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VS魔女

 聖奈人のその言葉に銃は耳を疑った。

「魔法少女の力を……その身に?」

「ああ。さっき、俺のことを使い魔って言ったけど、それは違うな。今の俺は魔法少女そのものだ。驚いたか?」

「驚いたなんてもんじゃないよ……。魔法少女の力が君に……。しかも、自分を魔法少女と化するんじゃなくて、まさか魔法少女の力を鎧として外装するなんて……」

「この使い方をお前が知らなかったとはな。……ま、お前は休んどけ。後は俺がなんとかする」

 聖奈人は魔女へ銃を向けた。

「くくくくく……あーっはっはっはっはっはぁ!なんとかする?馬鹿が!貴様程度に妾をどうにか出来るわけないだろう!魔法少女と同等の力を得たとはいえ、所詮は同等止まり。そこのボロクズを見ろよ。あれが数分後の貴様と同じ姿だ!」

「テンプレ悪役かよ。刃乃の浄化の魔法にビビって、一番最初に不安材料を取り除いておくような臆病者に負けるわけねぇよ」

「羽虫が粋がると痛い目を見るということを貴様の身を以って教えてやる……!」

 その言葉を聞き終わるか終わらないうちに聖奈人は魔女に急速接近した。懐に潜り込み、胸に銃を突きつけ、引き金に指をかける。

「鈍い」

 魔女は床をとん、と一つ踏んだ。すると、波紋状に広がる衝撃波が聖奈人の体を吹き飛ばした。

「ちっ」

 聖奈人はすぐに体制を立て直し、三発弾丸を速射した。

「温い」

 魔女の防壁のような魔法によってそれは塞がれたが。

「なら、これならどうだ!」

 目を閉じ、脳内でイメージ。

 イメージした物は重機関銃。それも二丁。

「喰らえええええええええ!」

 銃撃が轟音を立てる。絢爛豪華な部屋はその見る影もなく蜂の巣のように穴だらけになった。

 蜂の巣のようになったということは、弾は魔女に当たらず、全て弾かれる、もしくは避けられているということだ。

「ちっ」

 聖奈人は重機関銃を投げ捨てた。二丁の重機関銃は地面に落ちる前に消え去る。

「判断を下すと、弱い。やはりその程度か、と言わざるを得んな」

「その程度ってどの程度だ」

「そこのゴミと役立たずの半分以下だ」

「……そうかよ!」

 足に魔力を集中。先ほどよりも魔力を込めて更に速度を強化する。

「アクセル……全開だ!」

 背後に足に集中した魔力と同種の魔方陣を展開、更に速度を速めようとする。

 そして、聖奈人は姿を消した。

 目で追えなくなる程のスピードで動いているのだ。

 これも魔法少女の力の恩恵である。

 壁や天井を蹴り、縦横無尽に目にも留まらぬスピードで魔女を撹乱する。

 穴だらけだった部屋が更に崩れ、もはや見る影もなくなった。

 魔女の頭上へ来た時に姿を現し、鮮やかなかかと落としを魔女に決めた。

 そして、魔女を踏んでくるりと宙返り、再び空中で魔女の方へ向き、ドリル状の攻撃的な形をした銀色の魔力の塊を幾つも具現化させた。

 これは部屋を駆け巡っている時に設置した物だ。

「喰らえ……。謀略トリガーの……引きトリック!」

 魔女に銃を向け、撃つフリをした。

 すると、設置した魔力の塊が一斉に魔女へと向かい、攻撃を開始した。

 謀略の引き金、聖奈人が中学二年の頃に考えた技である。

 超スピードで移動し、そこかしらに自分の魔力を空中に止め、それを一気にぶち込む技。

 威力は絶大だ。

 だが、その絶大な威力を誇る謀略の引き金でさえも魔女には届かなかった。

 魔女が腕を一払いすると、煙が晴れ、無傷のままの魔女が現れた。

「そんな小細工が通用するとでも思ったか?もう少し妾を興奮させてみろ」

 空中で満足な身動きが取れず、無防備な聖奈人に向かって魔女はどす黒い色をした魔法の衝撃波を放った。

「くっ……、流動スクリームする……叫喚ストリーム!」

 聖奈人も対抗するかのように、放射状の魔法を銃から撃ち出す。

「ぐ……ぐぐ……!」

 が、出力が劣るらしく、魔女の衝撃波はすぐ目の前まで迫った。

「雑魚が一丁前に粘るな」

 魔女は指をパチン、と鳴らした。衝撃波が更に威力を増す。

「ぐああああああああ!!」

 必死の抵抗虚しく、衝撃波が聖奈人に直撃した。

 魔法を外装していて、尚且つ流動する叫喚によって多少威力を軽減している筈なのに、なんという威力だ。

 聖奈人はすでにボロボロだった体を更に傷つけることとなった。

「あぐ……!」

 魔女はつまらなさそうに「はぁ」と溜息をつき、聖奈人に近づいた。

「貴様、まさかもう終わりか?」

 うつ伏せになっている聖奈人の胴体を強く蹴り、仰向けにした。

「無様だなぁ、南宮。ククク、まぁ、これから迎える世界終焉のいい余興にはなった」

 聖奈人をの肋骨に魔女は強くストンピングをした。

 めきり、と嫌な音を立てる。

「がはっ……!」

「ほら、どうした?さっきの大口は」

「……そう……だな。パンツ……見え……てるぜ。黒……か。俺的には……白が好み……なんだけどなぁ……」

「……あっはっはぁ、まだ余裕があるようだなぁ」

 魔女は人差し指を天に向けた。幾つも重なった魔方陣が空中と聖奈人の倒れている真下の地面に現れる。

「耐えろよ?」

 魔方陣は聖奈人の上に覆い被さり、一切の身動きが取れなくなった。

 魔女はその魔方陣の上に手を重ねた。

「まぁ、潰れたら潰れたでそれも一興……だがな!」

 魔女がそう言うと、魔方陣が発動し、聖奈人の体が地面にめり込んだ。重力が何倍にもかかっているかのようだ。

「うぐぐぐぐ…………!」

「ほら、追加だ」

 魔方陣が聖奈人に更に重ねられた。

「ぐあああああああああああ!」

 そのあまりの威力に叫び声をあげずにはいられなかった。

 そして、その威力に床は床をぶち抜いて下の階に聖奈人は落ちた。

「聖奈人君……っ!」

 銃が聖奈人の名を叫ぶ。

 まずい、このままでは二人ともやられてしまう。

 なんとかしないといけないというのに、どうしても体が動かない。

 魔女はにぃ、と銃にいやらしく笑いかけた。

「銃ぅ、あれを始末したら、次は貴様の処刑の続きだ」

 空いた穴に魔女が飛び込んだ。

 聖奈人へ追撃する為だ。

「く、くそ……!まさか、こんなにも実力が開いていたなんて……」

 考えてみれば当然のことだ。魔法少女の中で一番魔女に対して有効な能力を持つ刃乃がやられていたのだ。

 魔女の力は、以前とは比べものにならない程上昇していた。

 他の魔法少女を呼べれば……。しかし、連絡手段がない。

 どこにいるかもわからないし、まず、魔力フィールドによって魔女の魔力そのものが遮断されているだろう。いくら魔女の魔力が強力だとしても、魔力フィールドを以ってすればそれを遮断し、人々に悪影響を与えないことなど、いとも容易いことだった。これでは魔女の魔力を感知した魔法少女が助けに来る、なんて展開はありえないのだ。

 人々を守るために張った魔力フィールドが邪魔になるとは、皮肉なものだ。

 つまり、完全に詰み。

「せめて……佳凪太君だけでも……っ!」

 刃乃は這いずり這いずり、佳凪太の閉じ込められている魔方陣へ近づいた。

「はぁ……はぁ……」

 幸い、魔力は多少残ってる。

 銃は魔法の杖を顕現させた。

 それを銃の形に変形させ、魔方陣を魔法で全力で撃つ。

 なんとか立ち上がり、何発も弾を撃ち込む。

 だが、かなり強固な魔法らしく、どうにかなった様子はない。

「ダメ……か……」

 諦めずにさらに追撃しようと第二撃目を撃ち込もうと魔力の充填を始める。

 しかし、魔法を放とうとしたその瞬間、魔方陣が眩く輝き始めた。それはそれはどす黒く。

「ま、まずい……」

 魔法が発動しようとしている。

 もしこの魔法が発動すれば、佳凪太に命はない。

 銃は更に攻撃を加え続けた。だが、一向に魔法が解ける様子はなかった。

「どうすれば……っ!」

 そう呟いき、遂に銃は膝から崩れ落ちてしまった。

 銃も体は既にボロボロなのだ。

「動けよ……っ!体!」

 目から涙が溢れる。しかし、体は一向に動いてくれない。

 銃は自分を呪った。まだ戦っている者がいるのに、こんなところで倒れている自分の力の無さを。

「ちくしょう……!」

 涙が床に溢れた。

 その瞬間。

 魔方陣が破壊され、どす黒い光が当たりに霧散した。

「え……」

 そして、何者からか魔力が供給される。

「誰……?」

 魔力は供給されたもののまだ体は動かないので、地面に伏せたまま誰かと尋ねた。

 しかし、その主は何も答えずにただ「行ってくるね」と言うだけ言って穴の中に飛び込んで行った。

「君は…………うっ……」

 銃は意識を失った。

 佳凪太が助かったことにより、緊張と糸が切れてしまったのだ。

 彼女は……。

 銃は薄れゆく意識の中で彼女の正体を悟っていた。

 彼女は───。





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