よ!」


 そう言いながらアライグマさんの方を振り返ると、なんとアライグマさんがマドレーヌを抱えて川のほうに下りて行くではありませんか!


 みんなは何が起こったのか分からずに、とりあえずアライグマさんを追って川の方へ下りていきました。


 アリスたちが崖の小道から河原に下り立つと同時に、川のそばでうずくまっていたアライグマさんが


 「ああー!」


 と、叫ぶのが聞こえました。


「どうしたの?」


 アリスたちが急いで駆け寄ってみると、アライグマさんの手の中で、マドレーヌがホロホロと溶けて消えていくではありませんか!


 こちらを振り返ったアライグマさんは、さっきの怒りっぷりがウソのようにしょんぼりした顔で


「洗ったら消えちゃった……」


 と、悲しそうにつぶやきました。


 するとクマさんが


「ぼくのをあげるよ」


 と、アライグマさんの前に進み出て、自分のマドレーヌを差し出しました。


「いいのか?」


「いいよ! なんでも洗っちゃう癖はどうしようもないもん! それより、しっぽ踏んじゃってごめんね」


「オレのほうこそごめんな。誰でも間違うことあるのに怒りすぎたよ。俺も今間違えたし……。そうだ! 仲直りのしるしに半分こにしよう!」


 そう言ってアライグマさんはマドレーヌを2つに割ると半分をクマさんに返しました。


「これおいしいな!」


「うん! おいしいね!」


 やっぱりおいしいお菓子を一緒に食べるのは一番の仲直りの方法です。


 一時はどうなる事かと思っていた、アリスもヘビさんもコマドリさんもホッとしたのでした。




「ところでこんな場所で何してたの?」


「何してたんだい?」


 クマさんとアライグマさんに聞かれて、アリスはドングリ池に行きたいけど、オンボロ橋が渡れずに困っていたことを話しました。


 するとアライグマさんはアリスに言いました。


「アリスって言ったっけ? もう少し先に川の流れが緩やかなところがあるからついてきな!」


「ありがとう!」

 

 今度はアライグマさんを先頭にみんなで河原を歩いていきます。


「ここだ!」


 少し歩いた先に、川のせせらぎがさっきの場所よりも小さなところがありました。


 ここなら歩いて渡れそうに見えました。


 でもアリスはまた困ってしまいました。


 お気に入りの赤い靴と白いワンピースが濡れるのが心配になったのです。


「どうしよう? 汚しちゃったらお母さんに会った時に心配されちゃうわ」


 アリスが言うと、ヘビさんがこっちを見て言いました。


「人間って大変だな。オイラたちなら、ちょっと汚れるのなんか気にしなくてもいいのに」


 コマドリさんが、アリスの肩からヘビさんに言い返します。


「人間じゃなくても身だしなみは大事よ! あたしは水浴び欠かさないもの!」


 そこへアライグマさんが


「だいじょうぶだ! クマさんの背中に乗って渡ればいい!」


 とアリスに言いました。


 でもクマさんは


「ぼく水に入るのこわいよー」


 と困った顔をしています。


 そんなクマさんを見てアライグマさんは


「おまえの大きな体ならここにいるみんなを乗せて川を渡れるさ! いつも一緒にいる俺が言うんだから間違いない!」


 そう言うとぴょんとクマさんの背中に飛び乗り、さらに言いました。


「大丈夫だ。おまえならできる! まずやるんだ! 勇気はあとからついてくる! みんなでアリスをドングリ池に連れて行って、願い事をかなえさせてやるんだ!」


「……わかったよやってみる」


 クマさんはみんなを大きな背中に乗せて川に足を踏み入れました。


 慎重に一歩一歩川を渡っていきます。


「クマさんがんばれー!」

「おまえならできるぞー!」

「マド何とかがかかってるんだからな!」

「がんばってー♪ もう少しよー♪」


 みんなが応援します。


 そしてついにクマさんは向こう岸まで渡り終えました!


 アライグマさんはすぐに背中の上からから飛び降りるとクマさんを見上げて


「なっ! できたじゃないか! もっと自信持てよ!」


 そう言うと、シマシマの大きなしっぽをぶんぶん振って、まるで自分のことのように喜びました。


 クマさんもみんなにほめられて、うれしくて少しくすぐったい気持ちになりました。


 



「あとは道のほうに戻って少し行けばドングリ池だよ!」


 ヘビさんが嬉しそうに言ったあとで、長い首をかしげて急に黙ってしまいました。


 みんなもつられて首をかしげます。


 そしてヘビさんは言いました。


「……あれ? ドングリは?」


 大変です! お願いをするには、ドングリを池に投げ入れる必要があることをすっかり忘れていました!


 しかも今の季節は夏です! 秋に実るドングリが今この森にあるのでしょうか?


 とにかくアリスたちは、ドングリを探しに行くことにしました。



 アライグマさんとクマさんが仲間に加わりましたね

 マドレーヌはあと7個

 まだまだ大丈夫です


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