26 込められた魔法は
「今日は動くイーゼルを用意してみました」
「え? いまなんて……」
「魔法の力を込めて、魔法具にしたイーゼルです。本格的に旅が始まれば、敵は動きながら襲ってきます。動いている敵でも当てられるように、いまから練習しておきましょう!」
リーンの笑顔がまぶしい。
動くイーゼルってなに?
すっごいパワーワードだな。
いや、俺のためを思って言ってることだし、練習したいのはやまやまなんだけど。
この部屋、誤射とかして怒られない?
誰かの結婚式をあげたりする場所なんだよね? 王さまが来る部屋なんだよね?
傷付けたら、あとで罰金とか罰則とか勘弁してよね……。
そう思いつつ、動くイーゼルに向かって右手を掲げたのだが。
「は、はやっ!? ちょっと、リーン! これ設定間違えてるよ絶対!」
「武術の達人ならこれぐらいの動き、普通ですよ。大丈夫です、アキラさま。時間経過で速度は落ちていきますから、ゆっくり慣れていきましょうね」
「マジで!? 当てられる気がしないんだけど!?」
「魔王は魔術も武術も極めた危険な敵です。当てられないかもしれませんが、速度に慣れておくのも重要ですよ」
「そっか。せめて避けられれば……避けられないよ!」
「アキラさまは魔術師なので避ける必要はありませんよ? パーティーのみなさんが守ってくれますし」
「……そういう意味じゃない」
カクカクとあちらこちらに移動する、イーゼルのようなものに合わせて手を動かすが、とてもじゃないが、当たる気がしない。
ってか、向こうも当たらせる気がないだろ!
一昔前のゲームかよ!
なんなの、この世界の武闘家はみんな化け物なの!?
結局、午前いっぱい使ったけれど、俺が当てられるほどゆっくりにはならなかった。




