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創造神の本とペンと着ぐるみ魔法  作者: お月見ウサギ
第2章 魔法学校編
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第15話 魔法学校の入学式

 ロゼ魔法学校の制服は、男性がシャツとズボン、女性がシャツとスカート。男女共通で学年別が分かる、色違いの小さいプレートもある。魔術師ローブもあり夏用、冬用2種類ある。


 前もって貰った制服にレオンは袖を通していた。今日はロゼ魔法学校の入学式。

 学生服を着るのは何年ぶりだっけ。これから始まる青春の事を思うと胸が高鳴る。

 ドタドタと歩く音が廊下から聞こえ、騒がしくドアが開いたと思ったらシンディーとエリーシャが入って来た。


「ちょっとちょっとレオン! 何で男性用の制服を着てるわけ? 昨日の夜は私の制服があんなに似合ってたのに!」

「そうよレオン君。女の私でも嫉妬しそうな可愛いさだったのに!」

 

 納得行かない顔をしたシンディーとエリーシャを見て、昨日の夜の悪夢が思い出される。

 入学式前日となった昨日の夜は、学校の制服を着て不備がないかチェックしていた。そこにシンディーとエリーシャが入って来て、どうせならシンディーの制服も着せてみましょうとなって、悪夢の時間になってしまう。

 

 髪型も変え、女性の制服を着せられてた。そしてシンディー達から鏡を見せられたら驚いた。恥ずかしながら鏡に向かって、「か、可愛い」と言ってしまったのだ。

 その言質を取ったシンディーとエリーシャはテンションが上り、明日の入学式にはシンディーの制服を着て出席させようと、とんでもない爆弾発言をしていた。


 シンディーとエリーシャの怒りっぷりを見ると、昨日の言動は本気なのかと今頃焦ってしまう。いや、誰もが冗談と思うでしょう、普通は。だが、普通が通用しないのがシンディーとエリーシャの恐ろしい所。


「シンディー姉様。いくらなんでも男の俺が女性の制服を着るのはちょっと無理があるかと」

「何を言ってるのよ。これからの時代、男とか女とか関係ないのよ!」

「何だって!」


 衝撃を受けた。前世の日本でも、その結論が出るまでどれだけの長い年月を要したことか。シンディーみたいにハッキリと言い切る人物が、この世界に何人いるだろうか。

 エリーシャもシンディーの言動を聞いて(うなず)いていた。シンディーの言葉に感情が高揚してしまった。


「姉様の言いたい事も確かにそうかもしれません。男とか女とか言ってる時代では無いのです。シンディー姉様の制服を借りて入学式に出ましょ……」


 一瞬シンディー達を見ると、二人共「もう少しだ」と思っているワクワクした顔だったので、すぐに我に返って正気になった。慌てて咳ばらいをして、言いかけた言葉を濁す。


「ゴホン。えーっとやっぱり男性用制服にします」

「チッ。後少しだったのに……」

「もう。レオン君の意気地無し」


 レオンを着せ替えする事が趣味となったシンディーとエリーシャの恐ろしさに、レオンは膝がガクガクと震えてしまった。




 魔法学校の入学式にはシェリーと一緒に行く約束をしていた。前回の反省を踏まえ、良い時間に俺がシェリーの家まで迎えに行くのだ。

 シェリーの家に着くと、中でゆっくりしていってと言われたのでお言葉にあまえた。


「お待たせレオン」


 ドアからピョコッと出て来たのは、制服姿のシェリーだ。


「お~。制服似合っているよシェリー」

「エヘヘッ。ありがとう。レオンも制服格好いいよ」


 シェリーはその場でクルリと回った。フワリとスカートが浮き上がり、白い太ももがチラリと見えた。

 やっぱり制服って、いいよね。


 レオンの制服姿を見てシェリーは見とれてしまった。レオンは何を着ても似合うけど、制服もいいよね。


 シェリーの準備も終わり家を出た。魔法学校の入学式のため、カルーアの町はいつもより賑わっている。

 いろんなお店が入学セールをして多くの人が行き交うなか、レオンとシェリーはこれから始まる学校生活の事に、心弾ませ魔法学校への道を歩いて行く。




 今年の新1年生も300人以上いて、入学式が行われるグランドでは多くの人が集まっていた。

 広めのグランドには学校の先生達も並んでいる。1学年に300人以上もいるので教える先生達の人数も多い。

 来賓者も多く入学式会場となるグランドでは、いろんな喋り声で、ざわついていた。


 次第に静かになり始め、壇上に人が上がると静かになった。式典は順調に進み魔法学校校長の挨拶が行われた。

 校長はエルフ族のニーナ・クロード。魔法学校の女帝と呼ばれ、数百歳の年齢なのだが正確な年齢は乙女だから秘密だそうだ。


 続いて学校の生徒会から挨拶があり、学校生活の体験話や、クラブ活動の説明とかを教えてくれた。


 次に壇上に上がったのは新入生代表の生徒だ。今年の主席合格者らしい。新入生代表の挨拶が終わると大きな拍手がおこった。

 最後の挨拶が終わると、新入生達はそれぞれの教室へと移動する。


 特別クラスは普通クラスの教室から離れた場所にある。広めの教室に入ると大きな黒板があり、机と椅子が7組。

 今年の特別クラスの生徒は7人。人数が少ないせいか広めの教室がより広く感じる。


 席に着くと担任の先生が入って来た。


「ようこそロゼ魔法学校へ。お前らの担任になるミランダだ。硬派なダークエルフ族で担当は攻撃魔法だ。夜露四苦!」


 なんだか不良っぽい先生だ。長い銀髪のダークエルフ族。エルフ族は胸が小さいと思い込んでいたが、ミランダ先生は巨乳だぞ。見た目は20代だが、エルフ族は長寿なので年齢を知ったら驚くかもしれない。


「先ずはお前らの自己紹介からしてもらおうか。じゃあ、眼鏡のお前から自己紹介だ」


 ミランダ先生が眼鏡の生徒を指名したら生徒が立ち上がる。




「自分の名前はラルク・シェール。竜人族の14歳、正しい学校生活をしたいと思います。皆さんよろしくお願いします」


 頭をきちんと下げて挨拶をした。それから眼鏡をくいっと手の中指で上げた。白い髪の頭から竜の角が出ている。いかにも優等生な感じの男性だ。




「オレの名前はターニャ・グレリア、ドワーフ族だ。物作りが好きな可憐な14歳だ、みんな仲良くしてくれよな」


 男っぽい言葉使いだが女性だ。オレンジ色のショートボブで、褐色の肌をしている。つり目で少し恐い印象があるが面倒見がよさそうな印象だ。この世界のドワーフの身長は低くなく、褐色の肌以外は人族と同じだ。




「わ、私は、ナ、ナナミって言います。お、鬼人族の13歳です。あ、あがり症ですが、よろしくお願いし、します」


 ボブの栗毛から鬼の角が出てる。あがり症でうつ向いているが可愛い顔立ちをしている。




「俺はディース。魔族で12歳になる。初めての学校生活で分からない事も多いが、よろしく頼む」 


 ダークブラウンの髪で美形の男性。俺が女の子だったらキャーキャー言いそうな程のイケメンだ。




「私はルイ・クロード、エルフ族の12歳だ。今年の主席だけど、卒業まで誰にも負けぬつもりだ」


 ミディアム金髪の凜した顔が印象の美女だ。今年の主席合格で新入生代表の挨拶をした。何だか負けず嫌いな印象です。

 

 それから、シェリー、レオンと挨拶が終わり全員の自己紹介が終わった。


「全員の自己紹介が終わったな。とりあえずこのメンバーで学校生活をしていくからな。喧嘩上等とか変な気をおこさず、仲良くやれよお前ら!」


 ミランダ先生の有難いお言葉で今日の入学式全日程が無事終了した。明日は学校案内があるそうだ。

 いろんな種族の人達がいて、楽しそうな学校生活になる予感がする。それに、また学生が出来るなんて感慨深い。

 

 後は、帰り支度をしてシェリーと帰るだけなのだが、今日はシェリーに渡す物があるのだ。入学祝いで魔石付きの指輪をプレゼントします。




 寄り道をして帰る事を提案したレオンは、プレゼントを渡すタイミングを考えていた。入学式でカルーアの町は人も多く、出来れば静かな場所で渡そうとしていたら、夕方になってしまった。

 入学祝いのプレゼントだし、すぐ渡せばよかったのかもと思っていたら噴水のある広場に着いた。広場にはあまり人がいなく静かな場所だったので渡すならここだな。


「ねぇ、レオン」


 シェリーは立ち止まってレオンを見つめる。


「何かなシェリー?」

「レオンに渡した物があるんだ」


 そういうと鞄から何か取り出した。

 

「はい。入学祝いのプレゼントだよ」


 急な展開に驚く。

 レオンがシェリーにプレゼントを渡す予定だったのだが、まさか自分がプレゼントを貰うとは思ってなかった。 


「ありがとうシェリー。開けてもいいかな?」

「うん。開けてみて」


 細長い箱を開けると中にはペンが入っていた。綺麗な金のデザインが入ったペン。


「うわぁ~、綺麗なペンだ。大事に使うね」


 ペンを握ったレオンは嬉しそうにしている。


「喜んでもらってよかった。レオンは絵を描くのが好きだから、プレゼントにするならペンにしようと思ってたんだ。ただ、今日は人も多く、渡すタイミングがなかなか無くて渡すの遅くなっちゃった」


 申し訳なさそうにシェリーは頭をかいた。シェリーも考えている事が同じだったとは。案外似た者同士なのかもしれないな。


「俺からもシェリーにプレゼントがあるんだ。シェリーと同じく渡すタイミングが遅れちゃって……」


 ポケットから指輪が入った小さな箱を取り出して、シェリーに手渡した。


「ボクに? あ、ありがとう。開けてもいいかな?」

「どうぞ」


 小さな箱を開けると銀の指輪が入っていた。よく見ると魔石がはめ込まれている。


「ゆ、指輪だ! レオン、指輪に魔石がはめ込まれてるよ。高くなかった?」

「大丈夫だよ。自分で魔石を探して指輪にはめ込んでもらったから」


 レオンはプレゼントした時に、高価過ぎて受け取ってもらえないかもと心配した。そこで魔石が採掘される土地に行き自分で魔石を採掘して来た。

 運よくお店と同じ魔石が見つかり、銀の指輪にはめ込んでもらったのだ。


「レオンが魔石探してくれたんだ……ありがとうレオン。ボク凄く嬉しいよ」


 嬉しそうにしているシェリーの顔を見たら、頑張って採掘しに行ってよかったと感じた。


「指にはめてあげるよシェリー」

「えっ!? い、いいの?」

「うん。指を出して」


 恥ずかしそうにシェリーが指を出してきた。剣タコがあるが細くて長い綺麗な指。レオンはゆっくり指輪をはめてあげた。

 特殊な指輪で、指にはめたら本人の指のサイズに合うようになる。


「凄く綺麗。ボク凄く幸せな気分だよ」

 

 夕陽に指輪をかざすとキラキラと光る。

 嬉しくなってはしゃいでいたら段差のある所に気付かず、つまずいてしまう。


「危ない!」


 倒れそうになったシェリーを間一髪で支えた。


「ご、ごめんね。つい嬉しくて、はしゃいじゃった……」

「転ばなくてよかった」


 ふと、気づけば今の体勢はお互い密着しており、レオンの手はシェリーの腰に。シェリーの手はレオンの腰にある。

 二人とも無言になってしまい、見つめ合っていた。夕陽のせいかシェリーの顔が赤くなっているように見える。

 シェリーの目がトローンとして潤んでいた。腰に回してた手にお互い力が入り、少しずつ二人の顔が近付く。

 お互いゆっくりと(まぶた)を閉じようとしていた時、近くの噴水の水が勢いよく出て来た。

 驚いて同時に離れてしまった。恥ずかしさのあまり二人は背を向いている。


「そ、そろそろ帰ろっかシェリー」

「う、うん。そ、そうだねレオン。帰ろっか……」


 急な展開に恥ずかしかったが、お互い気をつかって、いつも通りを貫く。

 夕陽に照らされた帰り道を歩く二人のシルエットは、誰が見ても綺麗だった。



 





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