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第1話

(注)この作品は冬童話2019参加未遂作品です

 参加表明期限に気づかず提出できませんでした

 

 でもせっかく書いてしまったものは読んでほしいので、お時間のある方はどうぞアリスと森の仲間たちの冒険におつきあいください


※小説家になろう内の童話ジャンルの企画「冬の童話祭2019」の企画内イベントの

「逆さ虹の森」の不思議な場所や動物たちの設定を使わせていただいてます。

 チーン!


 オーブンから焼き上がりの合図がしました。

 

 アリスは9才の女の子。

 

 夏休みにおばあさんの家に来たアリスは、お昼からおばあさんとマドレーヌを焼いていたのでした。 


 オーブンの扉を開けると、お行儀良く並んだ12個のマドレーヌからバターの甘くて香ばしいにおいがキッチン中に広がりました。

 どれもきつね色に焼けて、ふんわり美味しそうに膨らんでいます。


「わあー!」


 アリスが言うとおばあさんが


「とっても上手にできたねー!」


 と褒めてくれました。


 さっそく2人でアイスティーと一緒におやつにしました。


 アリスとおばあさんはマドレーヌを1個ずつ食べたので残りは10個、まだまだ沢山あります。


 おやつが終わると、アリスはおばあさんに聞いてみました。


「おかあさんの所に今から持って行っちゃだめ?」


 そうですマドレーヌをこんなにたくさん焼いたのは春から病気で入院しているお母さんに持って行くためなのでした。


「明日おとうさんがお仕事から帰ってきたら車で一緒にお見舞いに行こうね、それにマドレーヌは一晩おいたらしっとりしてもっと美味しくなるのよ。早く食べてもらいたいだろうけど、明日まで我慢してね」


「うんわかったわ! 大丈夫! 明日なんてすぐだもん!」


 アリスは夏休みに入ってからも、お母さんに時々しか会えなくてとてもさびしい思いをしていました。

 

 でもこれ以上わがままを言って優しいおばあさんを困らせてはいけないと、おばあさんの家での楽しいことを考えて明日まで我慢しようとしました。


 朝はお庭にやってくるキツネ、昼はベランダの手すりで歌うコマドリ、夜は満天の星空、そして何よりアリスが気に入っていたのは雨上がりに家の向こうの森の上にかかる逆さの虹でした。


 アリスはそのちょっと変わった虹を見るのが好きなので、おばあさんの家に遊びに行った日に雨が降ってお外に出られなくても、ちっとも嫌じゃありませんでした。


 なぜならその森の向こうに病院があってアリスがその虹を見ている時お母さんも同じ虹を見ているからです。


 病院で一緒に虹を見ながら聞いた、お母さんが昔、森で動物たちと遊んだり、森の小道を近道に使って、街へ遊びに行った話もアリスは大好きでした。


 やがておばあさんが、ソファでウトウトと居眠りを始めたので、アリスはテラスに出て森の上に虹を探しました。


 でも今日はとても天気が良くて虹は出ていません。


「あの森の向こうにお母さんがいる……」


 森の小道をまっすぐ行けば、お母さんがいる病院の前に出るはずだと思うと、アリスはどうしても明日まで我慢できなくなりました。


「今から行けば夕方にはお母さんに会えるわ」


 アリスは麦わら帽子をかぶり、お気に入りの赤いリュックにマドレーヌを入れて、おばあさんを起こさないように、こっそり玄関から外に出て森の小道の入り口に向かいました。



 リュックに入れたマドレーヌは10個

 お母さんと2人じゃちょっと多いかな

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