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世界が終わる

「聖奈人君、警察に行ってきたよ。私は警察と同行することになったから、聖奈人君は聖奈人君で探してくれ。それじゃ」

 銃は聖奈人に必要な事だけを伝えてすぐに通話を終了した。

 先ほど聖奈人と別れてから結構な時間が経っていた。佳凪太の家が襲われたのは昨日だということを考えると、もうかなりの時間佳凪太は行方不明になっている。一分一秒でも早く見つけてやらないと大変なことになるだろう。携帯電話に表示される時刻が銃を焦らせる。

「君、案内してくれ」

「わかりました」

 警察官に道案内をするために、第一発見者として現地を確認するためにパトカーへと乗り込む。

 今の人類用に大きめに改造されたパトカーは魔法をかけられた人々の巨体が乗り込んでも快適というくらいに広い。

 電話をして警察を呼べばいいものを、わざわざ警察署まで出向いたのには理由がある。

 シンプルに銃は佳凪太の家の住所を知らないのだ。

 だが、警察官から発せられた言葉は銃の焦りを一瞬吹き飛ばすこととなった。

「そういえば、なんで君はわざわざ警察署まで来たのかな?」

「え?」

「ほら、警察署まで来なくても、通報してくれれば良かったのに」

「いえ……私はその子の住所を知らなくて……」

「家の名前言ってくれれば調べることが出来るんだよね。知らなかった?」

「……動転して忘れてました」

「あはは、よくあることだよ」

 一瞬焦りを忘れたとはいえ、呑気に笑っている場合ではないというのに。

 早く聖奈人と合流したい気持ちでいっぱいいっぱいだった。

 彼のことだ、どうせどんなに危険そうなことでもとりあえずは一人で突っ走ろうとするだろう。

 聖奈人は少し普通とは違うだけのただの人間だ。自分が守ってやらないと。

 車はやがて佳凪太の家に到着し、すぐに捜査を開始した。

 とは言っても、既に確認していることは事前に伝えてあるので、事実確認の為だけにここまで来たのだ。

「これは酷い……」

 ズタボロになった佳凪太の家の内装を見て警察官が素直な感想を漏らす。

 ちなみに、倒れていた使用人達は既に救急車で病院へと運ばれている。目を覚ましてから何が起こったか聞く為の重要な参考人だ。

 先ほども聖奈人と歩いた家の中を今度は警察官と歩き回る。何度歩いても代わり映えするはずなどないのというのに。

 早く解放してくれ。

 しかし、警察官たちはしばらく解放してくれそうにない気配を放っている。

 外はぽつぽつと雨が降り始めているようだ。

 さてさて、どうしたものか。

 撒いてしまいたい気持ちはやまやまだが、警察なんてものを撒いてしまえば後々大変なことになる。下手をしなくても犯人にされかねない。

 聖奈人はかなり遠くへ行ってしまっているらしく、微弱な魔力すら感知できない。……元からカスみたいな魔力なのですぐ感知出来なくなることはわかっていたが。

 しかし、銃は聖奈人のカスみたいな魔力に何か不自然な物を感じていた。

 何が不自然かというと、あまりにも聖奈人本人の魔力を感じなさすぎるのだ。

 能力を制限しているのだろうか。

 普通、どんな人でも魔女の呪いにより、体が魔力の塊と化しており、銃が感じとる魔力反応は劣化した魔女のものとその人固有の魔力を半々で感じるのだが、聖奈人の場合、聖奈人の魔力はまるっきり感じないし、魔女の魔力の代わりである魔法少女の魔力もごくごく僅かにしか感じることができない。理由はわからないが、もし聖奈人が魔力を内側に封じ込めているとすれば、はっきり言って聖奈人の戦闘力は常人以下である。

 魔力というものはパスという不可視の物から供給されており、パスがあれば魔女や魔法少女から直接供給されなくても自然に魔力が溜まる。そのパスが断たれると人類は今の姿からときはなたれ、元の姿へと戻ることができる。それと同様に魔法少女から魔力を得ている聖奈人にも同じことが言えるのだが、肝心のパスの担い手である魔法少女が消えてしまっている。パスが消えているとなると、後は残っている物を徐々に消費していくのみだ。

 全てを消費してしまうと、魔法はおろかその命さえもすり減らすことになる。それこそ聖奈人が魔力を封じ込めている理由だろう。

 やはりあの子は死んでしまったのだろうか。

 喋ったことは一度もないが、同じ魔法少女である黒と銀の魔法少女の身を案じた。

 しかし、そう簡単に死ぬはずもない、と考えを改めた。きっと何らかの理由で何処かに隠れているだけだ、と。

 捜査はもう既に大詰めの様子で、しばらくすれば解放されそうな雰囲気だった。

 よし、解放されたらすぐに聖奈人君に連絡をとろう。

 ───そう決めたその時だった。

 銃は遠方にとんでもない魔力を感知した。

 それは、聖奈人が廃工場へと向かい始めた頃と丁度同じ時間だった。

「……っ!なんだ……これ……!」

 銃の顔が一瞬にして蒼白に変わり、体がガクガクと震える。膨大な魔力量に体が押しつぶされそうな、そんな感覚さえ覚えた。魔力のせいだろうか。寒い。凍えそうだ。

 まずい。まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい!

「この街が……いや、世界が……終わる……!」





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