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第8話 情報屋の報告

 魔大陸にいる6大魔王の一人、不死の魔王ディアボロス・リターニアは大きな体、頭には羊のような角、背中には羽がある悪魔種の魔王だ。

 ディアボロスは自身が君臨する城で客が来るのをを王の間で待っていた。

 

 王の間は魔王の名に相応しく豪華だ。大きめの玉座には色とりどりの宝飾が施されており王の威厳を底上げする。

 一目見て高価だと思わせる多数の名画、陶器があちこちに飾られている。

 扉から玉座にまで敷かれてる絨毯(じゅうたん)は、踏むのも躊躇(ためら)う程の綺麗な柄をしている。

 その絨毯(じゅうたん)の両脇には、屈強で全身鎧の魔族の兵士が多数いて魔王を警護している。


 約束の時間が来て一人の男が王の間にやって来た。背中には剣を背負い、顔や手には傷がある。修羅場をくぐってきたのは誰が見ても分かる。

 男は玉座の前で膝をつき魔王ディアボロスに挨拶をした。


「ご無沙汰しております。ディアボロス様」

「久しぶりだなルールー。相変わらず情報屋の仕事は大変か?」

「はい。知られたくない情報ほど危険ですから。命が幾つあってもたりません」

「ガッハハハ。ルールー程の強者が言うのだ、情報屋もなかなか大変だな」


 ディアボロスは豪快に笑い飛ばした。ルールーの顔は笑み一つ無く真面目な印象が際立つ。社交辞令は苦手のようだ。


「所でルールーよ、依頼した情報はどうだった?」

「ディアボロス様のご依頼です。しっかり調査して来て幾つか分かった事があります」

「そうか。さすがは情報屋ルールーだ。ガッハハハ。では我が部屋にてじっくり話そうか」


 ディアボロスはルールーを連れて二人っきりで自室に入った。




 部屋には王座の間と同様、豪華な装飾品があり、訪れた者を楽しませる。大きめな机と椅子が置いてありディアボロスとルールーは、お互い向き合うように椅子に座った。


「では、調査報告を頼む」

「はい。ご依頼のあった、魅惑の魔王リリムの城で起きた事ですが、目撃者は全員殺されていましたが、リリムの側近で王室にいた者が、見た記憶を残せるレアな魔石を所持しておりました」

「ほう、見た記憶を残せるとはそれは珍しい魔石だな」

「亡くなるまでの記録が残っていて、死体を処理した者が偶然回収して所持しておりました」


 ルールーは魔石を所持していた者から、大金と記憶を見終わったらその場で魔石を壊す条件で見せてもらった。侵入者が映っていた魔石の出所を知られると侵入者から殺される恐れがあるからだ。


「それで何が映っていた?」

「侵入者です。映っていた3人で全員仮面を被っていて容姿は不明、側近を倒す様子はかなりの手練でした」

「リリムの側近を倒す程だからな、リリムの安否は?」

「残念ながら安否確認出来る映像は魔石所持者が亡くなったので見た記憶か途切れてしまい確認出来ませんでした」


 ディアボロスは残念そうな顔をして椅子に深く座った。


「しかし残った記憶の音声で侵入者の目的が分かりました」

「ほう、面白くなったではないか」


 ディアボロスは前のめりになって話の続きを聞き始めた。


「侵入者の目的は『禁忌の鍵』です」

「!? 『禁忌の鍵』か……長く平和が続いて来たと思っていたが、今になってまた『禁忌の鍵』で争いが再発するのか?」


 ディアボロスは懐かしそうに思い出しながらルールーに昔に起こった出来事を話し始めた。




 この世界には禁忌大陸と呼ばれる所があった。禁忌大陸ではBランク以上の魔物しかいない過酷な大陸だ。

 

 禁忌大陸の中央部には無人の大きな都市がある。無人の都市の中に大きな宮殿があり、その中に入ると地下に通じる大きな通路がある。

 その通路は禁忌大陸の巨大な地下10層にもなる入口だ。鍵穴のある扉の通路と、扉が無い通路の2つがある。

 『禁忌の鍵』を10個持っていれば無傷で10層通過出来るが持ってなければ1層ずつ通らなければならない。


 1層の広さは広大で山や森や川、空には雲も太陽の光もある。無人の村や町、都市がありその中の何処かに2層目に通じる入口がある。当然Bランク以上の魔物も多数いて、各階層に通じる入口には強力な守護者がいる。


 この広大な地下10層を突破した先には、莫大なお宝だとか神にもなれらる力だとか、あらゆる欲望を叶えてくれる物があるのだとか言われている。


 『禁忌の鍵』は全部で10個あると言われ、各国が鍵を手に入れるため大金が動いたり争ったりした。

 

 ある国が『禁忌の鍵』を持って無くても禁忌大陸に軍隊を派遣すると他の国も続き、軍隊を送り込んだ。

 禁忌大陸の中央部に、たどり着くだけでも多大な犠牲を出した。大陸中央部にたどり着いても1層目を攻略する事も出来ない国が多かった。

 『禁忌の鍵』を揃える事を優先させる方針にした各国は更に争いを拡大していった。


 『禁忌の鍵』が10個揃えば無傷でお宝が手に入ると信じていた多くの人達にある噂が流れた。

 『禁忌の鍵』は無傷で通れる通路を開ける鍵でもあるが、10層突破した先の部屋にある宝を開ける鍵でもあると。その宝が鍵と同じ本数の10個あるのか、鍵を10個使って1個の宝を開けるのかは分からない。

 

 各国の中で意見が別れた。1層ずつ攻略を主張する者。とにかく最新部まで一気に行くべきと主張する者。

 鍵の使用価値が変わるかもしれないので、各国は一旦争いを中止し、協力し合う事に方針を転換した。大国同士が協力して鍵を集め合計7個の鍵を手にいれた。


 禁忌大陸に再度軍隊を送り込んで1層目から攻略。各国が協力したため1層目を攻略。2層目の初攻略を行った。

 

 この地下は下に行くほど魔物が強くなり、あっという間に被害が拡大。また2層目からは侵入者を襲う追跡者が現れ撤退を余儀なくされた。2層目にも鍵を使って扉を開ける部屋があったため、鍵を2つ残しダメもとで7層目から挑戦した。

 

 しかしあまりの魔物の強さにあっという間に全滅。帰還用の魔方陣に飛び乗り帰還出来たのは数人だけだった。

 帰還出来た者の中には偶然レアアイテムを手にいれた者もいた。地下に行くほど魔物も強いが、滞在している層で手に入るアイテムも下に行く程レアな物が手に入りやすいのだ。


 多大な犠牲を出して得た物が、数人が持ち帰ったレアアイテムだけだった。1度『禁忌の鍵』を使うと消えてしまい、また別の何処かに『禁忌の鍵』が現れると言われている。


 多くの兵を失い、多くの国が争い合って弱体化したため、各国が『禁忌の鍵』集めを凍結した。




「大国が協力しても7個集めるのがやっとだから10個集めるなんて不可能だと言われている。それに最新部に鍵を使って開く宝があるかどうかも分からんからな」


 ディアボロスは頼んで持って来てもらったお茶を飲むと懐かしむように天井を見上げた。


「ディアボロス様は禁忌大陸には入られたんですか?」

「あぁ、興味があったからな。腕試しのつもりもあり部下を連れて禁忌大陸に行った。もちろん鍵は無いから1層目からの挑戦だ」

「それでどうなったんですか?」


 ルールーは情報屋として興味津々だった。

 ディアボロスはお茶を飲むとゆっくりカップを置いた。


「3層目まで行ったのだか部下は残っておらず、広大な場所から4層目の入口を探すのも大変、魔物も手強くなり追跡者も鬱陶(うっとう)しい、守護者も強くなって来てるし、後は疲れるだけ。だから帰ったよ。ガッハハハ」


 ディアボロスは豪快に笑い飛ばした。ルールーもお茶を飲んで、ひと息ついて話し始めた。


「所でディアボロス様、ナリディア国で分かった事もありました」

「ナリディア国? あぁ、魔物に滅ぼされた中央大陸にある小国の事か。何が分かった?」

「……」

「分かった分かった。別料金を払う!」


 ルールーは途端に笑顔になった。


「ありがとうございます。……ナリディア国ですが実は『禁忌の鍵』を国宝として持っていたらしいのです」

「……なるほど。小国のナリディアが何故魔物の軍勢に襲われたのか理解した。『禁忌の鍵』を手に入れるためか。となると魔王リリム襲撃者と魔物の軍勢でナリディア国を襲わせた人物は同一人物か?」

「そこまでは分かりません。ただ『禁忌の鍵』が絡んでるのは間違いないと思います」

「そうか。平和が続いて来たが『禁忌の鍵』を巡って、また争いを起し、禁忌大陸に挑戦する者がいるのか。これは面白くなってきたな。ガッハハハ」


 ディアボロスはお茶を飲み干し、ルールーに調査報告の代金を支払うと体を鍛えるためトレーニング室に向かった。

 代金を受け取ったルールーの顔はもちろん笑顔である。




 レオンはフォックス家の広間にいた。クリスとシンディー、エリーシャにクロノス大森林でキシリア国の兵士に出会った事を話したのだ。


「もう、レオンちゃん! 危ない所に一人で行っては、駄目だと言ったでしょう!」

「ごめんなさいクリス母様……」

「罰として親子スキンシップタイムは延長よ」

「そ、そんな~。クリス母様、別の罰を……」

「駄目です。親子スキンシップ延長は譲れません!」

 

 レオンはガックリと気を落とした。


「残念だったわねレオン」


 シンディーはレオンの肩をポンポンと叩いた。慰めてくれてるのかと思って顔を見るとニコニコしている。これは楽しんでいるだけだなと感じた。エリーシャも諦めなさいとレオンの頭を撫でた。

 レオンの訴えも虚しく親子スキンシップタイムの延長が決まった。




 エリーシャが自分の部屋に戻ると鍵つきの箱を出して、箱を開けた。暫く箱の中身を見たら、そっと箱を閉じ鍵をつけて部屋を出た。

 鍵つきの箱の中には『禁忌の鍵』が一つ入っていた。





  

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