32 神官長は変な人
俺がこの場所になにをしに来たのか。
ぜんぶ思い出しました。
いや、忘れてた訳では……はい、忘れてました、ゴメンナサイ。
ささっとタンスに駆け寄ってみると、そこには俺の服が!
驚くことじゃないか。
ここは召喚者の部屋だって言ってたし。
で、スマホは……と。
最初にここに来たときのままなのか、ズボンの右ポケットに無造作に入れてあった。
電源は……つかないか。そうだよな、四週間ぐらい放置したんだし、電池ないよな。
俺は、役に立たないスマホを再びズボンのポケットにしまいこむと、リーンに言った。
「用事は済んだよ」
「……? いいのですか、持ち歩かなくて」
「うーん。使える状況じゃないし、たぶん、ここに置いたままのほうがいいと思う」
スマホあると、本よりスマホってなっちゃうだろうし。
なんかスマホ見てると知力下がりそう。
動画15分に付き、知力-1とかだったら怖い。
いや、そもそもスマホは使い物にならないんだから、持っていてもいいのか?
旅には連れてけないから、ここに置いたままのほうが帰るとき、楽だよな?
と、スマホについて俺があれこれ考えていると、ジャキンと音がした。
何事かと顔を上げると、リーンが神官長から離れ、神官長が首元をさすっていた。
「また怒られますよ?」
「なんであなたがそんなことを知っているのですか」
「まあ、長と名の付く職業柄ですね、情報は集まるのです」
「……感情にまかせて刃を振るったこと、謝罪します」
「そんなつんけんするぐらいなら、言わなければいいのに」
「どうせ、リーン家には知られているのです、やけにもなりますよ」
「若い子がそうやって……わたしが言いくるめて差し上げましょうか」
「結構です」
「冷たい返事だ」
置いてきぼり物件、二回目。
刃が迫ってもまったく動揺しなかった神官長。
動けない俺とは違って……でも、不思議とカッコいいとは思わない。
憧れも生まれない。変な人だ。
「アキラさま。行きましょう」
「なんかリーン怒ってない?」
「怒ってません」
「……はい」
絶対怒ってるな。俺じゃなくて神官長にだろうけど。
ほんとに俺じゃないよね? 俺、すぐ近くにいる人はリーンだけなんだから。
後ろから神官長の笑いが聞こえたような気がして振り返ったら、もう誰もいなかった。
え? 心霊現象? やめてくれよー俺怖いの苦手なんだから。もー。




