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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第3章 魔王来訪編
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第26話 魔獣達

「思っていたより魔獣が多いんだよな……」


 迫り来る魔獣の群れに、ぼやいてしまうレオン。

 ざっと数えても、三百体以上はいるよな。

 特に気になるのは、大きな魔獣フェンリル。


 フェンリルとは巨大な狼の魔物。

 体長は六メートル以上、巨大な体の割には素早い動き。爪と牙が要注意なのは言うまでもないが、強力な炎の息も使えるて、非常に厄介な魔物なのだ。

 魔物の強さはAランク。


「与えられた仕事はしっかり頑張らないとな」


 上空から魔獣の群れに魔法を放つ。


『フレア』


 炎と爆発の混合魔法が、魔獣の群れのど真ん中に命中する。魔法の威力は凄く、砂ぼこりが舞い上がる。

 視界が良くなるまで待とうした時、砂ぼこりの中から炎の渦が!


「わっ、今のは危なかった」


 間一髪避けることに成功したレオン。

 煙が晴れると大きな魔獣。

 さっきの炎はフェンリルか。

 フレアの攻撃を免れた魔獣達がバラけ出す。


「参ったな……集まってくれた方が一網打尽に出来て楽だったのに」


 翼がある魔獣が空に上がってくる。

 キマイラだ。


 キマイラとは、ライオンと山羊と蛇を組み合わせた魔物。この魔物も爪と牙、それに炎の息が要注意。

 魔物の強さはBランク。

 魔獣系の魔物は、爪と牙が本当に厄介だよな。


「ゴルルルッ!」


 牙を剥き出して威嚇するキマイラ。

 ライオンの口が開かれ、炎の息を放つ。

 

 レオンも負けじと大きく息を吸い込み炎の息を放つ。両者同じ技だが、レオンの放つ炎が勝り、キマイラは炎に包まれた。


「倒せたか……いや、ダメか」


 キマイラは炎に包まれても、平気な顔をしている。翼を羽ばたかせ、炎を消していく。

 どうやら、炎の耐性があるようだな。

 ならば、氷ならどうだ。

 レオンは再び大きく息を吸い込む。


『氷の息』


 冷気がキマイラを襲う。

 全身がカチコチに凍り付いてしまうと、キマイラは地面へと落下した。ドスンと落ちた衝撃で、凍っていたキマイラは粉々に砕け散る。


「氷は有効だったか。次行くぞ!」 


 空に上がって来るのは、一体だけじゃない。

 三十体程のキマイラが続々と上がって来る。


 スピードはレオンの方が上。

 囲まれると厄介だな。トップスピードで動いて、追い付かれないよう気を付ける。

 隙を見て氷の息を使い、確実に倒していく。

 

 レオンの爪も有効だった。

 すれ違い様に、キマイラの首を狙う。

 ライオンの首だろうが、山羊の首だろうが、蛇の首だろうがなんでもいい。

 速いスピードが影響しているのか、意図も簡単にキマイラを切り裂く。まるで紙を切るような柔らかさだった。


「おっと、地上の魔獣も何とかしないと」


 空飛ぶ魔獣と勝負している最中に、地上の魔獣はリリム目掛けて移動している。

 先頭を走っている魔獣達に魔法を放つ。


『重力弾』


 大きな黒い球体が魔獣をぐしゃりと押し潰す。

 地面は大きく陥没し、黒い球体が消えた頃には生きている魔獣は一体もいなかった。


 第二波の魔獣が迫っているので、地上に降りて自らを囮とする。

 思った通りだ。

 地上に降りたことで、狙いは再度レオンとなる。

 

 体長二メートルはあるだろう狼達が、レオンを包囲し出す。狼の口は牙を剥き出しにして、唸り声を上げている。

 ジリジリと距離をつめた一体が襲い掛かる。

 大口を開けて噛み付こうとしたが、レオンはバハムートの爪で返り討ちにした。

 狼はその光景を恐れず、今度は五体同時に飛び掛かる。

 動きはレオンの方が速い。

 一体を右手の爪で切り裂き、一体を左手の爪で切り裂く。三体目は尻尾で狼の頭がい骨を砕く。残り二体は氷の息で凍らせる。

 

 あっという間に倒した五体の狼だが、その屍を乗り越え次々に襲ってきた。この狼達は恐怖心がないようだな。

 死を恐れない者は厄介だ。

 仲間が何体殺られても攻撃は続く。


 レオンは、爪、尻尾、炎の息、氷の息で次々に倒す。


「これで最後の一匹だな」


 多かった狼も、ようやく尽きたか。

 





「レオン君、大丈夫かしら……」 


 離れた場所でエリーシャは心配していた。

 遠くから魔法で攻撃している音が聞こえる。


「エリーシャは過保護じゃな。心配せずとも、あやつの力なら大丈夫じゃ」

「ちょっとは心配しなさいよリリム。私のレオン君に何かあったら許さないわよ」


 エリーシャはリリムを睨み付けた。

 

「怪我をした時のために、エリーシャがいるではないか。考えてみよ、怪我を優しく癒してもらえば、心も揺れ動くものじゃ」


 ニヤッと笑うリリム。

 

「うっ、確かに一理あるかもね。でも大怪我だと嫌よ。出来れば軽傷程度がいいわ」

「神級の回復魔法が使えるじゃろ。大怪我でも大丈夫じゃ」

「気持ちの問題よ。大怪我を見たら心臓が止まるかもしれないでしょ」

「やれやれ、困ったやつじゃ」 


 そわそわしているエリーシャを、リリムはあの手この手でなだめていた。

 

 




 次は、どの魔獣が相手かな。

 

 ドン、と地面を足で叩き威圧するのは、頭が三つある魔獣。

 ケルベロスだ。

 

 ケルベロスは犬の頭が三つある魔物。

 体長は四メートル前後。三つある頭はそれぞれが独立しており、三体の犬が一体に合体した感じだな。

 魔物の強さはBランク。


 ケルベロスの三つある首全部がレオンを睨む。


「凄い目付きで睨まれているな。よだれを垂らしている、俺を食う気かな……」


 一歩、二歩とレオンに近付き、三歩目で大きくジャンプした。着地と同時に爪で攻撃するが、レオンはサイドステップで避けているのでその場にいない。

 一番左の頭がレオンを見付けると、ガブリと噛み付く。これもレオンはバックステップでかわし、左の頭を目掛けて殴った。


「キャイーン!」


 ケルベロスは泣き声を上げた。

 殴られた左の頭の顎は砕けてしまっている。

 噛み合わせられない顎が痛々しい。


 残り二つある頭が、レオンに向けて大口を開ける。

 その口から高温の炎を放つ。


 レオンは、顔の前で両腕を交差して防御する。

 炎を吐き終えても平然と立っていれた。バハムートは、耐熱性のある着ぐるみなのだ。

 

 ケルベロスの爪による追撃をかわして、バハムートの爪で反撃する。

 右の頭を爪で切り裂く。

 頭はボトリと地面に落ちた。

 間髪いれず、残りの頭も爪で切り裂く。


 頭が全部無くなったケルベロスは、地面に倒れ込んで動かなくなってしまった。


 残りの魔獣も倒していき、最後に残ったのはフェンリル一体だ。

 

 大物らしくゆっくり歩いて来るが、油断をするつもりはない。突如スピードを上げたフェンリルは、一瞬でレオンの前に現れると、自慢の爪で切り裂く。

 どの魔獣よりも重い一撃。

 防御はしたが、少し切り裂かれた。

 

『炎の息』

 

 至近距離でフェンリルに炎を与えてやったが、大したダメージは無い。

 フェンリルにも炎の耐性があるみたいだな。


 今度はお返しとばかりに、フェンリルの大口から炎が出る。普通の炎とは違って黒い炎だ。

 これも今までとは違う炎で強烈だった。耐熱性のあるバハムートでも熱いと感じる温度。

 

 慌てて氷の息を自分に吹き掛ける。

 まとわりつく炎で、氷の息を使わなければ危なかったかもしれない。


「フェンリルは危険な相手だな」


 一旦離れようと動いても、追い付いてくるフェンリル。体は大きいくせに、スピードがあるとは油断ならない敵である。


 氷の息を出したが避けられ、フェンリルがまた黒い炎を出そうと口を開けた瞬間、魔法を口目掛けて放つ。


『フレア』


 フェンリルの体内で爆発した魔法は、レオンも吹き飛ばした。

 至近距離で放った魔法なので、巻き添えをくらってしまう。


「いてて……結構痛かったな。でもフェンリルを倒せたし、良しとするか」

 

 見渡せば、魔獣達はもういない。

 あんなに多くいた魔獣だったが、全部退治出来た。疲れがどっと出てくる。だが、リリムの言いつけは達成した。 


「任務完了だな」


 




 リリムとエリーシャの元に戻れば、すぐエリーシャに抱き付かれた。


「レオン君が帰ってきてくれて良かったわ」

「わっ、エ、エリーシャさん苦しいです」


 豊満なエリーシャの胸に、顔を押し潰されたレオン。


「ご苦労じゃったなレオン。ほれ、回復してやらんかエリーシャよ」


 胸を押し当ててるエリーシャにリリムが促した。


「そうね、回復して元気な体も抱き締めないと」


 そう言ってエリーシャは回復してくれた。

 回復が終われば、再度強く抱き締める。

 

「流石は我が親衛隊だ、褒めてつかわす」


 リリムから労いの言葉をもらう。

 この人も感謝するんだと驚いた。


「あ、え、えっと、ありがとうございます」


 エリーシャに抱き締められた状態でお礼を述べる。


 和やかな雰囲気だったが、突然この場の空気が変わった。

 その原因は、遠くからやって来る男のせいだ。

 

 

 


 



 

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