19 インテリジェンス・ワンド
朝食が終わったので、リーンに連れられて部屋の外に出た。
次に入った部屋は、廊下を挟んですぐ向かい側だった。
あんまり歩き回らないことにがっかりしたが、すぐにそれは驚きに変わった。
部屋の雰囲気が、様子が、最初に見た神殿にそっくりだったのだ。
「ここは審判の間です。王族のかたが即位の儀式をおこなったり、貴族の令嬢が結婚式をあげたりする場所になります」
「ここ、俺が来て……大丈夫なのか?」
「なにぶん、広い場所がここしかなくて。あなたを王城から出していいなら、是非ともリーン家の屋敷にお招きしたかったのですが。残念です。」
リーンが杖を持ってきた。
俺が想像していたのと違って、細い。
金属製の棒の先に、宝石が挟まっている。
壊れそうだけど、ぎゅっと握りしめて。冷たい金属の感覚が返ってくる。
「アキラさま。真ん中に的を置きますので、その場所からファイアを唱えて的を破壊してください。はい、その位置で結構です」
「こうで合ってる?」
「ええっと、左手を前に突き出してください。火はそこから出ますから」
え? じゃあ杖はなんのためにあるの?
疑問をそのまま伝えると、リーンは笑顔で言った。
「知力増強のためです」
また知力か!
食べ物から始まって、本・食事・行動……なにもかもがステータスに影響を加える世界。
じっとして本を読んでるだけで知力は上がるけど、相対的に耐久が下がると聞いたときの驚きといったら!
もう、乾いた笑いしか出てこなかったよ!
「今はないんですが、アキラさまが旅に出るそのときに、フル装備を渡しますから」
「杖以外に?」
「ええ。その杖は宝物庫から借りてきたものなので、いつか返さねばなりません。ですが、わたしたちリーン家がそれよりもよい杖と防具を、必ずや探してきますので、ご心配なさらずにお待ちください」
「あ、う、うん」
意外な出どころの杖を握りしめて、俺はファイアを唱えた。
大声でファイアと叫ぶのは、ちょっと恥ずかしかったが、ある意味夢の舞台。
中二病だとか黒歴史だとか考えてないで、いざ、鎌倉!
「ふ、ファイア」
小声の詠唱を聞き取ってくれた優しい神さまは、俺の手から魔法を発射させてくれた。
俺の顔より少し大きいぐらいの火の玉が現れて一直線に飛んでいく。
的になっていたイーゼルが砕け散った。




