34 フェイトと俺
そんなくだらないことで悩みつつ、動くイーゼルと戦い続ける俺。
ある日、練習を終え、スカイライトの部屋に戻ると意外な人物がいた。
以前、ランディとともに去っていって、会ったのかそうでないのか分からない人物。
そして、リーンと一緒に性別のことについて考えた人物。
フェイトだった。
足を崩して座っている。
やっぱり女の子にしか見えない。
左右に本が散らかっているのは、俺が来るまでの暇潰しに読んでいたからか。
「やっほー。こうして会うのは初めてかな」
「あ、俺は」
「うんうん、知ってる知ってる、アキラ・シシバだよね?」
「ええっとフェイトさん」
「あはは、『さん』なんか要らないよ! ボクもアキラって呼ぶからさ!」
そう言うと、床に散らばる本を掴む。
絵本だ。確か、ランディが懐かしいって言ってたような……。
「すごいね、ここ。絵本コーナーだけでもこの豊富さ。見てよこれ。ランディのうちに置いてあったの。ボク、この話大好きなんだ」
手に取っているのは、ネズミが主人公の絵本。
内容は、ネズミの家族が新しい家を探しに行くという、心温まる話だ。
いわゆる絵本調の絵ではなくて、ドールハウスを思わせる実写的な写真が特徴的である。
待てよ? この世界ってカメラ……写真ってあるのか?
今んとこ見たことないけど。ないなら、これは写実的な絵ってことか?
「俺も好き。文字が読めなかったとき、最初に読もうとしたのがこれなんだ」
「ああ、分かる。これは見てるだけで楽しい本だよね」
パタンと本をたたむと、フェイトはにかっと笑って俺に向き直った。
「今日はキミに会いに来たんだ」
「え、俺に? リーンじゃなくて?」
「ボク、別にあの子と知り合いじゃないよ?」
「だって、ランディを捕まえにきたとき……」
「うん。あれはほんとにびっくりした。騒ぎが聞こえてたから隠れたのに、ボクを見つけちゃんだもの。やっぱリーン家って特殊だね。本職の顔負けだよ」
フェイトは悔しそうに、虚空を見つめていた。




