嫌な予感
聖奈人も残っているものを急いで平らげ、同じく席を立つ。
シンクへと洗い物を置き、先ほど座っていたソファへと腰掛けた。
この家に初めて上がったのは昨日のはずだが、もう聖奈人の定位置となりつつある。
まもなくカチャカチャと、食器がぶつかる音が鳴り始めた。それと共に蛇口から水が流れ出す音も。食器を洗い始めたのだろう。
「そういえば、昨日は色々していてくれたみたいだね。ありがとう」
不意に礼を言われ「別にお前のためじゃねーし」とだけ言ってスマートフォンを弄りだした。ここでなぜツンデレなのかはわからない。
メールを確認した。だが、佳凪太からメールが返ってきている様子はない。
「おかしいな。いつものあいつなら、どんだけ遅くにメールしても、いついかなるときでも三十分以内には返してくんのに」
すでに先ほどメールをしてから一時間が経過していた。
試しに電話をかけてみようと目論むが、寝ていて、起こすのでは悪いのでまた後でにかけることにした。
永海からのメールはない。返信していないのだから当たり前だが。
スマートフォンをポケットにしまった。が、すぐにスマートフォンがブルブルと震えだし、また取り出す。
佳凪太からのメールだった。
「きたきた」
聖奈人の顔が明るくなり、目を輝かせて生き生きとメールを開いた。
だが、すぐに聖奈人は眉をひそめるのこととなった。
『なしやら5461tj'やなわt5』
「……なんだこれ」
意味不明だった。打ち間違えなどではない。こんな打ち間違いがあってたまるか。
すると、いきなりスマートフォンの画面が暗転し、電源が強制的に落ちた。
そしてすぐに自動的に再起動する。そしてメールボックスを確認すると、先ほどのメールは跡形もなく消えていた。
……なんだか嫌な予感がした。
今朝見た夢のせいだろうか、何か途轍もないことが起こるような、そんな感じだった。
「銃、今から佳凪太の家に行ってみる。なんか様子が変なんだよ」
「なら私も行こう。……実はね、数日前にフィールド内に侵入したやつ、まだ見つかってないんだ。……なんだか嫌な感じがする」
「奇遇だな、俺もだ」
「……やっぱり何か感じるものはあるんだね」
そう言い終わると、銃は急いで自分の部屋に向かい、着替えてきた。
聖奈人は先に玄関に向かい、いつでも出発できるよう待機。
程なくして私服に着替えた銃が姿を現した。目が腐りそうだ。
そんなことはともかく、最初は歩いていたものの、漠然とした不安は二人の足を早め、いつのまにか走って佳凪太の家へと向かっていた。




