完了
十七時。
節目はいつもこの時間だな、と聖奈人は妙な感慨を覚えた。
もうじき銃の回復が終わる。それに合わせ、戦闘に使えそうな物をポケットに仕込んでいく。
とは言っても、中学生の頃に買ったナイフや、中学生の頃に作った閃光弾をポケットの中に仕込んだり、中学生の頃に考えた黒歴史ノートを見返して必殺技を復習するくらいだが。
パラパラとページを捲ると、昔のことが思い出される。
孤高の存在を気取って過ごした中学生時代。友達など琴葉くらいしかいなかったなぁ……。
……やめよう。傷が抉られる。
「聖奈人君、行こうか」
下の階から銃の声が聞こえた。
準備が出来たようだ。
「さて、行くか」
聖奈人は黒歴史ノートをパタン、と閉じ、学習机から立ち上がった。
机の上に無造作に放置していたネクタイを手に取り、結び目をきつく結ぶ。自ずと気合がはいる。
乾かすためにハンガーにかけておいた制服のブレザーを大袈裟な着方をし、更に覇気を込める。
最後に頬をパァンと叩き、覚悟を決めた。
「……待ってろ二人とも」
囚われの黒の姫と愛する嫁を救出すべく、そして魔女の、文字通り魔の手から世界を守る為に、聖奈人は部屋の外へと踏み出した。
繰り返す。時刻は十七時。
雨はあがり、夕暮れの空が聖奈人と銃を激励するかのように照らしていた。
決戦の時は近い。




