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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第3章 魔王来訪編
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第24話 暗殺者

 魔王リリムは、カルーアの町に住む事になった。

 と、言っても住む家はまだ決まっていない。

 ならば、部屋の余っているフォックス家だ。


「そんな、流れでリリムさんがいるんてすよ」


 フォックス家の二階で、レオンはエリーシャに説明した。


「よりによって何でフォックス家なのよ。宿屋とかあるでしょ、リリムならそれでいいわよ」

「リリムさんが、どうしてもフォックス家がいいと……ほら、魔王様ですし、怒らせたら後が怖いですしね……」


 戦いを思い出すと、背筋が寒くなる。

 両親にもリリムがフォックス家に暫く滞在する許可は得た。流石に魔王だと知った時は、驚いていたけどね。

 因みにカルーア町のお偉いさんは、魔物リリムをどう扱うか会議中らしい。

 王都にも急いでペカザスを飛ばした。

 事の重大性がよく分かる。


「何じゃ? エリーシャは妾がフォックス家に厄介になると、不都合なのか?」


 リリムが部屋から出て来た。

 どうやら会話が聞こえていたようだ。


「不都合よ。この家は、私とレオン君との愛の巣でもあるのよ」

「いやいや、そんな事実はごさいません」

「その内そうなるのよ」

「勝手に決めないで下さい」


 とんでもない女神だな。

 まさか夜這(よば)いとかしないよな?

 いや、エリーシャならあり得るかもな……


「エリーシャはどうでもいいが、妾はレオンに興味がある」

「俺ですか?」

「そうじゃ。妾の魅了の魔法が効かぬ男は、滅多にいないからな。着ぐるみ魔法とやらも気に入った。妾は強い男が好きじゃからな」

「恐悦至極に存じます」

「うむ。素直な奴じゃ、ますます気に入った」


 魔王リリムに気に入ってもらえたようだ。

 でも気に入ってもらえて、よかったのか?

 まぁ怒らせるよりは、ましだろう。


「それよりもリリム! 貴女は追われている身でしょう? わざわざ魔王の身分を明かしてもいいの?」


 エリーシャの言い分は最もだ。


「無論問題ない。妾を狙っているのは一名だけだ。この地でレオンと共に奴を討つ」

「えっ!?」


 今、俺の名前出たよな。聞き間違いですよね。

 リリムを見て自分を指差したら、リリムは大きく頷いた。

 聞き間違いじゃないみたいです。


「な、なんで俺なんですか?」

「妾の親衛隊だからじゃ」

「いつ親衛隊になったんですか?」

「たった今じゃ!」


 しまった! どんでもない人物をフォックス家に、招き入れてしまったな……


「ほらね、レオン君。私が不都合って言った意味、分かったよね?」


 俺は大きく頷いた。




 カルーア町の酒場は今日も満席。

 大量のお酒や、大量の食べ物の注文が飛び交う。

 酒場の店員が目まぐるしく働くのだが、仕事がさばききれていない。

 それもそのはず、リリムが訪れているのだ。


 リリムが訪れると、酒場の店員は騒ぎ出す。

 大勢の男達を連れ添い、店中の酒や食べ物を食いつくし、去っていく。売り上げは凄いが、忙しさも凄い。

 ゆえに店員は恐れる。

 リリムが訪れることを。


「げっ、今日も魅了の魔法で男達を虜にしてるんですか?」 

「あたりまえじゃ。妾の財布共だからのぉ」


 リリムの呼び出しに、酒場までやって来たレオンは呆れた。

 確か、この前も貢がせてたよな。

 リリムの目はトローンしている。酔っているみたいだな。

 テーブルには大量の空のグラス。そのテーブルの周りには、魅了の魔法にかかった男達。

 男達は魅了の魔法にかかっているが、しっかりお酒を楽しんでいるので不問にしとくか。

 


「それでリリムさん。用って何ですか」

「焦るではない。それよりも、注文したらどうだ」


 リリムに促され、注文した。

 頼んだのは照り焼きチキン。

 飲み物はもちろんジュース。

 注文した食べ物と飲み物が揃うと、リリムと乾杯した。


「うむ。今宵の酒も悪くはない。じゃんじゃん飲み食いするのだぞ、レオンよ」

「は、はい。頂きますね」


 支払いは男達だ。

 申し訳なく思いつつ、料理を楽しんだ。


「レオンよ。お主を呼び出したのは、協力してほしい事があるからじゃ」

「協力ですか……何をするんですか?」

「妾が追われているのは、知っておろう」

「この前リリムさんが言ってましたよね。襲撃者の一人がしつこいと」

「そうじゃ。そのしつこい奴を、妾とレオンで仕止める」


 リリムを狙っているのは、暗殺者ラッセン。

 冒険者ギルドにも指名手配されている極悪人。獣族の男性で、年齢は不明。殺害された人数は、四桁を超えると言われている。


「危険な奴なんですね」

「厄介なのは、鼻が効くことじゃ。遠くにいても、匂いで対象者を何処までも追ってくる」

「では、いずれカルーア町に来るんですね」

「恐らくな。奴は手下の魔物を送り続けておった。手持ちの魔物もそろそろ尽きるはずじゃ」

「そうなると、ラッセン本人が出てくるんですね」

「そうじゃ。ラッセンは妾が仕止める。レオンは雑魚共の相手をするのじゃ」

「分かりました」


 ラッセンは、魔物を手下にしているのか。

 なかなか手強い相手だろう。

 雑魚共と言っても侮れないよな。気を引きしめなければいけない。




「うー。まだ飲めるのじゃ」

「しっかりして下さいよ、リリムさん」


 まさか魔王が酔いつぶれるとは。 

 只今リリムに肩を貸して、フォックスに戻っている。

 酒場でさんざん飲み食いしたあげく、支払いは結局魅了の魔法にかかった男達。

 魔王とは恐ろしい者だ。


 フラフラした足取りのリリムを支えながら、夜道を歩いて行く。


「ここにいたんだレオン君」

「エリーシャさん。ちょうど良かった、リリムさんを連れ帰るの手伝って下さいよ」

「もう、リリムったら。しょうがないわね」


 帰りが遅いレオンを心配して、エリーシャが探しに来てくれたようだ。

 レオンがリリムの左側を、エリーシャがリリムの右側を支えた。なかば、引きずる状態になっているが、魔王だから大丈夫だろう。と、エリーシャが言っていた。


「ズリズリ引きずってますが、本当な大丈夫なんですか」

「大丈夫大丈夫。魔王って耐久力が半端ないのよ。これくらい、ダメージに入らないわ」


 リリムとエリーシャの仲だからこそ、こんな扱いでもいいのだろう。

 本当だったらもっと敬意をはらうんだと思う。

 こんな酔っぱらいでも、魔王だかね。

 

「ところでレオン君。リリムとは何を話したの?」

「リリムさんと協力して、ラッセンと戦う事です」

「ラッセン! あの暗殺者のラッセンなの?」

「はい。そのラッセンです」

「とんでもなく危ない奴を相手にするのね」

「やはり危険でしょうか……」

「そうね。危険よ」


 危険か。

 やっぱりそうだよね。

 冒険者ギルドに、長い間指名手配されているような奴だ。危険じゃないわけがない。

 何で親衛隊に任命されたのだろうか。

 ため息が出る。


「レオン君の事だから、安請け合いしたんでしょ」

「うっ……すいません」

「でも、その優しい所は好きよ」


 エリーシャは優しい眼差しで、レオンを見つめた。

 思わずドキッとなる。

 

「しょうかないわね。私も協力するわ」

「エリーシャさんもですか!」


 急な申し出に驚いた。

 エリーシャは先頭向きではないが、回復の事なら凄く役に立つ。


「いいんですか? 危険ですよ」

「覚悟は出来てるわ。それに危なくなったらレオン君が、助けてくれるでしょ」

「そうですね……全力で守ります」

「流石は私の王子様。頼りにしてるわ」

「だから、いつ王子様になったんですか」


 マイペースなエリーシャに安堵する。

 危険な相手だが、リリムとエリーシャがいるならどうなかなるかも。改めて気を引きしめる。


 今やれることは……この酔っぱらいを無事に連れ帰る事だな。





 

 



 




 





 

 

 

 

 

 





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