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第9話 新たな着ぐるみ

 朝目覚めると見慣れた部屋とは違う事に気が付く。前にも似たような展開があった気が……

 昨日の夜は確かクリス、シンディー、ミクリ、エリーシャのフォックス家の女子会が行われていた。

 

 成人組はお酒を、シンディーはジュースを。

 部屋が騒がしかったので部屋を覗いたら、クリスとエリーシャが酔っ払っているではないか。

 

 女神様でも酔っ払うんだなと、その時は驚いた。

 メイドのミクリだけは全然平気だったので、ミクリがクリスを寝室に連れて行き、シンディーと二人でエリーシャを寝室に連れて行く。

 シンディーはエリーシャを寝室に連れて行ったら「後はお願いね」と言って自分の部屋に戻った。

 

 エリーシャをベッドに寝かしてそれから……!

 思い出した! 

 エリーシャに抱き付かれてそのまま出られず、一緒に寝てしまったんだっけ。


 最近こんなパターンが、続いてるような気がするよな。

 しかし、さすがは女神様。

 寝顔も何ともお美しい。長い水色の髪から良い香りがする。

 抱き付かれている腕を動かすため、両手でエリーシャの片腕を動かす。起こさないようにエリーシャの腕を動かしていたら、手が滑ってエリーシャの豊満な胸を、ダイレクトキャッチしてしまう。

 これはラッキースケベ。

 ヤバイと思い、すぐ手を退()かそうかと思ったら、エリーシャが既に目を覚ましていたようだ。

 慌てて事の次第を説明しようとした時、エリーシャはレオンの手を豊満な胸に押し付けた。


「レオン君、これくらいしっかり触っても大丈夫だからね」

「わっ! エ、エリーシャさん、これはですねラッキースケベ、じゃなく、その、腕を動かしたときにですね──」

「何も言わなくても大丈夫。レオン君の愛は感じたわ」


 エリーシャはレオンを抱き締めた。

 誤解だと説明しようとしたが、エリーシャの胸に顔を埋めるられ、そこから暫く脱出出来なかった。

 子供の体には刺激が強い事が続いてしまよな。




 刺激の強い目覚めをしたレオンは、洗面所でボーッとしながら顔を洗っていた。そしたらエリーシャも洗面所に入って来て、一緒に顔を洗い出す。


「ねぇ、レオン君。今日は何か予定ある?」

「今日ですか? 今日は町の外に出掛けようと思ってました」

「本当に! 私も町の外で薬草集めしようと思ってたんだけど、良かったら手伝って欲しいなー」

「いいですよ」

「さすがレオン君。お礼にキスしてあげる」


 エリーシャはレオンの右頬にキスをした。


「エ、エリーシャさん!?」


 レオンは真っ赤になって慌てた。


「あら、そんなに嬉しかった? じゃあ後から左頬にもしてあげるね」


 エリーシャは、レオンにウインクすると洗面所を出ていった。エリーシャのペースにレオンは、ただただ慌てるだけであった。




 カルーア町は住宅建設のため、ちょっとしたバブル中だ。バブルに乗っかり多くの行商人が露店を出して、珍しい物を売り出している。


「あっ、何これ初めて見た。あっ、こっちは何だろう?」


 女性は買い物好きが多い。

 ついつい珍しい物があると興味を持ち、長々と時間を費やしてしまう。

 そう、ここにも珍しい物に興味津々な女性、ではなく男の子が珍しい物の虜になっていた。


「あら、レオン君。はしゃいじやって可愛いわね。何か欲しいのがあったらお姉さんが買ってあげようか?」

「だ、大丈夫ですよ。つい夢中になってしまって……すいません。それより薬草集めでしたね。行きましょうエリーシャさん」


 危ない危ない。エリーシャさんに借りを作ると後が恐い気がする。

 エリーシャのペースに気をつけろだ。 

 心に誓いをたててると、いい急にエリーシャがレオンの手を握った。


「レオン君。人も多いし、はぐれないように私と手を繋ぎましょうね」

「は、はい……」


 既にエリーシャのペースで。

 前世では男兄弟だったのだが、シンディーとは違うエリーシャのお姉さんぶりに思うところがある。

 はぐれないように手を繋いでくれる優しさが、理想のお姉さんに近い。

 ふと、そう思ったら何だか心がホッコリしてしまう。

 

 しかし、本当にカルーアの町は人が多くなっている。大通りは特に人が多く、何かの催しがあってるんじゃないかと思うほどだ。

 

 エリーシャと共に町の城門近くまで来た時、散歩していたシェリーに出会った。


「あっ、レオン……むぅ~。エリーシャさんと何処か行くの?」


 シェリーはレオンとエリーシャが手を繋いでいるのに気付いて、少し不機嫌になったようだ。


「町の外に出て薬草集めだよ」

「そうなんだ。ふぅ~ん……」


 シェリーは、エリーシャとレオンが手を繋いでいる反対側に移動した。


「ねぇ、レオン。ボクも一緒に行ってもいいかな?」

「いいよ。シェリーも一緒にいいかなエリーシャさん?」

「もちろん良いわよ」

「やった~。ありがとう」


 シェリーはレオンの腕に飛び付いて腕組みをする。

 あれ? 何これ? 片方にはエリーシャさんが手を繋いで、もう片方にはシェリーが腕組みしている。

 どうしょう?

 通り過ぎる人達の視線が何とも微笑ましい。良かった。まだ子供で。

 てか、このままで薬草ある所まで行くの? 

 両手に花の状態でレオン達はカルーア町を出た。




 カルーア町に流れる川の上流には多種な薬草があり、薬草採りには割りと有名な場所。

 透き通るほど綺麗な川を見るたびに、レオンはこの川の綺麗さに心を奪われる。

 前世では濁った川が多く、田舎の山奥にでも行かないと綺麗な川なんて拝めないからだ。


 川には魚が泳いでいて、釣り好きならウズウズしてしまう。

 穏やかに流れる川に沿って、上流まで目指す。


 目的の場所まで来ると、見たことの無い多くの草花が咲いている。綺麗な川と栄養分のある土壌で、この辺りの植物は良く育つらしい。

 3人は早速薬草集めに取りかかる。

 どんな薬草が必要なのかをエリーシャが説明して、それぞれ別れて薬草を探し出す。探すのは割りと簡単で、多くの薬草が集まった。


「直ぐに薬草集まっちゃいましたね。エリーシャさん、もう少しこの場所にいてもいいですか?」

「いいわよ。私もこんなに早く薬草が集まるとは思ってなかったので少しゆっくり休んでから町に戻りましょうか」


 レオンは鞄の中から持って来たスケッチブックとペンを取り出すと、綺麗な川と草花を描き始めた。


「レオン、絵を描いてるんだ……ねぇ、隣で見ててもいい?」

「いいよ。こっちにおいでよ」

「エッヘヘヘ。ありがとう」


 レオンは鞄から敷物を取り出す。

 シェリーはレオンの隣に、ちょこんと座った。

 レオンの描く絵を見ながら、シェリーはレオンの横顔をチラッと見ては、絵を見る。またレオンの横顔をチラッと見ては絵を見る。

 レオンは絵を描くのに集中しているため、シェリーがレオンをチラ見しているのに気が付かない。

 心地よい風も吹き、穏やかな時間が流れた。




 突然エリーシャの方から悲鳴が。

 レオンとシェリーはすぐに立ち上り、エリーシャの方を見た。

 エリーシャのいた近くの森から、魔物のリザードマンが出て来たのだ。リザードマンは2足歩行の蜥蜴(とかげ)の魔物で、硬い鱗の体、それと剣や槍を装備した厄介な魔物。


 レオンとシェリーはエリーシャの前に出ると、リザードマンを牽制した。リザードマンの数は5体、レオンは前日に創造神の本に描き終えた新しい絵の力を試す。


『にゃんこ忍者』


 一瞬で変身した。

 忍者の衣装の姿で、忍者頭巾風のフードには猫耳がピョコンと出ている。忍者のズボンからは、くるんとした猫の尻尾が出ていて、手には着ぐるみで出来た、猫の爪と肉球が付いた手袋を着けてる。そして背中には刀を背負っているのだ。

 

 最初は普通の忍者の絵を描こうかと思っていたが、猫人続の敏捷性(びんしょうせい)を見て、普通の忍者より猫人をベースとした忍者の方がいいかと感じた。


「わぁ、新しい着ぐるみ魔法だねレオン。可愛い」

「確かに可愛いわね」

 

 シェリーとエリーシャは、レオンの姿を見て癒された顔をしていた。女性受けには、いいようだな。


 リザードマン相手にスキルを使ってみる。


火遁(かとん)の術』


 リザードマンに炎の塊が襲いかかる。

「グギャー」と声を出し、リザードマンの1体が丸焦げになった。硬い鱗を持つリザードマン相手に、なかなかの威力。

 いい絵が描けたので『にゃんこ忍者』の初期能力は高そうだ。

 残ったリザードマンはお互い距離を取り出し、レオンを包囲しようとしていた。


風遁(ふうとん)の術』


 大きな真空波が飛んでいき、リザードマンを切り裂く。硬い鱗でもお構い無しで、リザードマンをバラバラにしてしまう。

 レオンが使ったスキルは、この世界の火魔法と風魔法の上級クラスの威力があるようだ。


「レオン凄~い」


 シェリーのはしゃぐ様な声が。

 何だか照れてしまう。

 今はリザードマンに集中だ。

 

 忍者といえば手裏剣でしょう。手裏剣をリザードマンに投げた。リザードマンの目と顔に当たりリザードマンは(もだ)えている。硬い鱗にも刺さるようだな。

 背負っている刀を抜く。


『忍刀猫丸』


 軽くて丈夫な金属で出来た刀をイメージして絵を描いた。手裏剣攻撃で、ダメージを受けているリザードマンに斬りかかる。

 ズバッと斬れ『忍刀猫丸』の切れ味を思い知った。

 なかなかの名刀だな。

 残るリザードマンは2体。

 レオンはまだあるスキルを試してみる。

 忍者ならやっぱり……


『分身の術』


 レオンの分身体が3体現れた。


「おっ~。忍者みたい」


 現れた分身を見てテンションが上がる。

 分身体も、ちゃんと自分が思うように動かせるみたい。

 不思議な魔法に、シェリーとエリーシャは驚いている様子。


 残ったリザードマンを分身体と協力して、あっさり倒してしまう。

 戦いも終わり分身体を消して猫耳フードを取ると、シェリーが抱き付いて来た。


「レオン、レオン。何だか猫人みたいだったよ」


 シェリーはレオンの体のあちこちを触り、興味津々のご様子。


「凄かったわレオン君。助けてくれてありがとね」


 エリーシャはレオンの頬っぺたキスをした


「朝約束したからね。お礼よ」


 エリーシャはニコニコした笑顔だったが、シェリーは頬を膨らませ怒ってるご様子。

 エリーシャには、人目を気にしてもらいたい。

 またリザードマンが出てくる前に、3人はカルーア町に戻る事にした。




 フォックス家に戻ると、魔物討伐に行っていたアッシュが帰ってきていた。

 魔物討伐は無事終了したが、なぜナリディア国を襲ったのかは謎のままらしい。

 ともかく無事に帰って来たアッシュと共に、久しぶりに家族で食事を楽しんだ。












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