表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/59

ロリ子

「真実、ね」

「なんだ?妙に意味ありげじゃないか」

 ここで聖奈人は昼間、二人で買い出しに出かけた時の感情と思考を再び思い起こした。

 銃が自分を助けた魔法少女ではないかという疑い……というよりも希望だ。

 銃の態度は聖奈人から見ると、明らかに何かを知っている、知識を持った人間の余裕というものがあってみえた。

 先ほどの真実の話。

 体調がよろしくないのか、銃の発言は迂闊の一言に尽きる。

 銃は寝ぼけていたり体調が悪かったりすると途端にいつもの完璧さが瓦解するということに今の発言で確信が持てた。

 自分たちの肉体に宿った魔法ですら未だ殆ど解析できていないというのに、魔女の使った大魔法の効果を理解できる人間なんて魔法少女を除いてどこにいようか。

 証拠はここまで揃っているが、さらに付け加えて一つ。

 銃は以前、自分が人助けを好きになった理由を話していた。

 そのきっかけは?それは、過去に少年を助けたから。

 聖奈人が現在消えずにすんでいる理解は?それは魔法少女に助けられたから。

 これだけでは証拠として弱いが、銃の発言と照らし合わせてみると納得がいく。

 自分を助けてくれた魔法少女が目の前にいるかもしれない。

 そんな希望を胸に聖奈人は目を爛々と輝かせ、無駄に遠回りもせずに銃へストレートに質問をした。

「銃」

「ん?何かな。言っておくけど、肉は分けないよ」

「んなもんどーでもいいっての。それより、お前に一つ質問がある。いいか?」

「いいよ。何でも聞きたまえ」

 銃は考える素振りも見せずに二つ返事で引き受けた。

「なぁ、銃。お前はもしかして、魔法少女じゃないのか?」

 銃と空間が凍りついた。

 ぽかんと口を開けたまま反応しない。

 そして、目線を聖奈人から外した。

「な、何を言ってるのかな。そんなわけないじゃないか、あは」

 銃の目は泳ぎまくっている。

「真面目に答えてくれ」

「……私、魔法少女、違う」

「本当か?」

「ち、誓って本当だ。神にだって誓える」

 聖奈人は再度思考を始めた。

 ここで突き詰めるか、それとも一度引くか。

 突き詰め続けたらいつかはボロを出すだろう。しかし、それではこの数日で築かれた交友関係をなくしてしまうかもしれない。

 一方ここで引くと、次に聞くタイミングを見失うかもしれない。だが、関係にヒビをいれずに、自然に聞きだせるやもしれない。

 幸い同じクラスで、更に仲良くもなれたのだ。先を急ぐ必要はない。

 聖奈人は保留することにした。

「冗談だよ。魔法少女が目の前にいてくれたらそりゃもうすげーなって思ってつい聞いちまっただけだ」

「なんだい、冗談でもやめてくれよ。心臓に悪いじゃないか……」

 ここも迂闊。

 本当に魔法少女でないなら聞き流すだろうに。

 普通の人間が魔法少女か疑われてドキリとすることなどある訳がない。

「悪いな。今のは聞かなかったことにしてくれ。……さて、冷める前に食うか」

 山のように積まれた肉を上から処理し始める。

「むぅ……」と目をじとりとさせて聖奈人を見つめるが、空腹には敵わなかったようで半分冷えてしまった肉をひょいひょいと口に運びだした。

「久々にちゃんとした肉食ったな。ちょっと感動」

「君、そんなに貧乏なのかい?」

「いや、毎月母親が仕送りしてくれるから貧乏ではねーな。俺が趣味に金を回しすぎてるから食事に回せる金がないだけだ」

「自制しなよ……」

「できんな。ソーシャルろりにゃんが俺を待ってんだ」

「課金なのか⁉︎君は課金で困窮してるのか⁉︎」

「お陰で上位ランカーだぜ」

「うわぁ……しかも一瞬聞き流したけどろりにゃんって……うわぁ」

「てめぇ、魔法幼女プリティ・ロリ子を知らねぇとは言わせないぞ」

「知らないよそんなもの。知っていてたまるものか」

「知らないなら教えてやる。魔法幼女プリティ・ロリ子とはな、対象年齢七歳頃の女児向けアニメだ。ロリ子は魔法に憧れる夢見がちな小学生。ひょんなことから魔法の力を得たロリ子だが、魔法少女と呼ぶには幼すぎるので魔法幼女と名乗り出したんだよ。敵の名前はヴァヴァア、婚期を逃したOLや喪女達の呪いが生み出した、いわゆる魔女だな。将来有望な女の子達に悪さをして自分と同じように婚期を逃させようとするんだ。そんなヴァヴァアからみんなの平和と婚期を守るのがロリ子ちゃん!ちなみに、ヴァヴァアの普段の姿はなんと、ロリ子と同じ小学生で、小学生に紛れてロリ子と仲良くしつつ裏で女子の婚期を征服しようとする……悪いことをやっているとはいえなんて健気なんだ……っ!」

 拳を強く握り、目に涙を溢れさせながら力説する。

 しかし、銃は聞いておらず、それはそれは大きな欠伸をしていた。

「ちゃんと聞けよ!」

 銃が聞いていなかったことに気づいて聖奈人が怒りを露わにする。

「ちゃんと聞いてるよ。ババァの触手がなんだって?」

「一言もそんな話してねーよ!」

「聖奈人君、なんだか気持ち悪いよ」

「ロリ子の為ならどんな汚名も受けるぜ」

 なんてったってかわいい女の子が出るアニメはこれくらいしかないしな、と付け加える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ