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第12話 シェリーの剣術

 夕食も終わり、フォックス家のメイドをしているミクリの部屋では、獣族になれる衣装の試着会が執り行われていた。

 参加している人数は二人だけなのだが、試着会場となっている部屋の熱気は尋常ではない。

 

 現在試着をしているモデルのミクリは、完璧に犬人族に成りきっている。犬人族の他、猫人族や兎人族の衣装もあり、ミクリの興奮度はマックスに達しようとしていた。


「レオン様、最高です。ハァハァ──」

「ミクリ、ブラックミクリが出てますよ!」


 レオンは苦笑いしながら楽しそうなミクリを見ていた。スタイルのいいミクリなので、どんな衣装でも似合う。

 犬耳のフードタイプやカチューシャタイプなどを試してみたが、どれも似合うのはモデルが良いからだろう。

 レオンも次はこれ、次はこれとミクリと一緒になって楽しんだ。ふと、姉のシンディーの事が頭に浮かんだ。シンディーもこんな風にレオンへの着せ替えを楽しんでいるのかと思ったら、なるほどと理解してしまう。


 ようやく落ち着いたミクリと共に、お茶を飲みながら改良する所があるか意見を聞いた。より良い衣装を今後も作るつもりだ。




 ミクリの部屋を出た時、たまたまシンディーと鉢合わせしてしまったので、そのままシンディーの部屋に連行された。

 だが、今ならシンディーが着せ替えをする事に理解出来るかもと思ったが、自分が好きでも無い洋服を着せられるのは、やはり身も心も疲弊する。

 シンディーがレオンのサラサラとした金髪を編み込んでいる所をレオンは鏡を見ながら見つめていた。


「そろそろ髪を切ろうかな……」 


 鏡を見てレオンがポツリと言った。レオンの髪を編み込んでいるシンディーの表情が変わる。


「ダメよレオン。あなたはもっと髪を伸ばしなさい!」

「えっ、何故ですかシンディー姉様?」

「長い髪の方がいろいろアレンジ出来るじゃない。私はもっといろいろ試したいのよ。せめて私と同じ、肩くらいまでの長さまで伸ばすのよ!」

「それは姉様の都合じゃないですか……」


 それからシンディーはレオンにやってみたい、ヘアアレンジの話を長々と日付が変わるまで語り出すのであった。




 フォックス家にはペガサスがいる。空を飛べるペガサスは貴重で各国が重宝しているのだが生息数が少ないため、馬の方がよく使われている。

 綺麗な背中の白い毛を撫でてあげると、ペガサスは喜んでくれる。モフモフ好きのレオンはペガサスの首筋に抱き付く。ペガサスは、レオンの顔をペロペロと舐めて来る。

 くすぐったいが、ペガサスとの触れ合いを感じる事が出来るので気にしない。

 野菜をあげるとパリポリとよく食べる。嬉しいのか尻尾が右へ左へと動いている。満腹になったのか、ペガサスは満足そうな顔だ。


 予定の時間より早くシェリーがフォックス家にやって来た。ペガサスに乗って、シェリーと二人で新しく耕している大豆畑を見に行くのだ。

 

「そろそろ行こうかシェリー。確かペガサスに乗るのは初めてだったよね?」

「うん。初めてだけどレオンと一緒なら大丈夫だと思うよ」

「よし。それでは行きますか」


 レオンはシェリーと一緒にペガサスに乗り空へと飛び立った。風も弱く雲ひとつ無い快晴で、ペガサスに乗るには最適な日。


「シェリー大丈夫?」


 初めてペガサスに乗るシェリーを心配して後ろ見た。心地よい風が、シェリーの綺麗な銀髪を通り抜ける。笑顔で銀髪をおさえるシェリーを見たら、ドキッとした。


「ボクは大丈夫だよレオン。ペガサスに乗るのは楽しいね」


 レオンの腰に手を回し、掴まりながら楽しんでるシェリーに安心した。高い所が苦手ではなくて良かった。

 

 シェリーは心配している事があった。高い所は好きだから大丈夫なのだが、レオンに後ろから抱き付く状態なので、自分の心臓のドキドキがレオンに知られるかもと心配していた。

 でも知ってほしいとも思った。レオンの腰に回している手を、シェリーはほんの少しだけ力を込めて抱き締めた。




 ペガサスでの移動はあっという間で、目的地まで楽に到着できた。

 見渡すり限りの広い農地。まだ耕していない農地もあるが、順調に農地を拡大している。大豆以外の作物も育てるつもりなので、収穫が出来るようになるのが楽しみだ。

 レオンは農民達に何か困った事がないか聞いてみた。何やら困った事があるようだ。農民達の話によれば、最近魔物が出没するらしい。

 農地の近くには新しい村がある。農民達を警護する兵士も駐在しているのだが、魔物に襲われ現在数名が負傷中との事。


 魔物の話を聞きに、村を守る兵士達に話を聞きに行った。

 新しい村は小さいながらも、しっかりとした家が建っている。魔物の侵入する柵もあるが一部壊れている。農民が話していた魔物に壊されたのだろうか?


 兵士が駐在している家には、ベッドに横たわる兵士達がいた。最近現れる魔物はどうやらスケルトンらしい。

 スケルトンは骸骨(がいこつ)の魔物で剣や盾を装備している。スケルトンが20体、町に現れてたのだが、兵士達がすべて倒した。その時、数名の兵士が負傷。スケルトンはその後も不定期に現れるそうだ。

 この村の近くに昔、合戦場だった場所があったらしいので、どうやらその場所からスケルトンが現れている。

 レオンはシェリーと兵士5人と一緒に、スケルトン退治に向かう。




 スケルトンが現れると予想している場所は、現在は草原になっている。木が数本生えているのだが、すべて枯れているので不気味な感じが増す。

 

「シェリー、戦闘になるけど大丈夫かい?」

「任せてよ。レオン程じゃないけどボクも剣術道場で修業してるから役立つと思うよ」


 シェリーは剣を抜いてレオンにウインクした。頼もしいシェリーを見て、レオンは静かに(うなず)いた。

 短剣を持っていたシェリーだが、背も大きくなり身の丈にあった長さの剣を装備している。

 シェリーは虎狼流中級と飛燕流中級の剣士になっている。


 草原を見渡すがスケルトンは見あたらない。この場所では無いのかと思った時、地面がモコモコと浮き上がる。

 レオンとシェリー、そして兵士達は警戒した。浮き上がった地面から、次々と剣や盾を装備したスケルトンが出て来た。ガコガコガコと骨がぶつかる音が不気味だ。

 

 全部で50体くらいはいるだろうか。地面がモコモコしている所がまだある。どうやらまだ増えそうだ。

 

「ここはボクに任せてよレオン!」


 シェリーはそういうと、スケルトンに向かって行った。

 10体くらい集まっている集団に、シェリーは斬りかかった。

 使っている剣術は攻撃重視の虎狼流。初太刀(しょだち)で最初のスケルトンの首を切り落とす。次のスケルトンも首を切り落とし、その次も同じようにして倒す。

 流れるような攻撃。一撃必殺でスケルトン5体があっという間に倒された。

 

 残ったスケルトンがシェリーに斬りかかるが、防御重視の飛燕流で防いだり、カウンターで攻撃して残りの5体もすぐ倒された。あんなに素早い動きだったのに息切れもしてない。まだまだ余力を残している。


「凄いじゃないかお嬢ちゃん」


 兵士達はシェリーの戦いぶりに歓喜を上げた。


「シェリー、やるじゃないか」

「ありがとうレオン。まだまだ頑張っちゃうからね」


 笑顔を見せてピースサインをするシェリーに、レオンや兵士達も触発される。


「よっしゃあー、俺達もお嬢ちゃんに負けていられないぜ!」


 兵士達もスケルトンに向かって行った。レオンも行動を開始する。シェリーが任せてよと言ってたので今回はサポート役。

 創造神の本に描いた絵の名前を唱える。


『守護獣カーバンクル』


 変身した姿は、白ウサギがモデル。ウサギ耳フードに赤い宝石が付いていて、まん丸ウサギの尻尾にしたサポート専用着ぐるみで、ランクは上級だ。

 カーバンクルは16世紀南米で目撃された未確認生物と言われていて、額に赤い宝石を付けた小動物だとも紹介されている。


 スケルトンの数はまだ多い、シェリーの動きを見ていると大丈夫そうだ。

 ならば最初は兵士達へのサポートから。


全能力向上(ドーピング)


 ウサギ耳フードに付いた赤い宝石が光る。兵士達に魔法を使うと、兵士達の体が光に包まれた。


「何だこれは?」

「力が湧き出る!」

「これは凄いな」


 兵士達は自分の身に起きた不思議な力に驚く。

全能力向上(ドーピング)』は攻撃力、防御力、速さ、魔力等の能力を一時的に上げる魔法だ。


「これはレオン坊っちゃんの魔法かい?」

「これなら楽勝だぜ」


 兵士達の動きは格段に良くなり、スケルトンを圧倒し始めた。大きいスケルトンは力も強く他のスケルトンより手強いが、兵士達は協力して1体ずつ確実に倒していく。

 新たに地面から出て来るスケルトンもいるので、なかなか数が減らない。数が多いので兵士達はスケルトンに包囲されそうになっている。後ろから攻撃されたら危ないと思ったレオンは、兵士達に新たな魔法をかける。


攻撃防御(オールディフェンス)


 兵士の背後を攻撃して来たスケルトンの剣が弾かれた。兵士は背後にいたスケルトンに気付くと、持っている剣を振り下ろしスケルトンを倒した。


「これもレオン坊っちゃんの魔法だな。助かったぜ」


 兵士はレオンに向けて手を振った。レオンも兵士に向かっ手を上げた。

攻撃防御(オールディフェンス)』は、ダメージを受けそうな攻撃の時に発動し、攻撃を防いでくれる。魔法に込めた魔力量で防いでくれる強さが変わる。

 

 レオンの方にもスケルトンが向かって来た。ボロボロの魔術師の帽子を被っている。魔法使いのスケルトンだろう。

 ガコガコガコと骨がぶつかる音を出したと思ったら、大きな火の玉が飛んで来た。

 火の攻撃魔法。


攻撃反射(リフレクション)』 


 向かって来た火の玉は光の壁にぶつかり、魔法を使ったスケルトンに跳ね返る。

 瞬く間に炎に包まれたスケルトンは、バチバチと燃えて形が維持出来なくなったら、バラバラと骨が崩れてしまった。


 レオンが使った『攻撃反射(リフレクション)』は、魔法や斬撃等を相手に跳ね返す事が出来る。消費する魔力が『攻撃防御(オールディフェンス)』より多いのが難点。


 シェリーの援護もしなければいけないと思ったが、既に一人で半数以上のスケルトンを倒し終わった所だった。

 他の兵士達もスケルトンを倒し終わり、これ以上スケルトンは出て来ないようだ。

 レオンはシェリーに近寄り状態を確認した。疲れた様子もなく、目立った外傷も無いので安心した。


「ボクもなかなかやるでしょ。レオン」

「うん。凄かったよシェリー」


 満面の笑みのシェリーに、レオンも兵士達も癒される。


「それにしても、お嬢ちゃんもレオン坊っちゃんも凄かったぜ」

「確かに。二人がいなかったらどうなっていたか」

「ありがとう。お嬢ちゃん、レオン坊っちゃん」


 兵士達とねぎらいの言葉を交わしていたら少し遠くで、ドォーンと大きな音がした。何が起こったのか調べるため、レオン達は音がした場所に向かう。




 大きな音がしたと思われる場所に着いた時、数人が大型のドラゴン骸骨と戦っていた。

 大柄な一人の攻撃で、ドラゴン骸骨がバラバラにされた。レオン達の姿に気付いたのか、ドラゴン骸骨を倒した一人が近付いて来る。

 その顔には見覚えがある。騎士の鎧を着た大柄で茶髪のオールバック、そして眼光鋭い顔の男性。クロノス大森林で出会ったキシリア12聖騎士の一人、ドラゴニアだった。



 

 

 

 






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