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火縄家での話Ⅲ

 もう何回、一階と二階を行き来したことになるのか、濡れタオルを二枚持って階段をのぼり、銃の部屋へと入る。

 銃はまだ眠っているようだ。

 時刻は十五時。

 思ったより時間が進んでいることに驚く。

 しかし、驚いても時間が過ぎていることに変わりはない。

 驚きを一瞬に止め、銃の顔を覗き込む。

「うう……」

 銃の呻き声が漏れる。嫌な夢でも見ているのだろうか。

 よく見ると、寝汗を大量にかいていた。銃にとって悪い夢を見ていることを間違いないと見ていいだろう。

 起こさないように顔面の汗を濡れタオルで拭き取ってやる。

「ん……」

 よっぽど不快だったとみえる。汗を拭うと強張っていた顔面が少し柔んだ。

 といっても人を殺しそうな、非常に恐ろしい顔に変わりはなかったが。

 そして持ってきたもう一枚のタオルを額の上に乗せる。

 するとすぐに気持ちよさそうな寝息をすやすやと立て始めた。

 水気を欲してたのか。

 春という暖かくなってきた時分にずっと布団に籠りきりというのは水分を飛ばしてしまうのだろう。

 夢見が悪いのもそういう理由から来ているのだと聖奈人は予測する。

 そして、しばらくは部屋に居座ろうと部屋に置いてある椅子を引き出し、すとんと腰を下ろした。

 ただの寝不足とはいえ、もしもや万が一のことがあればすぐ対応できるようにしておいたほうが良いというのが聖奈人の判断だった。

 それに、あまり人の家を引っ掻きまわす訳にもいかない。

 後は夕飯のみだし、先ほど作ったっきり伸びきってしまったうどんを啜りながらスマートフォンを弄って時間をつぶすとしよう。

 そう決め、スマートフォンをポケットから取り出し、電源をつけた。

 永海から一件のメールが届いている。

「なんだ?」

 メールを開き、何ごとかと文面を見る。

 表示されたのは一枚の画像。

 熊さん系の男と細身の男が抱きあう二次元の画像だった。

「なんだよこれ!ふざっけんな!」

 全力でスマートフォンを床に投げ捨てた。

 そして、ピロリロともう一件メールが届く。

「はぁ?」

 手に取り、またもメールを開くと『こんな感じの構図で写メよろしく』という文面で受信していた。

「だから何の話をしてんだよ!」

 再度スマートフォンを床に叩きつける。

「んん…………」

 騒がしくしたせいでむくりと銃が目を覚ました。眠そうな顔をしたまま体を起こす。

「あ、悪いな起こしたか」

「起こしたかって……君以外に要因があるのかい……」

「ですよね」

 銃が腕を頭上に伸ばして大きく深呼吸をしてからベッドに降りる。

「もう寝なくていいのか?」

「まぁね。私は睡眠時間が短くていいタイプなんだ。……夜と今とで四時間か。十分だね」

 ネクタイを外させただけの制服のまま寝かせてしまったので苦しかったのだろう。ボタンを数個上から外す。

 間からは屈強な胸筋がこんにちわしていた。

「ちょっとは気にしろよ」

「ん?……あっ」

 寝ぼけていたのか。

 顔を赤くして胸元を隠した。

「み、見た?」

「何をだ?」

「そ、その……胸……」

「見たぞ」

 そういうと先ほどよりもっと顔を紅潮させてうずくまった。

「何さその態度……。そういう時は見てないっていうものだよ……」

「そういうのは本当に申し訳ないと思ってるときに言うものだ。そんな見せられても全く嬉しくないどころか見たくもない筋肉を見せられて謝って欲しいのはこっちだっての」

「十二夜ちゃんに連絡するね」

「すみませんでした!何も見てないです!ごめんなさい!」

 床を抜くような勢いで全力の土下座。衝撃で額が赤くなる。

「ふん、乙女の心を傷つけた罪は重いよ。前に貸したお金、返して貰わなくてもいいと思ったけど、そういうわけにはいかなくなったね」

 その言葉をうけて聖奈人の顔が真っ青に変わった。

「そんな殺生な!」

「いいや許さない。乙女の純情を踏みにじった罪は重いよ」

「お願い致します!お願い致します!どうか、どうか!」

 目を見開いて必死の形相で頼み込む。


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