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帰宅途中

 十七時。

 そろそろ全員が解散ムードに変わる。

 昨日も同じ時間で同じ感情になっていたはずだ。

 ここまで同じとなるといい加減うんざりとしてくる。

「それじゃあ解散するか」

「そうだね。そういうことで、お開きだ。また明日。今日は楽しかったよ」

「わたしも帰るね。みなくん、琴葉ちゃん、刃乃ちゃん、また明日!」

 二人が輪から離脱した。

 残っているのは聖奈人に、琴葉に、刃乃。

「刃乃、お前は家どっちなんだ?」

「家……?」

 聖奈人が刃乃の家の方向を聞き出す。

 もし同じ方向ならば、三人で帰ろうと思いついたのだ。

「もしかして……あがって……えっちなことする?」

「しねーよ馬鹿!」

「私の……小さな胸に欲情……未発達な肢体に興奮……」

「ちょ、ちょっと待て!というか、お前のどこに興奮しろってんだ!小さくねーし、未発達でもねーし!」

「……それじゃ、さよなら」

 場をかき乱し、聖奈人を陥れてるだけ陥れてそのまま帰ってしまった。

 落ち着いた様子で廃工場がある方角へと向かっていった。あちらに家があるのだろうか。

「まったく……あんなゴリラに興奮しろって言われてもできねーよ……って琴葉?」

「覚悟はいい?」

「ちょっと待て。落ち着け。今俺が何かしたか?」

「あの無垢で無口な刃乃ちゃんがあんなこというなんて、アンタが何か変なこと教えたんでしょ!」

 腕をグルングルンと大きく回し、指をパキパキと鳴らす。

「やめろ。俺は悪くない!俺は悪くない俺は悪グァバ!!!」

 本日三度目の制裁。

 今日も早く帰れそうにない。



「……どうも」

「……」

「何か言えよ」

「なんか……もういいよ君」

「は?てめぇそれ、どういうことだ!」

 なにやら昨日とは違った様子で近づいてくる。

 聖奈人はそんな男の顔面を殴打し、面食らっている間に後ろに回りこんで背中を蹴飛ばした。

 蹴飛ばされた側の男は、勢いがついていたことも相まって顔面から地面に倒れこんだ。

 そんな大きな隙を見逃す聖奈人ではない。

 すかさず男の体を押さえつけ、行動不能に変える。

「ちょ、ちょっと待て!頼むから待ってくれ!」

「あのさぁ、君さぁ、昨日あんなことしてくれたのに待つ訳ねーよな?しかも、今俺ね、すっごいイライラしてんの。なんでだと思う?」

「知るかよ!話を聞け!」

「あのね、こんなのでも女の子と遊びに行ってんだよ?それがさっきから昨日とやってることが一緒のことばっか……。挙げ句の果てにはお前みたいなボンクラの相手を今日もしないといけないなんて……」

「それこそ知るかって!」

「お前にはわかるか?この気持ち。わからんだろうな、だって友達いなさそうだもん」

 相手が動けないのをいいことに煽りまくる。

「俺が友達少ないことは関係ないだろ!」

「んで?なんでまた俺たちの前に来たんだよ。つか、お前警察にいるんじゃねーのか?」

「それを含めて話そうと思ってんのに、こんな状況で話せるかよ!そこをどきやがれ!」

「琴葉」

 聖奈人が琴葉の名を呼び、指をパチンと鳴らす。

 聖奈人の意図が通じ、琴葉が指をバッキバキ鳴らしながら男に近寄る。

 そして、男の頬スレスレのところに思い切り拳を振り下ろした。

 拳は舗装されたアスファルトを割り、くっきりと拳の大きさ分減り込んでいた。

「あ……あ……」

「言葉使いを直そう」

「だ、誰が……」

 男が否定をしようとした瞬間にもう一発、戦車の弾が撃ち込まれたかのような穴が、先ほどと逆の頬スレスレ位置にぶち込まれた。

「直します。なので話を聞いてください」

 そう言った瞬間に琴葉が腹に一撃お見舞いし、男を気絶させた。

「よし、とりあえずあんたの家に連れ込むわよ」

「なんで俺の家?というか、気絶させる必要あった?」

「文句あんの?」

「いえ」

 ギロリと一睨みされ、反論の余地なく物事が決定した。

 虎の威を借る狐という言葉の如く、鬼神のような琴葉を仲間につけ、頼もしかったの一瞬のことだった。

 しかし、ここで反論しても、肉塊がもう一つ増えるだけなのでおとなしく従う。

 琴葉が男を拾い上げる。

 小脇に抱え、体重が六十キロはありそうなものだが、平気で運び出す。

 聖奈人は担がれる男を見ながらちょこちょこと後ろをついて行き、夕日も相まってその背中に哀愁を漂わせながらその場を後にしたのだった。

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