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31 神官長は俗っぽい

 

 途中でブライトさんは着いてこなくなった。

 リーンが言うには、彼が中級神官であるから。

 その辺の身分制度に関しては、複雑でよく分からないが、神殿も誰もかれも平等に開けている訳ではないらしい。というのは分かった。


 奥へ進み、さっきのブライトさんよりはるかに偉いという高級神官の間を通り抜け、俺たちはとうとうたどり着いた。

 なんか、めっちゃ豪華な部屋に。


「ここは、神官長の部屋……? いいえ、違いますね」

「パトリシア・リーン。何か勘違いしているようですが、ここはわたしの部屋ではありませんよ。ここはコントラクト。いわばアキラ・シシバ氏の部屋ですよ」


 カーテンの陰に男性が立っていた。

 さっきのブライトさんと似た格好をしている。

 けど、なんか派手だ。上級神官と呼ばれていた彼らよりもさらに。


「コント……なんて?」

「コントラクトです、アキラさま。どうやら、歴代の召喚者が過ごすために作られた部屋のようですね」

「少々派手すぎますが、いまの住居よりは落ち着くのではありませんか。パトリシア・リーンが早朝にスカイライトに尋ねていくよりはずっと健全だと思うのですが」

「何が言いたいのです」

「間違ったことは起きてはならない、そうでしょう?」


 え、えーと。取り残されてる感やばい。

 なんか、この、リーンと対峙してる人が神官長!?

 その割には俗っぽいこと考えてるね!


 リーンの頬がさっと赤みをさす。

 彼女をいじめるな、そう言ってやりたかったが、俺の身体は動かなかった。


「わたしが、アキラさまに懸想していると言いたいのですか」

「なに、逆でも構いません。どちらにせよ、国の意思に反することになるのでは、と心配しているだけですよ、わたしは」

「確かに、わたしたちは魔王討伐のための礎……、若輩者ですから要らぬ心配をかけてしまうこともありましょう。ですが、アキラさまも同じように侮るというのなら、リーン家として許しがたいことです」

「安易に家名を出すのは感心しませんねえ。いくらリーン家がそういうところであるにしたって――」


 ダンッと床を踏みつける音がして、そっちを見ると、リーンが刃物をもって神官長に突き付けていた。


「シシバ氏が驚いていますよ」

「黙ってください」

「……」

「アキラさま。こんな騒動のなか良くないのですが、そこの物入れを確認して、持ち物を確認いただけますか?」


 リーンの言葉に意識が覚醒した。


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