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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第3章 魔王来訪編
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第23話 旧友

 何故かエリーシャがこの場に来ている。


「どうして、エリーシャさんがここに?」

「二人を止めに来たのよ」

 

 エリーシャはそう言うと、魔王リリムを見た。


「久しぶりねリリム。」

「久しいなエリーシャ。そなたは、相変わらず元気そうじゃな」

「貴女もね」


 どうやらこの二人は知り合いのようだ。

 ともかく、戦いは終わりそうだ。

 一先ずホッと胸を撫で下ろす。


 取り合えずエリーシャとリリムに話を聞こう。


「お二人は知り合いなのですか?」


 レオンはエリーシャとリリムに聞いてみた。


「そうよ。リリムとは旧友ってとこかしらね」


 旧友と聞いて驚いた。女神と魔王が旧友か。世の中いろいろとあるんだな。

 まぁ、長生きできる両者だ。関わりがあった時もあるのだろう。


「ところでリリム、貴女は何をしに、この町に来たのかしら。もしかして私に会いに来たの?」

「別に妾は、そなたに会いに来たのではないぞ」

「あらそう。それは残念ね」

「この町に来たのは、たまたまじゃ。逃亡中の身じゃしな……やっぱり、たまたまは撤回じゃ。美味しい物が多い町で、興味があったのじゃ」

「相変わらずの食い意地ね」

「それが楽しみじゃからな」


 魔王も案外、美食家なのかもしれない。

 それよりも、安否不明の魔王が生存していた事と、逃亡中の身って事、聞きたい事は沢山ある。


「あら、リリム。逃亡中って言わなかった?」


 エリーシャが聞いて欲しい事を、聞いてくれた。 


「そうじゃ、妾の城を襲った連中の一人がしつこくてな、追っ手を次々送り込んでおるのじゃ」

「魔王も難儀するのね」

「退屈せずにすむ」


 リリムの顔には余裕があった。

 しかし、魔王に追っ手を送るなんて、どんな連中なんだよ。

 おっかない世の中だ。


「それでリリム。狙われた理由はなんなのよ?」


 おっと。確信をつく質問だ。

 リリムは一息つくと、口を開いた。


「禁忌の鍵が関係しているのじゃ」

「禁忌の鍵ですって!」


 エリーシャの顔色が変わった。

 禁忌の鍵とは確か、禁忌大陸の地下迷宮に使用出来る鍵の事だよな。所在が確認されていたのは、クルーズ帝国とキシリア聖国が、それぞれ一個ずつ持っていたはずだ。

 魔王リリムも禁忌の鍵を所持していたのか。


「まさか、リリムが禁忌の鍵を所持していたなんてね。襲って来た連中は、何者なのかしら?」

「そこまでは妾も分からぬ。襲撃してきた連中は、全員仮面を付けておった。それに禁忌の鍵は、先代の魔王が持っていた物を、妾が受け継いだにすぎぬからな」


 禁忌の鍵を狙って魔王を襲ったのか。禁忌の鍵とは、余程の価値があるのだろう。


「ところで人の子よ、そなたは何者じゃ。エリーシャとは知り合いのようじゃな」


 リリムは俺の方を見て言い放った。


「ですから、言ったじゃないですか。刺客ではないって。俺はカルーア町で暮らしている一般人ですよ」


 リリムの顔はまだ、納得してはいないような顔だった。


「レオン君、刺客と勘違いされたの? かわいそうね。リリム、この子は刺客ではないわ。私が保証するわよ」

「ほう、エリーシャがそこまで言うのであれば、刺客ではないのだろう。勘違いして悪かったなレオンとやら」  

「いえ、誤解が解けて何よりです」


 ようやく、身の潔白が証明された。

 ありがとうエリーシャさん。

 エリーシャに会釈すると、ウインクで返してくれた。


「レオンとやら、そなたの魔法は不思議じゃった。あの魔法は何なのか?」

「あれは、着ぐるみ魔法です」


 創造神ビシュヌの事は伏せておいて、描いた絵が力を与えてくれる、不思議な本を持っていると説明した。


「珍しい魔法じゃな。その魔法のせいで、妾の魔法も効かなかったのか?」

「リリムさんの魔法ですか?」


 そう言えば、酒場でそんな事を、言っていたような気がする。


「酒場の時の事ですか?」

「そうじゃ。妾の魅了の魔法じゃ」

 

 魅了の魔法。確か学校の授業で習ったぞ。

 相手の心を虜にする魔法。

 そんな魔法を、あの酒場で使っていたのか。道理で酒場にいた男達が、膝まずいていた訳だ。


「多分、本を所持していたからだと思います」

「そうであったか。本当に不思議な本じゃな」


 取り合えず本のお陰にしておこう。


「さてと、ここじゃなんだから皆で町に戻るわよ」


 エリーシャの一言で、リリムも俺も頷いた。




 カルーア町の酒場まで戻ってきた。

 魔王リリムが、飲み直したいらしい。エリーシャと一緒に。

 俺も取り合えず参加することになった。


「久しぶりの再会に乾杯」


 エリーシャの乾杯の挨拶で宴が開始された。

 魔王リリムは酒場に着くまでの道のりで、魅了の魔法を使い、男達を虜にした。

 虜にした理由は、酒場の代金を男達に払わせるためだ。何とも恐ろしい魔法である。


「エリーシャは何故、この町におるのじゃ?」


 リリムは酒の入ったコップを一気に飲み干した。


「私はレオン君に、クロノス大森林で助けられたの。私の王子様なんだからね。お姫様は王子様と一緒になる運命なのよ」


 俺は、飲んでいたジュースを吹き出した。


「ちょ、ちょとエリーシャさん。何ですか、その例えは!」

「いいじゃない。本当の事なんだから。相変わらずレオン君の慌てっぷりは、可愛いわね」


 クスクスとエリーシャは笑う。


「その年で王子様か。なかなかやるではないか、レオン」

「リリムさんも茶化さないで下さい」

 

 似た者同士なのか、この二人は。


「ねぇ、リリム。これからどうするの?」

「そうじゃな、暫くはこの町に留まるつもりじゃ」

「魅了の魔法で、男達に貢がせ過ぎないようにしなさいよ」

「程々にするつもりじゃ」


 程々か。リリムの顔がニヤついているのを見ると、程々ではないなと感じた。

 この際だから、聞いてみたい事を聞いてみよう。


「リリムさんは禁忌の鍵を持っていたんですよね。禁忌大陸には、行った事あるんですか?」

「妾は、禁忌大陸に行った事はない。過酷な場所とは聞いておるからのぉ。不死の魔王が昔、挑戦したとか言っておったぞ。まぁ、途中で諦めたらしいが」


 他の魔王が禁忌大陸に挑戦したのか。しかも、諦めたなんて。とんでもなく過酷な場所なんだな。

 思わず身震いした。

 

 それと、もう一つ聞いてみたい事がある。


「エリーシャさんとリリムさんは、どんな仲だったんですか?」


 ピタリとエリーシャの動きが止まる。

 それを見てリリムが笑顔で答えた。


「妾とエリーシャはその昔、どちらがいい女か勝負したのじゃ」

「ちょっとリリム! 昔の話は止めてちょうだい」


 慌てるエリーシャは珍しいな。

 面白そうな展開だ。


「そ、それで勝負はどうなったんですか?」

「レオン君! 子供はもう眠る時間よ!」

「まだ夕方ですよエリーシャさん」

「うっ……そうだったわ」


 これは、是非とも知りたい内容だ。


「エリーシャの慌てぶりも、久しぶり見たぞ。レオン、妾とエリーシャの話はその内話してやろう」


 エリーシャはホッとしている。

 リリムが「貸しだぞ」みたいに、エリーシャに目配せさている。

 まぁ、楽しみは取っておきますか。

 お酒を飲み干したリリムは手をあげる。


「店主、妾達の席にもっと食べ物、お酒を持ってくるがよい」


 金づるがあるから、豪勢に頼む気だな。

 油断出来ない魔王様だ。

 その宴は夜遅くまで続き、他の客にもご馳走するなどの大盤振る舞い。

 酒場は今まで一番の売り上げだったらしい。

 因みに魔王リリム達ご一行は、一銭も払わず、魅了した男達に払わせたそうだ。








 


 『戦慄の魔王を受け継ぐ転生者』

 新しい小説を書いてみました。読んで頂いたら光栄です。

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