12 自己紹介をしよう
リーンは大きなため息をついたあとに、聞いてきた。
「お会いになりますか?」
「えっ、あ、うん。彼にもタメ口のほうがいいのかな」
「ええ。仲間となる存在ですから、むしろ罵るような気分でいいかと」
「えっと、リーンはその人のこと、嫌いなの?」
「……わたしの許可なくファーストネームを呼ぶんですよ?」
「ええっと……パトリシアとかいうやつ?」
「あ、アキラさまにはまだ言っていませんでしたね。わたしはパトリシア・リーンと言います。いままでアキラさまがお呼びになっていた“リーン”は家名なのです」
「苗字で呼んでたんだ、俺」
「わたしは家名で呼ばれたいのですから、アキラさまは間違っていません」
きっぱりとリーンは断言した。
さっきの勢いを見ていると、俺がパトリシアと呼ぶのもだいぶヤバそう。
でも、パトリシアってかわいい名前だよな。いつか呼んでみたい。
むくむくと沸き上がる気持ちを押しとどめて、扉の先を見る。
さっきの彼は、この話を聞いているのだろうか?
「……一時間ほど留守にします。しばらくあの男と話すか、本でも読んでいてください」
「分かった」
「では、失礼します」
リーンが木製の扉の向こうに消える。
すると、ゲストの彼がすぐに顔を出した。
「こんにちは。紫芝……じゃない。アキラ・シシバっていいます」
「これはご丁寧に。オレはバートランド・スカイ。短剣使いさ」
ダガーを器用に人差し指で回しながら、彼は言った。




