29 俺の私物は神殿に
そうこうしているうちに一週間が経った。
俺は無属性魔法を覚え、無事、壁や床に魔法を当てながら、素早い敵に対応するための練習を続けていた。
最初のころは怖くて毎回ぶつけたところを見にいっていたものだが、今はしない。
「アキラさま、大丈夫ですよ。知力1000いってても、土の地面を多少えぐる程度しか攻撃性がないんですから」
「それって伝説レベルの話なんでしょ?」
「そんなことありません! いまでも各地に、彼女がえぐったと言われる岩や建物のあとが残されているんです。有名なパワースポットになってますよ」
「観光地になってるとか……信じられん……」
命中率は、今のところ三割ほど。
リーンは遠隔魔法のオートスコープを覚えれば、魔法も必中になると言っていたけれど、魔法陣が複雑すぎて覚えられなかった。
なんだあれ、マジで文字の羅列って感じ。細かく書きすぎて絶対潰れてるから!
と思ったら、これは伝説の魔法使いが使っていたものを再現した魔法で、本当はもっと簡単だったらしい。
ほんとかあ……?
「そういえば、俺のスマホ知らない?」
「スマホ……といいますと?」
「あー、ごめん。俺の私物なんだけど、こう四角くて薄っぺらいやつ」
「ああ。分かりました。アキラさまのズボンに入っていたものですね。アキラさまの荷物は、神殿側で厳重に保存されているので、なんでしたら今見に行きますか?」
「え、いいの?」
「いつもイーゼルを攻撃するだけでは退屈でしょうから」
「まあ、暇は暇だけど」
ようやくスマホについて聞けた。
セシルの話だと召喚者はいっぱいいるみたいだったけど、スマホは知らないか。
いや、来てる人が同じ次元の地球から来てるとは限らないし、俺と同じ時代かも限らないのか。
難しいなあ。
リーンと並んで、神殿までの道を歩く。
最初来たときは、周りを見る暇もなかったから新鮮だ。
俺は特に花や植物が好きって訳じゃないけど、気がついたら、リーンにいろいろ聞いていた。
「この草には花がないの?」
「いいえ。ノクターングラスは夜、花が咲く種なのです」
「夜に? ってことは日没後に花が開くのか……」
「はい。ですから舞踏会に挿していく女性も多いですよ。舞踏会は基本、夜に開かれますからね。男性からの贈り物としても定番です」
あっちの花、こっちの植物、そっちの木……。
話していたらあっという間に神殿に着いていた。




