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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第2章 魔法学校編
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第17話 首席としてのプライド

 エルフ族のルイ・クロードは、エルフ王国で生まれた。父親はエルフ王国の騎士で幼少期から厳しく育てられた。

 ルイはエルフ族でも珍しい無詠唱者だ。無詠唱者とは、詠唱しなくても魔法を使うことが出来るのだ。

 魔法を習えば誰よりも早く覚え、神童とも呼ばれた。


 父親がエルフ王国の騎士なので剣術も教えられた。ルイは魔法だけではなく剣術の才能もあり、メキメキと上達していく。

 魔法、剣術と両方の才能に恵まれたルイは、次第に周りから嫉妬され始めた。 

 

 ある時、ルイに嫉妬した同級生が、面白半分でイタズラを仕掛けた。幸いかすり傷程度の怪我で済んだが、下手をしたら命をおとすイタズラだった。

 怒ったルイは、イタズラを仕掛けた同級生を殴った。しかし殴った相手が悪かった。殴った同級生はエルフ王国の大臣の息子だった。


 息子を殴られた事で大臣は激怒した。あの手この手を使い、ルイの父親とルイをエルフ王国にいられないようにした。

 大臣の策略でエルフ王国を追われたルイの父親はルイを連れて、多くの種族が暮らしているロゼ王国へと向かった。

 

 ルイは父親に謝ったが、ルイの父親は間違った事はしていないとルイを擁護した。父親は、新しく暮らす国でも、魔法や剣術を頑張れよと激励してくれた。

 ルイは誓った。父親に迷惑をかけないように、魔法も剣術も勉強も、誰にも負けない。嫉妬した連中も驚くほど成長してやると。




 目の前にいるレオンと呼ばれる男性をルイは観察した。

 この男が無詠唱者のディースより強いのか? 

 そうは思えない。

 

 見た目は男というより女っぽい顔だ。たいして強そうではない。それに魔法勝負なら、無詠唱か無詠唱じゃないかでは、当然無詠唱がはるかに有利。無詠唱者はルイとディースの2人だけのはず。

 なら、剣術が得意なのか? だが自前の剣を持っている様子はない。本当に強いのか疑問に思えた。


「確かレオンも無詠唱者だよな?」

「何で知っているんですか?」


 ディースとレオンの会話に驚いた。無詠唱者が、まだいたとは知らなかった。


「前に魔法の訓練をフォックス家の庭でしてただろ? たまたま爺ちゃんとフォックス家に訪れた時に見たんだ」

「そうでしたか」


 二人の会話にルイは割って入る。


「まさか無詠唱者がもう一人いるとは。レオン殿、無詠唱者同士として、改めて魔法勝負を挑むぞ!」

「でも、攻撃魔法は火だけが上級で、後は中級ですよ」

「えぇっ!!」


 ルイはまたしても驚いた。自分の攻撃魔法は、火と風と水が特級で、残りの攻撃魔法と治癒魔法等は上級だったからだ。これでは勝負は分かりきっている。


「レオンは着ぐるみ魔法を使えるから強いよ」


 ディースが自信満々に答えた。


「着ぐるみ魔法?」


 始めて聞いた魔法にルイは首をかしげた。しかし急に何かを思い出した顔になった。

 そういえば、カルーア町が魔物に襲われた話を聞いたことがある。その時に活躍した子供がいたとか。その子供は不思議な魔法を使って変身したとも聞いたことがある。

 それが目の前にいる男か。相手にとって不足なし。ニヤリと笑みが出た。


「では、その着ぐるみ魔法とやらで、私と勝負だ」

「……はい」

 

 断れる雰囲気ではなかったので、勝負を受ける事にした。




 闘技場で勝負するのだが、見事に特別クラス全員が集まっている。皆、この勝負が気になるのだ。

 ミランダ先生も飲み物持参で見に来ている。中身は酒じゃないだろうな?


 勝負の方法は、致命傷の攻撃を防いでくれる防御魔法を出させた方が勝ち、というルールだ。

 今回の勝負では、常に回復してくれる魔法陣の速度を遅くしているので、傷を負っても回復はゆっくりだ。


「無理しないでね、レオン」

「うん、大丈夫だよ。頑張ってみるね」


 シェリーがギュッと手を握ってくれた。その指にはレオンがプレゼントした指輪をはめていた。

 自然と力が湧いてくる。これは頑張るしかないな。




 ミランダ先生が勝負の審判をしてくれるそうだ。


「では、勝負を始めるぞ。お互い悔いのないようなに。それでは始め!」


 闘技場の上にはレオンとルイの二人だけ。お互い間合いをとって、離れている。

 ルイは手には魔法のステッキ、腰には剣を携えている。相手は魔法のステッキや杖も持っていないし、剣も無い。

 魔石の組み込まれている、ステッキや杖を使わず戦うということは、魔力総量に自信があるんだなと分析した。

  

「レオン殿。私の方は、いつかかって来ても構わぬぞ」

「では、お言葉に甘えていかせてもらいます」

「うむ。かかって来い!」


 創造神の本に描いた絵の名前を唱える。


『火の精霊サラマンダー』


 赤い炎の模様の服と、フードには蜥蜴(とかげ)の角が付いてる着ぐるみに変身した。火の魔法が得意な着ぐるみ魔法だ。

 火の精霊サラマンダーは四大精霊の一つで、文献とかでは蜥蜴(とかげ)の形で描かれている事が多いだろう。

 描いた当初のランクは中級で、現在のランクは上級になっている。


「ふむ、それが着ぐるみ魔法なのか」


 一瞬で姿が変わった事に驚いたが、すぐ冷静さを取り戻した。

 

 レオンは右手に力を込め、ルイの方に手を向ける。


火剣乱舞(ファイヤーソード)


 多数の火の剣がルイ目掛けて飛んできた。

 ルイは落ち着いて魔法を使う。


水刃乱舞(アクアカッター)


 水の刃で相殺した。火の魔法と水の魔法では、水の魔法の方が有利なのである。

 お互い使ったのは火の中級魔法、水の中級魔法だ。


「無詠唱で魔法が出せても、中級魔法では私は倒せぬぞ」

「分かってます。今年の首席合格者ですからね」


 さっきは中級魔法だったので、今度は上級魔法だ。右手に魔力を込めた。


大火球(メガファイヤー)


 大きな火の玉が目の前に来ている。


「これも相殺してやるぞ」


 ステッキに魔力を通すと、魔法を放つ。


大水泡(メガアクア)


 ステッキから大きく凄い量の水が出てきた。水の上級魔法で『大火球』を相殺した。

 闘技場の上では、火と水の影響で水蒸気が発生していた。


 水蒸気が薄れてくると、ルイは笑みを浮かべていた。そろそろ、こちらからも仕掛けてみる。レオンの方にステッキを向けた。


爆炎(グランドファイヤー)


 高温の炎と爆発が辺りを包む。闘技場は特殊な魔法陣があるので、地面は溶けていない。

 炎の勢いが弱まると、無傷のレオンが立っていた。


「驚いたぞ。魔法を使って防いだ様子はない。何をして防いだ、レオン殿」

「この、着ぐるみには火の魔法は効きませんよ」

 

 得意気な顔をしたレオンを見てルイは考えた。

 今のところは火の魔法しか使っていない。火の耐性があるのかもしれないとルイは思った。

 それなら水で攻めるべき!


「じゃあ水の魔法でいくぞ」

「げっ! 余計なこと言わなければよかった……」


 つい、口が滑って弱点を教えてしまった。『火の精霊サラマンダー』は、水が弱点なのだ。

 

 ルイの持っているステッキが輝き出した。


爆水泡(グランドアクア)


 使った魔法は水の特級魔法だ。

 レオンは慌てて次の着ぐるみに変身する。


『水の精霊ウンディーネ』


 お次の着ぐるみは、青い水の模様の服、可愛いくした魚のエラが、フードに付いている。水の魔法が得意な着ぐるみです。

 ウンディーネは四大精霊の一つで水の精霊だ。描いた当初のランクはサラマンダーと同じ中級で、現在も中級のままだ。


 ルイの魔法が直撃するが、またしても無傷でレオンは立っていた。闘技場の回復装置も起動してないということは、ダメージは全然無いのだろう。


「この魔法でも無傷なのか?」


 腕を組んでルイはレオンを見ていた。また違う服装。不思議な魔法だ。恐らくまだ変身出来るのだろうと分析した。

 魔法勝負なら決着がつきにくい。なら、剣で勝負だ。剣に手をかけた。 


(あっ、剣勝負になりそうだ)


 ウンディーネのランクは中級なので助かったと、レオンは思った。しかし、相手は剣術も使える。警戒しないと。


 剣を鞘から出すと。ルイは静かに構えた。相手は武器を持っていない。


「レオン殿、武器は使わないのか?」

「武器ですか? ちょっと待って下さいね」


 レオンは『にゃんこ忍者』の着ぐるみに変わった。


「武器を持っている服もあるのか……」


 剣を背負って、黒ずくめの格好。魔法タイプではなく、剣術タイプなのだろうとルイは感じた。

 構えた剣に力が入る。


「いくぞ!」


 ルイの声で、レオンも背中から刀を抜き出して構えた。


「やあぁぁ!」


 大声でルイは斬りかかった。


『虎狼流 連牙』


 ルイは攻撃が得意な『虎狼流』を使う。素早い動きで、上段、中段、下段とあらゆる部位を狙い、反撃出来ないような連続攻撃をする。

 連続攻撃でレオンは防戦一方だった。


『分身の術』


 分身体を1体出して、ルイを攻撃した。もう一人現れたレオンに驚きつつも冷静に対応した。

 斬りかかるレオンの文身体に防御が得意な『飛燕流』で対処する。 


『飛燕流 流水』


 上段から斬りかかる刀を、流し受け、そのままカウンター攻撃をして文身体を斬る。

 斬った分身体は煙に変り、消えてしまった。


 隙が出来たルイにレオンは刀に魔力を込める。『忍刀猫丸』に魔力を込めたら、吸収して刀に魔法の属性を付与出来る。付与するのは、『火遁の術』だ。

 火の属性を付与された刀は更に強くなる。

 付与された刀でルイに斬りかかる。


 ただならぬ雰囲気の刀にルイは危機を感じたので『虎狼流』の技を使う。


『虎狼流 一閃』


 目で追うことが出来ない速さで斬った。

 二人の攻撃が交差し、お互いの動きが止まった。

 

 レオン、ルイ、お互いに致命傷を与える攻撃の時に発動する防御魔法が起動した。


「そこまでだ。両者引分け」


 ミランダ先生の言葉で試合が終わった。




 ルイはレオンと握手をしていた。同年代相手なら負けたことが無かったし、引分けも無かった。

 今回が初めての引分け。不思議と悔しくなく、気分は高揚していた。


「いい試合だった。次も貴殿と勝負してみたいものだ」

「ありがとうございました、ルイさん。いろいろと勉強になりました」

 

 試合が終わり闘技場を降りると、シェリーが抱き付いて来た。


「レオンお疲れ様。かっこよかったよ」

「あ、ありがとう」


 力強く抱き締めるシェリーに心配してくれたんだと感じる。


 試合を終えたルイを見た。魔法と剣術を両方使える事に、さすがは首席合格者だとレオンは感心した。



 




 



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