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浴場

 浴室に入って蛇口を捻り、温水を出した。

 非常に暖かく、全身がほぐれる快感に身を寄せる。快楽が押し寄せ、聖奈人は気分的にリラックスした。

 すると、リラックスして落ち着いた頭に一つのことがよぎった。

「さっきの夢……」

 いつもは闇は光に撃ち抜かれて夢は終局を迎えるが、今回ばかりは違った。

 闇が聖奈人を覆ったまま夢は終焉を迎えたのだ。

 眠っている時間が短すぎたからだろうか。それとも突然起こされたからだろうか。

 そもそもあの夢はなんなのだろう。

 聖奈人は水を浴びて冴えた頭でそんなことまで考え始めた。

 今までは特に何も考えていなかったが、これまでいつも何かが起きてきたという現実があるので、いつもと違う夢だったならば自然に考えざるを得ない。

 しかし、聖奈人の中では半分程はもう結論が出ていた。

「……あれだろうな」

 あれ、とはもちろん緋那と聖奈人以外は知り得ない、形を持った魔法のことである。

 なんとなーくではあるが、それが原因だとは薄々分かっていた。

 しかし、原因がわかっても何故そんな夢を見るかは全く見当がつかない。

 魔法には未来視の能力でもあるのだろうか。たまたまだと言って仕舞えばそれまでなのだが。

 考え事をしたことによって更に頭が冴える。そこでふともう一つの事が頭をよぎった。

 それは、ここが銃が日頃から使っている浴室ということだ。

 つまり、女の子が常用する浴室に今自分はいる。

 どきりと胸が高まった。

 なんとなく案内されるままに入ってシャワーを浴びていたが、よくよく考えるととんでもない場所に入っていたものだ。

 不健全な妄想が脳内を縦横無尽に駆け巡る。

 邪念を振り払おうとシャンプーを手につけた。しかし、そのシャンプーも銃が使っている物な訳で。

 銃と同じ香りが聖奈人の鼻腔を蕩かす。

 聖奈人の胸は高まりっぱなしだ。

 ふるふると首を横に振り、何もかも忘れようと一気に髪を洗う。そして流す。

 髪から流れ落ちたシャンプーの泡が聖奈人の体を伝う。その感覚が不快で体をも洗い流す。

 聖奈人はいつも髪を洗った後に体を洗う習慣が身についている。

 体の泡も全て落ち、次にいつものようについボディタオルを手に取り、ボディーソープをタオルにつけ、自らの体を洗い始めたそのときだった。

 うっかりしていたが、これは銃の家の物で自分の物ではない。

 そしてこれも銃がいつも使っている物。これで体を洗っているのだ。

「うわわわわわ!!」

 顔を真っ赤にして慌てて体を洗い流す。

 その次に壁に頭を打ち付け始めた

 。自己嫌悪だ。

 これ以上この場所にいるとどうにかなってしまう。

 そう考え、大急ぎで浴室を出る。

「はぁ……はぁ……」

 いつの間にか置かれていたタオルに手を伸ばし、乱雑に髪と体の水分を拭き取り、タオルを洗濯カゴにシュートした。

 ちらりと棚の上に置かれた着替えへと目をやる。

 本当に今更ながら、他人が日頃から着ていたものを身に付けるのはいささか抵抗があるのだ。

「おーい、鞄取ってくれないかー!」

 ドア越しに大声で銃に自分の鞄を取ってくるよう要求した。

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