結局止まず
「……はあ、もういいよ」
面倒臭くなった銃は空を手首で数回払って適当な感じに許した。
聖奈人の顔はぱあっと晴れ上がり、子犬のようにきゃんきゃん喜び出した。
何キャラなのかが未だ掴めない。
銃は聖奈人の性格を頭で整理し始めた。
普段はクールを装っている。しかし実のところ根っからの馬鹿で熱くなりやすい。多少ズレているところがあると思う。
しかし何故だろう。何故だかわからないが引き付けられるものがある。
銃は不思議だ、と頭をひねった。
あれ、ついさっきもこんなことを考えなかったっけ。
やれやれとお手上げポーズをした。
それより先は考えないようにした。考える意味がない。なによりどうでもいい。
いつまでもこうしているわけにはいかないので銃は次の行動に入った。
「そろそろ寝ようか」
聖奈人にそう提案した。
「ん?ああ、そうだな。もうこんな時間か」
時刻は十時を回っており、良い子のみんなはとっくに寝静まっている、そんな時間だ。
「布団あんのか?」
「父のベッドがある」
「父のが〜って便利だなおい」
「父親は便利アイテムだからね」
「何気に酷くないかそれ」
「そうかもね」
適当にあしらって聖奈人に手招き、そのまま二階へとあがって聖奈人が寝る部屋へと案内した。
聖奈人はスマートフォンの電源をいれた。天気予報のアプリケーションをタップすると、雨が降る、もしくは降り続けるという予測を示す傘マーク。朝までそれが消えることなく嫌味ったらしくマークの傘が降ってくる雨と共に揺れていた。
本格的に世話になるしかないか。
聖奈人は心の中でため息をついた。
琴葉以外の女の子の家に泊まるなんてのことは初めてである。なので出来ればそういうことは避けたい一心であったのだが、こうなってしまっては諦める他ない。
スマートフォンをポケットにしまい、案内されるがまま部屋の中に入った。
「ここで寝るといいよ」
「……そうだな」
じとりと目で乗り気でないということを態度で精一杯伝える。
しかしそんな些細な抵抗は伝わるはずもなく、銃はにこやかにおやすみと言うだけ言って部屋から出て行ってしまった。
「ま、そうだよな」
明らかに一人で寝るには大きすぎるダブルベッドにその身を投げ出した。
ベッドは聖奈人の体重をもろに受け、きしりと沈む。それと同時に内蔵されてあるバネの反動で聖奈人の体が一瞬ふわりと浮き上がる。
 




