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第7話 キシリア12聖騎士

 女神を名乗るエリーシャを見ながらレオンは考えていた。この世界には、存命の神様がいると本で読んだ事がある。

 実際自分も創造神ビシュヌに出会っているので、神様は存在していると理解している。

 しかし、いきなり私は女神様だと言われてもと疑心暗鬼になるよな。

 レオンの顔を見ていたエリーシャは察した。


「レオン君、もしかして私が本当に女神かどうか疑っているんじゃないの?」

「!? 何で分かるんですか?」

「レオン君の顔に、『私は疑ってます』と書いてあるんですもの」

「えっ、本当ですか!」


 ハンカチを取り出して顔を拭き始めた。

 良し! 我ながらナイスボケを出したぞと思い、エリーシャかシェリーのツッコミを待って、ワクワクしながら2人の顔を見た。

 エリーシャとシェリーはポカーンとした顔をしている。


「レオン君、顔に書いてあるってのは言葉のあやで本当に書いてある訳ではないのよ」

「もう、レオンったら……」


 シェリーは自分の事のように恥ずかしがっている。

 しまった……ボケが上手く伝わらなかったか。もしかしてこの世界にはツッコミ文化が無いのか。だとしたらツッコミ文化を起こさなければ、とレオンは心に誓う。


「まぁ、レオン君が疑うのも無理ないわ。見た目も若いし美人だから、いきなり女神様だと言っても簡単には信じられないよね」


 この人、さらっと自分の事を美人だと言ったぞ。まぁ、確かに美人だから仕方ないか。

 エリーシャは、レオンとフォレストドラゴンが戦って折れた木の所まで移動した。


 エリーシャが近付いた木は真っ二つに折れている。折れた部分にエリーシャが手をかざした瞬間、光が放ち折れた木から新しい木が生えてきて、元通りの木に生まれ変わった。


「どう? 攻撃魔法は得意じゃないけど、回復魔法は女神の名を持つから得意よ」

「凄いですね。無詠唱でしたよね?」

「一応女神だからね。回復魔法なら神級よ」


 さすがは女神だけの事はある。

 目の前で無詠唱の高度な回復魔法を使われたら、信じるしかないだろう。

 それにしても神様って何歳なのだろう。

 気になるな。でも女性に年齢聞いたら失礼だよな。

 そんな事を考えていたらエリーシャが何かを察した。


「後は年齢が気になるかしらレオン君?」

「何で分かったんですか?」

「あなたは顔に出やすいのよ」


 ハンカチを出して顔を拭こうかと考えたが思い止まった。先ずはツッコミを浸透させてからだ。

 

「私の若さは今の状態で固定されてるわ。歳をとっても老いる事はないわ」


 さすがは女神様。一番いい美貌のまま維持できるとは、世の女性が嫉妬してしまうではないか。


「年齢は秘密よ女の子だから。でもエルフ族よりも長生きしてるわ」

「神様って凄いんですね」

「長生きってのも結構辛い時もあるのよ。不老であっても不死ではないわ」

「だからフォレストドラゴンから逃げていたと?」

「その通り。肉体が再起不能になったらさすがの神も死んでしまうわ。不死の体を持つ者もいるらしいけどね」


 不死と言えば、確か6大魔王にそんな名を持つ魔王がいたような気がする。

 エリーシャの姿を改めて見たら、女神だけあって神々しい感じが。

 

「あら、レオン君。じっと見つめちゃって、もしかして私に惚れちゃった?」

「ち、違います。惚れてません」

「もう、照れなくてもいいのに可愛いわね」

「照れてません!」


 この人は母クリスと似ていて、からかってくるな。

 ふと、シェリーを見ると頬を膨らませて何やら怒っているようだ。どうしよっか……




 キノコ採りは諦め、シェリーのご機嫌をとりながら町に戻って来た。シェリーを家まで送り届けると、エリーシャと二人でフォックス家に向かう。


「エリーシャさんは本気でフォックス家に住むんですか?」

「そうよ、レオン君と一緒に寝ようかと思って」

「からかわないで下さい」

「だって、レオン君の反応が可愛いから仕方ないじゃん。フォックス家に住むのは冗談だけど、カルーア町に住もうとは思っているわよ」

「でしたら、住む家が決まるまでフォックス家に泊まれるようにクリス母様に頼んでみます」

「さっすがレオン君。レオン君なら優しくしてくれると思っていたわ。あっ、出来ればレオン君と一緒に寝れる部屋をお願いね」

「もう、エリーシャさん!」


 エリーシャは笑いながらレオンの頭を優しく撫でた。なんだか憎めない人だな。


「所でエリーシャさんは何故、クロノス大森林にいたんですか?」

「大きな嵐が来る前に、安住出来る所を探している途中だったのよ」

「大きな嵐ですか?」


 レオンは空を見上げた。

 雲一つない青空。

 暫くは良い天気が続きそうだが。もしかして大きな嵐とは別の意味なのだろうか……




 フォックス家に着いた二人は、広間でエリーシャを紹介するためクリスを待っていた。お茶を運んで来てくれたメイドのミクリの少し後にクリスがやって来た。

 クリスはドキッとした。レオンの横には若く綺麗な女性が座っていたからだ。

 クリスはエリーシャに会釈して椅子に座る。


「クリス母様、紹介したい人がいます」


 クリスは焦ってしまう。

 もう婚約相手を紹介するんじゃないかと、想像してしまったからだ。


「紹介したいの隣にいるエリーシャさんです。エリーシャさんはカルーア町で住む所を探していているのですが、住む家が決まるまでフォックス家の部屋を借りてもいいでしょうか?」

「えぇ、もちろん良いわよ」


 クリスは安心した。自分の勘違いだったと胸を撫で下ろす。

 紹介されたエリーシャはクリスに挨拶をした。


「初めましてレオン君のお母さま。今回はレオン君のご厚意に甘えて申し訳ありません」

「いいのよエリーシャさん。自分の家だと思って、くつろいでね」

「ありがとうございます」


 レオンはクロノス大森林で出会った経緯を話した。もちろん女神だとは秘密だ。カルーア町に向かう時に魔物に襲われて、偶然レオン達と出会ったと。


 クリスとの紹介も終わり、空き部屋にエリーシャを案内した。部屋を気に入ったエリーシャと、少し雑談して自分の部屋に戻った。創造神の本に新しく描く絵を考えるために。




 次の日、エリーシャは新しく住む家を探すため町に出た。レオンは昨日戦ったフォレストドラゴンの素材を回収し忘れたので、クロノス大森林に向かう。


 昨日歩いた通りの道順で、クロノス大森林の奥まで行った。

 一人で来る森は何だか不気味で心細い。

 魔物に注意しながら進む。

 

 パキパキと小さな小枝を踏みながら森を歩く。魔物が出なければ良い森なのだが。

 機会があればこの森の風景画も描いてみたい。この森は神秘的な感じがする。


 フォレストドラゴンと戦った跡にたどり着き、周りに魔物がいないか木陰に隠れて見渡す。安全を確認したら、素材を探し始めた。

 重力魔法でフォレストドラゴンは潰れていたが、回収出来る素材は残っていた。ワイバーンの素材を回収した時と同じように、牙と爪と鱗を回収する。


 創造神の本を出して『竜王バハムート』の絵の上にフォレストドラゴンから回収した、牙、爪、鱗を置く。

 置いた素材はワイバーンの時と同じで絵に吸収された。


「良かった。ドラゴン族の素材だとパワーアップするみたいだ」


 レオンは他の魔物の素材でも試した事がある。『竜王バハムート』の絵はドラゴン族以外の魔物の素材には反応しないのだ。




 素材回収も終わったが、レオンは森の更に奥まで来ている。滝の音が聞こえていたので、好奇心でついつい来てしまう。

 神秘的な森に合う幻想的な滝。風景画には最適な場所だ。レオンは興奮して滝を見ていた。


 綺麗な風景に心を奪われてて人が近付くのに気が付かなかった。茂みから音が聞こえ、振り返る。

 見ると騎士の鎧でマントを付けた大柄の男がいた。茶髪でオールバック、眼光鋭い顔。

 レオンの事を見ると男は剣を抜いた。その動きは一切の無駄が無く見とれてしまう程だった。

 剣を抜いた男から殺気が放たれた。今まで感じた事のない強い殺気。死を覚悟したのは初めての事だ。

 

 レオンは震えていたが頭の中では着ぐるみ魔法を使わなくてはと思っていた。しかし昨日『竜王バハムート』を使ってからまだ1日経過していない。『竜王バハムート』を使えるまで、数時間待たないといけない。


 今の『妖弧』では確実に勝てないと直感で理解した。恐怖で動きが鈍くなってるレオンを見て、男はゆっくり剣を振り上げる。

 次の瞬間ヒュンと風を切る音が聞こえた。その音の後にはズバッと肉を切る音。勢いよく流れる血の音が、威力の大きさを物語る。


 レオンは膝をつく。ゆっくり振り返ると大きな熊の魔物が真っ二つになっていた。確かBランクのグリーベアーだ。滝に夢中で、魔物が近付いていたのをレオンは気が付かなかった。

 男は剣を鞘に戻すとレオンに近寄って来た。


「なんでこんな所に子供が一人でいるのだ?」

「滝の音が聞こえていて、好奇心で来てしまいました」

「子供が来る場所ではない!」

「ごめんなさい」


 男の声は低く渋味のある力強い声。


 男がやって来た茂みの中から二人の兵士が出て来た。


「ドラゴニア様、何かありましたか?」


 ドラゴニアは兵士の方に向き直す。その時ドラゴニアのマントに描いてある模様を見た。あれはキシリア聖国の国旗だ。


「子供がこんな所まで来ている。森の入口まで送り届けてやれ」

「はっ。分かりました」


 兵士はドラゴニアに敬礼した。ドラゴニアは周囲を見渡し兵士と喋り始めた。


「この近くはロゼ王国領内だ。これだけ捜しても見つからないなら仕方ない。クロノス大森林は多くの国と接しているから見つけるのは困難だろう。奥地では高ランクの魔物も出る。魔物に襲われた可能性もあるし捜索は終了だ、引き揚げるぞ」

「了解しました」


 引き揚げてしまいそうなドラゴニアに、レオンはお礼を伝えた。


「助けて頂いてありがとうございました」


 ドラゴニアは「ふん」と一言呟くと、兵士と一緒に森の奥に消えて行く。

 レオンは残ったもう一人の兵士と森の入口に向かった。道中兵士が話しかけてきた。


「良かったなドラゴニア様に助けてもらって」

「はい、助かりました。ドラゴニア様はどんな方なのですか? 飛ぶ斬撃は初めて見ました」

「あの方は、キシリア12聖騎士の一人、ドラゴニア・グラーデ様だ」


 キシリア12聖騎士。たしかキシリア国の教皇直属部隊。何故こんな場所にキシリア国が? ナリディア国の魔物討伐のためだろうか?


 レオンは入口まで送り届けた兵士にお礼を伝えてカルーア町に戻った。

 キシリア12聖騎士のドラゴニアの殺気を感じて思った。ワイバーンやフォレストドラゴンのAランク魔物より、遥かに強いだろうと。


 










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