処刑
「なにさ。なんのために使うのかな」
「ちょっとな。頼めるか?」
「はいはーい」
けだるそうな「はい」を二回重ねての返事が返ってきた。
大きな足音が遠のいていき、やがてドンドンドンという重い音がが近づいくるのがわかる。
「入るよ」
ドアの前でそんな声が聞こえた。そして、この声が聞こえた頃にはレバータイプのドアノブは既に下へと下ろされていた。
「ちょっ……ま、待て!!!」
制止したときにはもう遅かった。扉は開かれ、全裸を銃へと晒す羽目になった。
「あ……」
「あーあ……」
聖奈人にこの先に何が待ち受けているか既に予測できていた。故に取り繕うこともせず、そしてこれから受ける自分の仕打ちを憂いてただ遠方を遠い目で見つめて流れに身を任せた。
「少しは隠す努力の一つでもしたらどうかな!達観してるんじゃない!」
聖奈人の鳩尾に銃のアッパーが炸裂。強烈な激痛が聖奈人を襲う。
「かはっ……」
どさり、と音を立てて地面に倒れこんだ。
「馬鹿か君は!」
微かに、叫びと同時にドアを力強く閉める音が聖奈人の鼓膜を震わせた。
「おおおおお…………琴葉といるときの癖で………」
琴葉とこういうハプニングイベントがあった場合、謝っても何をしても問答無用でボコられるので、聖奈人は何も考えないようにしていたのだ。
しかし、今回は銃だということを忘れていたのだ。
秘部を隠せばそこまでのことにはなっていなかっただろうに、妙に、中途半端に悟るからそうなる。
と、そんなうちにダメージが抜けていく。日頃琴葉から攻撃を受けていることが幸いしてかダメージ耐性が極端に強くなっているようだ。
銃が落としていった鞄から制汗スプレーを取り出し、先ほどまで身につけていた下着などに思いっきり振りかけた。
実際にはなんの効果がないものの、とりあえず汚れを消したつもりになってからそれらを身につけた。
スプレーのきつめの匂いが鼻の奥をつく。
それから手早く置かれてあった服に着衣をすませ、自分の服を鞄に詰め込み、音を立てずに扉を開けた。
先ほど銃を怒らせてしまったので機嫌を取ろうとしてそろそろと腰を低くして銃の座っているソファに近づいた。
「……なにかな」
「いえ……先ほどは申し訳ありませんでしたと……」
「馬鹿か君は。少しズレたところがあるとは思っていたけど、何故あんな場面であんなことができるのかな。隠せよ」
「いつもの癖で………」
「いつもの癖って何さ!馬鹿か!」
聖奈人を怒鳴りつけた。当然と言えば当然である。




