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剣と銃と

「あ、お兄ちゃん!おっかえ……り……」

 裸にエプロンを装備した妹と言う名の筋肉が聖奈人を目掛けて飛びかかってきた。

 しかし、先頭を歩いていたのは男を小脇に抱えた琴葉。

「そ、その人誰?も、もしかしてお兄ちゃん……そんな趣味が」

「あるわけねーだろアホかお前!」

 琴葉の背後から顔を出しながら否定する。

 否定しておかないと妹の態度が変わりそうで怖いのだ。

 しかし、そういう聖奈人の思惑はより悪い方向へと裏切られることとなった。

「んもぅ、お兄ちゃんったら!男の子が好きならもっと早く言ってよぉ!で?で?その人とはどこまでいったの⁉︎琴葉さん使って攫ってくるほど好きなんだよね⁉︎貴重なホモオオオオオオオオんほおおおおお!」

「落ち着け愚妹が!」

 声を荒らげながら床に転げ回って妄想タイムに突入している妹を横目にしながら通り過ぎ「あああああああああん!」という喘ぎ声を聞こえていないふりをして居間に入り、男を投げ捨てた。

「いでっ!」

 地についた衝撃で男が目覚める。

「起きたか」

「えっなにここどこ」

「落ち着け。俺の家だよ」

「なんで⁉︎なんで連れ込んだ⁉︎あそこで話せば良かっただろ!」

「知るかよ。此方に居られる琴葉様のご判断だよ」

 皮肉たっぷりにわざわざ丁寧語で嫌味を言う。

 その言葉が耳に入った瞬間、琴葉が自らの首をゴキリと鳴らし、戦闘準備は出来ているという意思表示。

「すみません」とただ一言謝ってお許しを頂く。

「さ、キッチリと聴かせてもらうわよ。とりあえず正座」

「あ、あの、貴方も聞くんですか?」

 先ほどまでの強気な態度が一変、借りてきた猫のように変貌する。

「あ、琴葉はもう帰っていいぞ。後、永海も連れてって、今日は泊めてやってくれないか?俺はこいつに、お前が問いたいことより大事なことを聞きたい」

「何言ってんのよ。こんな危険人物、二人きりなんかにしたら……!」

「心配すんな。大丈夫だって」

「……本当?」

「本当だ」

「……アンタがそう言うなら、いいけど。でもいい?もしなにかされそうになったら大声であたしを呼びなさいよ!」

「わーったわーった」

「む、なによそれ。……まぁいいわ。それじゃあね、おやすみ」

「おう、おやすみ」

 それだけの挨拶を交わして未だ玄関で転がり続ける永海を連れに向かう。

「お兄ちゃんとあの男の人を二人きりにしちゃうの⁉︎間違いが起こっちゃうじゃない!いや、寧ろ起こっちゃえ!」

 そんな恐ろしい声が聞こえてきた後、玄関の扉が開き、閉じた音を最後に部屋が鎮まりかえる。

 それを皮切りに、男が魔法を行使。

 昨日とは違ったデザインの剣が聖奈人の首筋に添えられた。

 少しでも首を動かせば胴体と離れ離れになる、というぐらい近い距離にある。

 その状況を見れば絶体絶命というわけだがそれは相手も同じことだった。

 聖奈人の手には、拳銃。

 銃口が男の額に向けられていたのだ。

 引き金を引けば即死、手元を少し捻れば同じく即死、とお互いの命を握り合う状況になった。

 しばらくその状態が続き、聖奈人がふっ、と笑みを漏らしたのを最後に剣も銃も二人の手から消え去った。いや、納めた。

「やっぱりか。昨日使ったときから怪しいと思ってたんだ。それ以上は使ってないだろうな?」

「あたりめーだろ。こんな力、魔女に知られたら、どうなるかわからない」

この力、というのは、魔法のことだ。魔法については後々語られることとなる。

「だな。俺もこれ以上は使ってない。これからも使う予定はない。周りの人間には知られてるか?」

「そんなの話せる奴なんていねーよ。強いて言えば、一人だけ」

「俺たちを救った……」

「魔法少女ただ一人」

 お互いの置かれた境遇を確認し、また、お互いの身の安全が確認できたところで一息。

 男をソファに座らせ、聖奈人は来客用のコーヒーを出す準備に取り掛かった。

 銃と刀剣。

 遠と近の性質を持った二人の魔法使いが邂逅したのであった。

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