成層穿ち
「げほっ……げほっ…………く、くそ……!」
聖奈人は大の字になって地面にめり込んでいた。痛みで一歩も動けない。
何か一発逆転のカードはないか。
謀略の引き金、駄目。
流動する叫喚、駄目。
成層穿ち……はまだ試していないが、今までの調子ならば使っても恐らく効果はないだろう。
成層穿ちは聖奈人が先ほど刃乃に放った一撃の超強化版だ。
というより、先ほど放った物は超劣化版だと言った方が正しい。
成層圏を穿つ程の大規模な銃撃魔法。
それを使ったとしても防がれれるのは明白だった。
「う……」
聖奈人はなんとか立ち上がった。だが、文字通り立っているのがやっとといった状態で、一歩先に進もうものなら糸が切れたかのように、また地面に倒れこむ自信があった。
いらない自信だ。
魔法で四肢に魔力を通す。
もし、体が動かなくなった時の為に魔力で強制的に自分を操る為だ。
しばらくして、魔女が上の階から姿を現した。
「さて、続きをしようか」
魔女は指を鳴らした。
魔法で室内が殺風景な物からさっきまでいた部屋のような物に変わる。
先ほどの部屋と変わったところといえば、ゆらゆらと燃える篝火が増えたぐらいか。
「……そう、だな」
聖奈人は腰を低く落とし、再度臨戦態勢に入る。
「とはいえ、もう閉幕の時間だがな」
「まだ……。まだ終わるわけにはいかねーよ……っ!」
「ククク、羽虫は羽虫らしくみっともなくあがいてみせろ!」
「もちろん、そのつもりだ!」
聖奈人は両手に銃を作り出し、構えた。大型で、弾丸を発射するだけの用途にしては大きすぎるレベルの銃を。
そして、大きく両手を広げた。右腕に黒、左腕に銀の魔力の閃光が走る。
「ほう……」
魔女はニヤリ、と口角を上げた。
「貴様の全力を以ってしてこい。そして、散れ」
銃口を魔女に向けた。
魔力の充填は完璧、後は放つのみ。
一か八か、全力を尽くしてみよう。
「成層…………!」
銃の先に溜まった魔力は可視化できるほどにまでなった。
放出まで秒読みだ。
そして、成層穿ちを放とうとしたその時だった。
目の前にふわり、と黒い何かが舞い降りた。
「なっ……」
聖奈人は成層穿ちの放出を中断した。
「……あはっ」
聖奈人は目を疑った。
何故なら、舞い降りてきた物……舞い降りてきた者の正体は、刀匁刃乃だったからだ。
「刃乃!」
「……お久しぶりだね!後は、私に任せてくれたまえ!」
……あの時の少女だ。
今までの刃乃のような無感情で反応の薄く、何を考えているかわからないような少女ではなかった。
快活で、接した者を元気にさせてくれる少女だ。
「貴様、妾に既に一度倒されているというに、まだ立ち向かうか」
「えへ、あの時のようにはいかないんだから!」
刃乃は刀を顕現させた。元々持っていた刀と合わせて、二刀流になる。
「やあああああああああ!」
勢いよく魔女に斬りかかった。続いて二本目の刀を逆手に持ち、胴体めがけて斬り抜く。
だが、魔女の魔法による防壁で防がれ、刀が二本とも折れる。
「折れた⁉︎」
しかし、うかうかしている暇はない。
折れた刀をバックステップと共に投擲し、また二本の刀を魔力で作った。
更に両腰に三本ずつ鞘に収まった刀も作り出した。
刃乃が魔女に急速接近し、刀を二本同時に振り下ろす。
「変わらんな。いや、以前より剣筋が鈍っているなぁ」
魔女が刃乃を真似て剣を出す。
「貴様に剣というものを教授してやろう」
刃乃の刀と魔女の剣がぶつかり合う。激しい火花を散らし、純粋な黒と混沌の光が辺りに広がる。
このせめぎ合いに負けたのは刃乃の方だった。
刀が折れ、刃が床に突き刺さった。
「加速!」
刃乃は迫り来る剣を、物理的に自分を高速化する魔法『加速』で避けた。
加速はほんの一瞬しか持続しない。
しかし、一瞬あれば十分だ。
刃乃は一瞬のうちに魔女の背後へ回り込み、腰に差している刀のうち二本を引き抜き、そのまま抜刀術を繰り出した。
だが、もうそこには魔女の姿はなく、今度は魔女が刃乃の後ろで斬りかかろうとしていた。
刃乃は空へ飛び上がり、その攻撃を避ける。魔女もそれを追って飛び、空前絶後の空中戦が始まった。
そのスピードは目では追いきれず、二人がぶつかり合った後の空気の振動のみが聖奈人に戦闘の激しさを伝えていた。
やがて二人は姿を現し、地面に降り立った。
聖奈人は二人の姿を見比べた。
刃乃は装備していた刀を全て失っており、服もかなりズタズタになっていた。
一方魔女はどうかというと、大きな縦筋が一本、服に入っているだけで、それ以外は別段深手を負っている様子もなかった。
「貴様のパターンはもうわかっているんだよ。最初に高速で接近して初撃で相手を倒す速攻スタイル。それが避けられたとなると後ろに回りこむ。貴様と戦うのは三回目だ。読めない筈がないだろう?」
「いったたた……魔女っち、手加減しなさすぎ……」
「相変わらずだなぁ、無性に腹がたつ。しかし貴様、剣の腕は落ちたが、破壊力やその他諸々は以前を遥かに上回っているな。一つ一つの斬撃に弾丸がはじけるような攻撃が加わっている。……何をした?」
「ふふふ。そこに倒れている命の恩人君の魔力を取り込んだのさ。彼の魔法での攻撃法は銃だからね。銃の魔力が私の中に入って、それを取り込んだことによって、今までとは違う私を生み出すことに成功したのだ!ほら、最後に何発か撃ってくれたでしょ?あれあれ。えーっと、聖奈人君……って呼ぼうかな!ありがとね、聖奈人!」
早速最初に呼ぶといった『聖奈人君』とは違う呼び方をされるが、聖奈人は嬉しかった。
「なるほどなぁ、ククククク。妾の知らない魔法の使い方がまだこんなにもあるとはな。その功績だけは褒めてやる」
魔女は腰と口に手を当ててくすくすと笑う。
「だが」
空気が変わった。
「いい加減、貴様の無駄な抵抗を見るのも飽きた。実に不愉快だ。最後に全力を以ってして、死ね」
魔女が剣を投げ捨てた。剣は淡い光と共に消え去る。
「残念ながら、死ぬのはそっちだ」
上からかなりの威力の銃撃。魔女を攻撃する。
銃だ。
「つっちー!」
「つ、つっちー?……はともかく、魔女。魔法少女二人と魔法少女と同等の……魔法銃士?」
「魔装……弾手だ」
「最悪のネーミングだね……」
「うるせぇ……よ」
銃が上から降りてくる。こうして、三人の魔法使いが魔女の前に立ちふさがった。
「立ちなよ、聖奈人君。君はまだやれる筈だ」
無茶いいやがって。
けど、ここまでボロボロの銃、さっきまで洗脳状態で今もボロボロになっている刃乃を目の前にしては立たないわけにはいかない。
「……うらああああああああ!」
大声をあげて気合で立ち上がる。傷は痛むが、気にしない。
「聖奈人君、今の君を見るに、君の魔力はえらく膨大だ。私と刃乃ちゃんで隙を作るから、さっきやってた必殺技みたいに全力で攻撃してくれ」
「ああ、任せろ」
そういうと聖奈人は大きく下がった。
刃乃と銃が二人で魔女の前に立ち塞がる。
「魔法少女、リーブル・ノワール!派手に行くよ!」
リーブル、自由。
洗脳から解放され、自由になった刃乃に相応しい名だ。
「……名前とか考えてないんだけどな……。火縄銃!全力全開だ!」
あれ、考える俺と刃乃が馬鹿みたいじゃねーか。……それは置いとこう。
刃乃がいつもの二刀流のスタイルになり、更に両腰に刀を五本、背中に二本背負う。
銀の波動が刃乃から溢れる。刀からも黒と銀の光が満ちた。
銃は手を水平に一振りした。すると、目の前に一丁のマスケット銃が床から伸びてきた。
銃はそれを手に取り、引き金を引いた。だが、何も起こらない。しかし、銃は引き金を引き続ける。
引き金を引いた数が千を超えた頃、引き金を引くのをやめた銃はマスケットをくるりと回し、肩に担いだ。
「んじゃ、いこっか」
「そうだ……ね!」
刃乃は右、銃は左に散開した。
魔女の懐に潜り込み、 回転するかのような勢いで剣舞。
攻撃を受けた魔女は後方へ吹き飛んだ。
「つっちー!」
「任せなよ」
魔女の背後で待機していた銃がマスケットを振り回し、いつの間にか二丁に増えたマスケットでバックステップをしながら二発撃った。
着弾したと同時に魔女の体は上へ吹き飛ぶ。
続いて銃が飛び上がり、上から魔女にマスケットによる連撃を浴びせる。
先ほど引き金を引くことによって弾をチャージすることにより、銃のマスケットは単発で終わるようなものではなく、何発も撃てる代物へと進化していた。
「まだまだっ!」
二発同時に撃ち、魔女の体を地面に落とし、釘付けにした。
「はあああっ!」
そして、マスケットを無数に出し、両の手に元から持っていた二丁のマスケットを向ける。
「射出!」
まず両手のマスケットを撃発した。
すると、背後の全てのマスケットから弾が射出された。
部屋中に轟音が鳴り響いた。
魔力の髄を尽くして射撃を続ける。
「……最後だっ!」
手に持ったマスケットで最後の一発を放つ。
「はぁっはぁっ」
肩で大きく息をする。
魔力はほぼ底をついていた。
「あとは任せたよ……刃乃……ちゃん……」
銃が空から落ちた。どさりと床に落ちた後、魔法少女の姿から元のマッチョに戻る。
「任された!」
刃乃が銃の意志を継いでそう返事した。
未だ晴れない土煙の中へ飛び込んでいく。
数秒後、突然土煙が晴れ、激しく斬り結ぶ二人が姿を見せた。
「あの小娘のせいで障壁が壊れてしまったではないか。ククク、だが、全力でその程度とは底が知れるな。無論、貴様のもだ」
「けど、私の魔法すらも防げる障壁が無くなって、ちょっと焦ってるんじゃないの〜?」
「笑わせるなよ、蝿が」
魔女が魔法で地面を隆起させ、刃乃に攻撃する。刃乃はそれを避け、再度攻撃に向かった。
とんでもなく速いスピードで斬り合っており、もう何が起こっているかすらわからなかった。
「はぁっ!」
刃乃が刀に更なる魔力を込めた。魔力の刀身が出来上がり、本来の大きさより何倍も大きい、ギリギリ刀の形を保っているだけの魔力の塊が形成される。
魔女が手から炎のような巨大な魔法を放った。
「き、く、かああああああ!」
二本の刀で炎を受け止める。
「ほう、これを受け止めるとはなかなかやるではないか。───なかなか止まりだがな」
魔女は炎の威力を強め、刀にかかる重さと負担が倍増した。
「……なかなか止まりでもっ!それでも貴方は止めなきゃいけないんだから!だああああっ!」
刀を犠牲に炎を弾き飛ばした。
鞘から刀を抜き、戦闘を続行する意志を見せる。
「まだまだいくよ」
しかし、そう言いつつも流石にきついのか、大きく、荒く息をしていた。
刃乃は刀にさっきよりも大量の魔力を込め、これまで以上に巨大な刀身が完成した。
「やああああっ!」
魔女の体を斬り払う。
続けて刃乃が回転斬りを繰り出す。
そして最後に全力全開、全魔力全壊の斬りおろしを魔女へとお見舞いした。
魔力の余波が部屋をめちゃくちゃに荒らす。
「……ありゃ、もう限界だ」
刃乃も魔力が切れ、地面に倒れこんだ。
「あと一歩だよ。だから……がんばってね」
刃乃も銃同様に魔法少女状態が解け、元の姿に戻った。
「あっはっはぁ、惜しい。実に惜しいぞ南宮ぁ。まさか、妾がここまで一方的に攻撃を許すことがあるとはな。障壁は壊され、刃乃にはかなり押された。あと一人、あと一人いればそれこそ妾の敗北だったろうな。だがなぁ、あの二人の全力を以ってしても妾には届かず、貴様らの作戦である、妾の隙を突くというものも結局駄目になった。それに、妾はまだまだこの通り、まだまだ動ける。それに対して貴様はどうだ?そうやって魔力の充填をしているのがやっとで、先ほどの一連の戦闘にも参加できないほどに傷つき、もはや後一撃でも喰らえばその外装も消え失せるほどに弱々しい。……残念だったなぁ、貴様と魔法少女二人の命運はここで尽きた」
「……惜しいところまで来てたのかよ……。そうは……見えねーけどな」
「ああ、本当にあと一歩だ。……妾が人間をここまで褒めたことは今までで一度もない。だから、誇りを持って死ね」
聖奈人は一歩も動くことが出来なかった。これは恐怖でも何でもなく、一歩でも動くと充填した魔力が全て吹き飛ぶからだ。
二人がその身を犠牲にしてまで作らせてくれたこの大魔法、簡単に捨てることは出来なかった。
何かないか。
この際何も大きなことは望まない。天井から降ってきた小石が魔女の頭にぶつかって少し上を向くとかそんなのでもなんでもいい。一瞬でも、小さくても、隙を!
どれだけ接近していても、やることが知られているなら避けられるか、即席でもなんでも防御されることは分かりきったことだ。
「……あと一歩ったって……!どうすんだよ刃乃……!」
「どうする?どうしようもないだろう。いい加減諦めろ。魔女に果敢に歯向かってあと一歩まで追い詰めるも破れた者達という英雄譚は妾が伝えてやる」
なんとか!なんとかなってくれ!
あと少しなんだ!あと少しで……!
「……くそっ!」
聖奈人は銃を魔女に向けた。
成層圏を穿つ程の威力を持つ攻撃を放とうとする。
空間に無数のスパークが走り、大気が震撼し、肌がピリピリと痺れような感覚。
「……魔女、こんなことはもう辞めろ」
「……突然どうした?」
「人類を滅ぼすなんてことをだ。何故お前はそんなことをしようとする」
「貴様が知る由もないことだ」
「今ならまだ戻れる。今すぐ全て元に戻せ」
「覆水は盆に帰らないんだよ。……貴様、何がしたい?」
「……魔女!俺はお前を許す!だから、戻ってこい!」
「何がしたいと言っているんだ!意味のわからないことをベラベラベラベラと……っ!」
その時、魔女に隙ができた。
その小さな体躯の肩には大きな剣が刺さっていた。
「な……に……⁉︎」
「何がしたいって言ったな。主人公っぽいらこと言ってみただけで、ただの時間稼ぎだよ!なぁ、緋那!」
魔女の遥か後方には先ほど聖奈人が連絡を入れた相手、柊緋那が立っていた。
「遅れたな、相棒。けど、よく言うだろ?ヒーローは遅れてくるってなぁ⁉︎」
剣を大量に召喚し、魔女に向けてそれらを全て投擲した。
ほとんどは弾かれるものの、そのうち幾つかは魔女のその体を掠めた。
最初の一撃がかなり効いたらしい。
「き、貴っ様ああああああ!」
「へぇ、案外簡単に刺さるもんなんだな。はっ、これじゃ俺が来た意味がないじゃねぇかよ」
「ここまでするのにどこまで苦労したと思ってんだよ!」
聖奈人は軽くしゃがみ、屈伸をして膝の運動をした。
そして、腰を低く落として本格的にあれを撃つ準備を完了した。
あれとは勿論。
「成層……」
「がぁっ!」
魔女は飛び上がり、これまでにない程大規模な魔法を行使した。それが地面に到達すれば街の一つや二つ簡単に吹き飛びそうなほどだった。
「穿ち!!!」
聖奈人の成層穿ちは魔女と同じくらい規模が大きくなっていた。
二つの魔法はぶつかりあい、激しいせめぎ合いを見せる。
「ぐ……ぐぐ……!」
歯を食いしばり、魔女に負けないように必死に地面を踏みしめる。
魔女は魔女で自身の魔法を浄化される前にどんどん上書きする必要があるので、少しも気を緩めることが出来なかった。
成層穿ちと魔女の魔法、そのあまりの威力故に衝撃波も非常に強く、部屋の内装を全て吹き飛ばした。
やがて廃工場をも吹き飛ばし、全てが瓦礫に変わる。
「だああああああああああああ!」
「ふざ……けるなああああああああ!!!」
魔女が魔法を強めた。しかし、聖奈人はこれが全力、押されかけていた。
「もっと……もっとだ!いけえええええええ!!!」
しかし、魔女の攻撃は勢いを更に増し、撃ち負けそうになる。
「うぐ……ぐぐぐ……!!」
「終わりだ、南宮あああああああ……っ!?」
その時、魔女の攻撃が緩んだ。
魔女を見ると、体が先ほどよりボロボロになっていた。
……銃だ。
「……まったく、ここまでしてやらないとダメなんてね。……やっちゃいなよ、聖奈人君」
そういうだけ言うと銃はまた倒れた。本当に最後の力を振り絞ったのだろう。
「あああああああああああああ!!!」
聖奈人の攻撃が魔女を押す。
「何故だ、何故、妾がここまで押される!」
「用意周到な癖に、油断ばっかりするからじゃないかな!」
今度は刃乃が立ち上がり、刀を杖の形に変形させ、小さな刃を無数に飛ばした。
「刃乃おおおおおおお!!」
魔女が咆哮する。今までの飄々とした態度とは比べものにならないくらい、醜かった。
「私も……限界だぁ……」
刃乃も地面に倒れる。
「聖奈人、やっちゃって!」
倒れながらも聖奈人を笑顔で激励した。
「……魔女!俺の……俺たちの勝ちだ!!」
「妾が……負けるわけがない!!」
「はあああああああ!!喰らええええええええええ!!!!」
聖奈人が全ての力を振り絞ってこれまで撃ち続けてきた成層穿ち数倍の威力を持った成層穿ちを魔女の体に食らわせた。
「み、南宮あああああああああああああああ……!!!」
魔女の体は成層穿ちに飲み込まれ、やがて消え去る。
夜空に一筋の銀色をした閃光が走った。その光はキラキラと粒子になって降ってくる。
「……やった」
聖奈人はそう呟き、地面にぱたり、と倒れた。
「やったな」
緋那が聖奈人の隣に座った。
「お前のお陰だよ」
「馬鹿いえ、そこで倒れてる奴らと、お前が先に戦ってたから勝てたんだよ」
「……かもな」
そこまで言うと聖奈人は意識を失った。
疲労が一気にきたのだろう。
「やってくれるやつだ」
緋那は聖奈人をおぶった。そして、聖奈人の家に目掛けて歩き出したその時、魔法少女たちがどうなったか確認するのを忘れていたことに気づき、瓦礫になった廃工場を探索し始めた。
すると緋那はある一人の少女を発見した。そして、その周りに転がっている黒髪ロングの少女(?)と小さなマニア受けしそうな少女。
「おい、アンタ、しっかりしろ」
緋那はそのうちの一人───銃に近づいた。
顔を覗き込む。
そして、緋那は一つのことに気づいた。
彼女は、俺を助けた魔法少女だ、と。
「おい、おい!」
「……何かな。ちょっと寝かせてほし…………君は」
「……やっぱか。お前は俺を助けた魔法少女だろ?」
「……面影があるね。うん、その通りだと思うよ。君がこの場にいるということは、もしかして助けられたのかな」
「そんな大それたもんじゃねーよ。……って、なんでお前ら、普通の姿になってんだ?」
緋那は銃と刃乃と佳凪太を見た。
全員、女の子らしい元の姿に戻っていたのだ。
「……どういうこと?」
 




