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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第2章 魔法学校編
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第19話 ヴァンパイア

 授業中なのだが視線を感じる。それも多くの女性から。これは……嫉妬の視線! 今日は特に女性生徒が多い。理由はディースが、この授業を受けているからだ。

 

 レオンはディースの隣の席で授業を受けていた。それだけで、多くの女性から嫉妬の視線が向けられる。

 ディースが動けば女性も動く、というロゼ魔法学校の新しい格言が生まれた。イケメン恐るべしだ。

 

 魔族の吸血鬼種であるディースは、俗にいうヴァンパイアだ。

 ダークブラウンの髪に、金色の瞳でパッチリとした目。年齢はレオンと同じ12歳だ。身長が高く大人びた容姿は、実年齢よりも上に見られる。

 そのため、10代の女子生徒だけではなく、20代の女性生徒からも人気がある。


 後の席から女子生徒達のヒソヒソ声が聞こえる。


「ちょっと何よあの子! ディース君と馴れ馴れしくして」

「あの女の子、男性用の制服来てるし。目立ってディース君に近付こうとしているのよ」


 馴れ馴れしいもなにも、同じ特別クラスだし。

 まぁ、女の子扱いの方は、散々言われてきたからもう慣れたよ。

 レオンの隣に座っているディースは、肩を震わせていた。


「ぷっ。くっくっ……」

「笑うなよディース」

「だ、だって、女の子って……」


 授業中なので口に手を当て笑い声を抑えている。

 最初は敬語を使っていたが、お互い同い年なので、次第に敬語も無くなった。

 今では、気軽に話が出来る友達だ。


「そんなに笑いのツボに、はまったの?」


 机の上にうつ伏せになって、笑いこらえているディースをつついた。

 コクンと、うつ伏せになったまま頭が動く。 


 普段クールなディースも、俺の前ではよく笑う。特に女の子に間違われるネタが好きなようだ。たまに何も無いところで、急に思い出して笑うほどだ。

 姉のシンディーから、着せ替えられてるのは黙っておこう。




 時間が出来たので、前から調べてみたと思っていた事を調べる。禁忌大陸の事だ。

 学校の図書室に入ると、先ずは受付の人に挨拶をする。挨拶は基本だからね。受付の人は年配の女性で、笑顔で挨拶を返してくれた。

 

 木で作られた机と椅子には、30人くらいの生徒が調べものをしたり、恋愛をしていた。恋愛だって? 一組のカップルが、体を密着させながら、本も見ず、イチャイチャしている。

 熱々のカップルだが、出来れば人の目も気にしてほしい。周りの生徒もチラ見しているし、受付の人もカップルの近くで、あり得ないくらい咳払いをしている。これも青春ですな。


 禁忌大陸に関する本を見つけ、とりあえず手に持てるだけ持っていった。机の上に本を積み上げて置くと、席に座り、一番上にある本から読んでいく。


 未だに誰も完全攻略出来ていない、禁忌大陸の地下迷宮。禁忌大陸の中央に無人の大都市があり、その地下には全10層にもなる広大な地下がある。

 

 なぜ完全攻略出来ていないのに、10層あるのが分かるかというと、地下入口に石碑があるからだ。

 石碑には、この世界に『禁忌の鍵』が10個あり、地下10層の迷宮があると書かれているらしい。


 地下といっても1層の広さは、山や森、川や湖もあり地上と変わらない広大な空間だ。空にも雲や太陽の光もあるらしく。朝、昼、晩といった時間の流れもあるそうだ。

 

「おいおい、どんな仕組みなんだ? 前世の日本より凄い技術があるのか?」


 本を読んでいて思わず声が出た。

 この世界は、魔法や珍しい物も沢山ある。もしかしたら、非化学的な事も可能なのかもさしれない。とにかく、読み進めていく。

 

 地下迷宮について記述がある。地下迷宮に入ると、時間の流れが変わるらしい。地下迷宮で一年過ごしても、地上に出たら一ヶ月前後になるらしい。

 髪や髭が伸びる等の身体変化は、地下迷宮の時間帯に影響を受ける。年齢の変化は地下迷宮で一年過ごしても、実際には一ヶ月前後ほどの年を取るだけだ。


 修行するには理想な環境にも思えるが、禁忌大陸に生息している魔物は、Bランク以上しかいない。

 同じ魔物でも禁忌大陸の魔物は凶暴で手強い。人も寄り付かないので、魔物の生息数も多いく、独自の生態系が成されている。


 地下の階層を守る、守護者の事も書かれている。昔は大国が協力して、迷宮攻略を試みたが失敗した。守護者が強敵なのも、攻略出来ない理由の一つだ。

 守護者がどんな姿なのか、どんな魔法や技を使うのかを記す記述はなかった。

 

 まだ新しく書かれた本を見た時、今の魔法や剣術なら攻略出来るかもしれないと書かれていた。大国が協力して攻略を始めたのが数百年前。魔法や剣術も、日進月歩で進化して来た。今なら、攻略出来るはずだと、本の作者が持論を書いている。

 しかし、未だに攻略したとの情報はない。やはり、禁忌大陸とは特別な場所なのだ。

 

 最後に、宝と鍵についてだ。地下迷宮は下の階層に行くほどレア度が上り、貴重なお宝が手に入る。クルーズ帝国が持ち帰った宝は、国宝級の力を秘めた宝だったらしい。

 鍵については『禁忌の鍵』と呼ばれており、10層をショートカット出来る扉で使えたり、最下層の宝で使えたりと、諸説さまざまだ。

 最下層の宝は、莫大な財宝とか、神にもなれる力だとか、これも諸説いろいろある。最下層には何があるのかは、結局誰も知らないままだ。

 現在『禁忌の鍵』は2個の所在が確認されている。クルーズ帝国とキシリア聖国だ。残りの鍵は所在不明らしい。

 読み終えると、本を閉じた。


 椅子に座ったままで、両腕を上にあげて、伸びをした。

 ギシッと、隣に誰かが座った音がする。ディースだ。


「よう。何をよんでいるんだレオン?」

「禁忌大陸に関する本だよ」


 ふぅーんと言って、ディースは置いてあった本を手に取り、パラパラとページをめくる。


「もしかして、禁忌大陸に行くのか?」

「まだ、なんとも言えないかな。興味はあるけど」


 危険な場所と分かっているが、冒険心がうずいてしまう。今は、子供で行くのは無理だろう。大人になった時は、挑戦してみたい。


「ところで、ディースは何しに図書室に来たの?」

「時間がくるまで、図書室で過ごそうと思ってね」

 

 禁忌大陸に関する本をディースは静かに置いた。


「何か予定があるのかい?」

「これから決闘があるんだよ」

「決闘だって!」


 涼しい表情で決闘と言ったディースに驚いた。 




 待ち合わせの時間になる前に、ディースと一緒に校舎裏まで向かう。人通りも無く、薄暗い場所だ。

 しかし、呼び出された場所が校舎裏とは……異世界でも同じなんだな。


 発端は、ディースが女の子の告白を断った事だ。爽やかイケメンで、モテるディースは、よく告白されるらしい。実に羨ましいです。

 問題なのは告白を断られた女の子を、好きだった男がいた事だ。男は落ち込んだ女の子を見て怒ったらしい。

 これは逆恨みってやつですよ。


「モテるって罪ですね、ディース」

「俺もモテたくて、モテてるわけじゃないの。断る時も傷つけないように、言葉を選ばないといけないから大変なんだよ」 


 くっ、一度は言ってみたい言葉を簡単に目の前で言われるとは。(まぶ)しすぎるぜディース。

 

 呼び出された時間になると、二人の男がこっちに近付いてくる。一人は人族の男、短髪で年は15前後だろう。もう一人は犬人族の男。筋肉質で大きな体だ。


「俺様の呼び出しに、ちゃんと逃げずに来れたようだな、ディース!」


 短髪の男が睨んだ顔をして叫んだ。


「ご丁寧に時間指定で呼ばれからね」


 対するディースは冷静だ。

 短髪の男がレオンをチラッと見た。


「そいつはお前の彼女か?」

「えっ!?」


 一言だけ呟いたディースは、その後うずくまり、口に手を当て笑いだした。ダメだ。ツボに入ったディースは、しばらく動けないだろう。ここは俺がいくしかない。


「俺は男で、ディースのクラスメイトです」

「チッ、紛らわしい」


 紛らわしいとは失礼な。間違ったのはそっちでしょ。それに男性の制服着ているんだから、気付いてくれよ。

 突然、ポンッポンッと軽く肩を叩かれた。


「レオンは下がってて。ここは俺がやる」


 まだ口元がヒクヒクしているが、ある程度の笑いからは、回復したようだ。そういえばディースが戦っているのは、まだ見たことない。無詠唱者だとは知っているが。


「威勢がいいなディース。特別クラスだからって調子にのるなよ」


 短髪の男が拳を握り、殴りかかってきた。ディースはギリギリを避けていた。男のパンチは空を切るばかりで、一発も当たらない。


「ハァ、ハァ。ちょこまかと動きやがって。お前も一緒に戦え!」


 無言で直立不動していた犬人族の男が動き出した。腕を回しながらディースの前に立つ。


「いくぞ」


 低い声でそういうと、向かっていった。動きは短髪の男より早く、繰り出すパンチは重そうだ。

 しかし、これも当たらない。ギリギリを避けられている。二人がかりで攻撃するが、やはり当たらず、避けられる。


「めんどくさい。これで終わらせてやる」

 

 短髪の男がキレて、持っていたナイフを取り出す。


「ウオォォォ!」


 ナイフを握りしめ刺そうとする。しかしディースは避けず、自分の手でナイフを受け止めた。ナイフは手に突き刺さり、赤い血が流れていた。


「な、なんで避けないんだよ」


 短髪の男はナイフを握りしめていた手が震え出した。刺さった手からナイフが抜き取られると、ナイフを地面に落としてしまった。


「もう十分だろう?」


 ディースの問いに黙ってしまった。それからポツリと「もう十分だ」と言って、男達はこの場を立ち去っていった。


「ディース大丈夫か? 俺が治癒魔法を使うよ」


 レオンはディースに駆け寄る。


「大丈夫。これくの傷なら自己再生でいい」

「自己再生?」

「あぁ、俺はヴァンパイアだからな。人よりもパワーもスピードも恵まれてるし、自己再生能力もある」


 ナイフで刺され手をレオンに見せた。少しずつ傷がふさがっている。


「ヴァンパイアって凄いんだな。それに勝ち方も、かっこよかったし」

「まあね。俺の能力を知らないやつが相手だったからな。血を見せたら、やる気も失せると考えたのさ」

 

 相手を一発も殴らずに勝つなんて、かっこいい奴だよ。


「ところでレオン。話が変わるんだけど……」

「何だよ、急に改まって」


 急に空気が変わるような感じになる。


「さっき、お、俺の彼女に、ぷっ……ハッハッ。間違われたよな。ハッハッハッ──」


 ディースは、笑い始めた。

 あっ、これは思い出してから笑うパターンだ。


 ディースが、こうなると長くなる。笑い転げてるイケメンが、落ち着くまで待つとしますか。

 

 


 

 

 


 


 







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