44 幻覚の使い手フェイト
そのあと、卒業式とかでも恒例の偉い人の演説とか、鼓舞激励があって。
俺はうとうとしていた。
だって!
ずっとお日様照ってるし、ぽかぽか陽気で眠たかったんだもの。
昨日は降臨式がどんな風かとか気になって夜遅かったし!
こんなんかよ、と思って安心しちゃって。
はい。ごめんなさい。うたた寝しました。
気が付くと、セシルに抱えられていつもの部屋にいました。
「まったく……寝るなよ。それなりに大事な式なんだぜ?」
ランディに言われて、ハッとしたけど、もう遅かった。
「あれ? 降臨式は?」
「もう終わったぜ」
セシルに抱えられていることに気付かず、目の前の景色が回転する。
あわてて手を振りまわしたが、無事に地面に足がつき、そして気付いた。
横から聞こえてきたはずのランディが前にいて、後ろにセシルがいて。
「すいません、すいません! ほんとうにすみません!」
セシルに平謝りする俺。
ランディがニヤニヤしながら誰ともなく呟く。
「ここ防音だっけ?」
すると、意外な人物が答えをくれたようだった。
「防音」
「なんで、おまえ知ってんの?」
「どこかの書物で、王城内はどこも防音にしてあると書いてあった」
「そりゃ、なんとも根拠の薄い情報をどうも」
「安心しろ。この部屋に入る前に確認したが、防音魔法の記述があった」
「魔法陣のかよ? よく読めるな、あんな細かい字」
「オートスコープの魔法陣よりは細かくない」
それはそうだけどよ……。
ランディの不満そうな応答が虚空へと消える。
そのころやっと俺は謝罪から脱して、今度はフェイトに平感謝していた。
「もう、ボクに感謝してよね、とは言ったけどさ」
「ありがとうございます」
「こんなにありがとうを振りまかれちゃうと……薄れちゃうよね」
「ありがとうございます」
「有難みもさあ、ないよね」
フェイトによると、こっくりこっくりしていた俺を魔法の力で誤魔化したらしい。
高い精神装備を持っている王さまや、もともと精神の値が高い神官長には騙しきれなかったかも、しれないそうだが、ほとんどの来客者は大丈夫、とフェイトは言う。
要は、多くの人にまぼろしを見せたのだ。
アキラ・シシバはちゃんと起きていて、真面目に式に臨んでいるという姿を。
おばあちゃんは幻術が得意だったらしいよ。
フェイトは自慢げに笑った。
「まあ、そんなにしょげるなよ」
「実際、退屈だったのは否定しない」
「おいおい、ここがいくら防音だからって、言うなよそういうこと」
「セシル、いい人振らないでよ。どうせ、自分もそう思ってたくせに」
「はは、ばれちまっては仕方がない。アキラ、くよくよ悩むなよ。おまえはよくやったぜ」
セシルに肩を叩かれる。
物理的に沈みそうです、物理的に。
精神的にはやや立ち直った俺は、改めてみんなの顔を見た。




