38 これまでの統計によりますと
怒って……ないよね?
俺がリーンの表情を窺っているのに気付いたのか、リーンは大きくため息をついた。
「では、こうしましょう」
「うん。リーンの言うことを聞くよ」
「……これから戦うことになる魔王について、少し聞いていただきたいことがあります」
あ、勉強モードでしたか。
俺は素直に従って、リーンの前に座る。
リーンは随分年季の入った指揮棒を振るうと、俺に突きつけた。
あの、やっぱり怒ってますよね? ねえ、リーンさん。
「今回の魔王は武術メインの魔力型です」
「まりょくがた?」
武術って言うことは、腕力が強いのだろう。
腕力を跳ね返すには耐久値の高さが必要だ。
俺に耐久値などないようなものなので、うまく避けるか、当たらないようにしないと。
とりあえず、前線には出ないほうが良さそうだ。
俺、魔術師だし。
「はい。魔王同士が力くらべをして決める継承型と違い、魔力型は、モンスターたちに望まれて生まれた存在です。すなわち、異常に強い場合があります」
「異常に強いってどうやって判断してるの?」
「実際に戦って、負けた討伐隊の方々の情報から推測しています」
「ふーん」
「これまでの統計から、八年周期で異様に強い魔王が当たることが判明しています」
ちょっと待ってください、リーンさん。
その言いざまからして、あの、冗談ですよね?
「まさか、今年が当たり年とかないよね?」
「アキラさま、安心してください。当たり年はよく前後にずれるのです」
「やっぱり、当たり年なんじゃないか!」
「だ、大丈夫ですよ! 今回は選りすぐりのメンバーが集まってるんですから!」
「そ、そうなの!?」
「ええ。回復スキルを扱えるスカイさま。200年前の英雄の血が混じるマールさま。貴族の多い騎士では珍しい平民生まれのブレイカーさま。地方大会から首都大会まで連覇されたエルリック・グリーンさま。そして、この王城で強くなったアキラさまです」
「俺、埋没してるくない?」
キャラ的にも、バックグラウンド的にも埋もれていく俺である。




