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脳筋女の話Ⅱ

 その間に琴葉を褒める方針で行くことを決めてしまう。

「い、いやぁ。琴葉ちゃんはやっぱりすごいね!そんなのわたしじゃ思いつかないよ!」

「ああんもう、そんなことないってば!」

 なるほど、馬鹿である。

「十二夜ちゃんは秀才だね。アインシュタインの幼少の頃とエジソンの最終学歴を混ぜたような頭の良さがあるよ」

「そう?流石あたしね!もっと褒めていいわよ!」

 エジソンの最終学歴は小学校中退である。

 体をくねくねと捩らせて喜ぶ。

 君はバカだと暗にほのめかされているのに。

「ということだ。さっさと聖奈人君に追いついてしまおう」

 話を無理やり打ち切ってそそくさと早歩きで聖奈人を追いかける。

 琴葉は訳がわからないという風に首を傾げるが、持ち前、というより生まれ持ってしまった脳筋がどうでもいいと判断し、二人を追いかけさせた。

 一人ぽつん、と取り残される刃乃。

 小首を傾げ、琴葉がしたように後から追いかける。

「南宮聖奈人に問題……なし」と不穏な事をぼそりと呟いて。


 ゲームコーナーに到着した一行は、特に迷うこともなく、真っ先にシューティングゲームへと向かった。

「見てるだけでいいのか?」

「うん。見てる……だけでいい」

 コインを投入しながら刃乃に尋ねる。

 ここを指定したのは刃乃なのだが、当の本人に何もする気がないのが些か気になっているのだ。

 釈然としないが一人でゲームを開始しようとした時、銃が聖奈人に挑戦を仕掛けた。

「なら、ご一緒していいかな?勿論、勝負で」

 強者臭を放ちながらピン、と指で百円玉を弾く。

「スコアでか。ふっ、いいだろう」

 上には上がいるとはわかっているものの、そこそこの自信が聖奈人にはあった。

 ぶっちゃけて言うと、そこそこと言うよりは絶対の自信だ。

 昨日は琴葉の前で一応向上心を見せたが、あの時褒められたことによって天狗になっていたのだ。

 モテない男子中学生が女生徒に「かわいいー!」とお世辞を言われて勘違いし、そこからかわいいキャラを目指した結果痛々しい学校生活を送ることになるという境遇に陥るのと似ているように思える。

 似てないか。

「ふふん、これでも銃の扱いには自信があるほうなんだぜ」

「そうなのかい?でも、所詮自信があるほうという曖昧なもの。こんな苗字と名前に生まれついてしまった故に周りからこういうゲームが上手いのだろうという目で見られる度にその期待に沿えるレベルの絶対的な実力には敵うまい」

「随分と自信があるようだなぁ……。へし折ってやるよ、その高い鼻をな」

「調子に乗っていると痛い目にあうよ?」

 その言葉を皮切りに二人の間で火花が散る。

 一刻も早く聖奈人をボコボコにしたい銃は無駄に強い力でコインを機体に投入した。

 筐体がグラグラと大きく揺れたのちにゲームがスタートされる。

 昨日、聖奈人と琴葉がやったように一人一人でゲームをすると、違うステージを選択したとはいえ出てくる敵の量は基本的に同じなので、極端な話をすれば二人が全ての敵をヘッドショットし、ラスボスも同じように倒せばスコアは一緒になる。

 だが、協力プレイと言う名の対戦ならばそうもいかない。

 画面に出てくる敵は自分の得点源であり、また相手の得点源でもあるのだ。

 より多くの点数を取るため、少しでも相手に点数を取られないために相手の点数獲得を妨害しなければならない。自らの手で。

 一人用とは違い、相手よりもコンマ一秒でも早く撃たなければ負ける。

 集中力がものをいう勝負が始まろうとしていた。

「俺に勝負を挑んだことを後悔させてやるよ」

 オープニングをすっ飛ばし、ゲームが開始される。

 白熱する二人の間には誰も割り込むことは出来ない。



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