表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/59

突き抜け

 それからは苦戦の連続だった。

 女性陣がポンポンと買い物をし、聖奈人も金を使わないといけないという空気になっているのだ。

 持ち金がないので節約しなければいけないが、何もせずに空気を白けさせる訳にもいかない。

 泣く泣く財布を軽くしていく。

 もしかしてこんな事が毎日続くのかと疑問を抱いた。

 同時に、お金は多めに持っておこうと心に誓う。

 肩を落として女性陣の後ろをとぼとぼと歩く。

 きゃっきゃきゃっきゃと楽しそうにしている銃たちを見ると、どうでもいいという気分になるも、俺の意見を無視しやがってと、恨むような気分にも襲われる。

 複雑な気分のまま恨めしくも、和やかな目で一行を見つめていたが、その様子に気がついたのか刃乃が聖奈人に目線を向ける。

「……な、なんだよ」

 無表情で見つめられ、見た目の事も相まって殺されるんじゃないかと身が縮む思いでいた。

 ところが、何も言わず、行動せずというところを見て、警戒を解いた。

 しばらく目が合ったまま無言が続きくが、先に聖奈人が折れる。

「つまらない?」

 無表情のまま首を傾げ、質問をしてきた。

 思わぬ事を不意を突かれて聞かれ、目をぱちくりさせる。

 他意があるのか、どういう意図かと考えるが、刃乃の巨大化した女性特有の影の下に見えた純粋な目を見て何もないのだと悟り、すぐに返答を刃乃へと返す。

 何故だか、本当に不思議と、目の前の女に何かを話すことに抵抗はなかった。

「いや、楽しいぞ」

「そうは見えない」

「友達と遊んでるのに、楽しくないなんてことがあるか」

「友達?」

「そうだ。琴葉に、佳凪太に、銃、それに刃乃、お前」

「……私?」

「勿論。刃乃はそうじゃないのか?」

「私……私は…………」

 口を開き、何かを言おうとしたがその先が聖奈人の耳に届くことは無かった。

 気が付いたのだ。話す二人の間にいつの間にか銃がいたことに。

「……何してんだお前」

「聖奈人君は女ったらしなんだね。今日初めて喋ったであろう女の子を口説くなんて、大胆にも程があるよ」

「……お前には今の会話が口説いてるように見えたのか?」

「全然見えないね」

「なら適当なこと言ってんじゃねーよ!」

 そして「ふふっ」と何かを誤魔化すように笑う。

 次いで琴葉と佳凪太のいる方を見た。

 すると、何故か大変お怒りになった琴葉様が鬼ような形相でこちらを見ていた。

 一方佳凪太は、笑ってはいるものの、目に光がなく、なにやらぶつぶつと不穏なことを呟いている様子だ。はっきり言って怖い。

「……どうした?今回は俺は何もしてねーぞ?だから落ち着け」

「そうね。遺言なら聞くわ」

「話になってないよおおおおおおお!」

「うるさいわね、殺すわよ」

「きゃあああああああやめてえええええええ!」

「女の子見たいな声出してんじゃないわよっ!」

 拳が頭部に向けて振り下ろされた。

 避けることすら叶わずに聖奈人に直撃。

 琴葉の拳の威力は聖奈人の体だけに留まらず、それは床にまで被害を及ぼす。

 大きな音を立てて聖奈人の体が床を突き抜けて埋まった。

「あが…………」

 あまりの威力に即失神。

 体が半分埋まったままひんやりとした床にぺたんと張り付き、這いつくばる。

「行きましょ」

 地に伏せた聖奈人を一瞥してから踵を返し、スタスタと一人歩いていく。

 琴葉の異常なパワーを目の当たりにした銃は顔を真っ青にする。

 刃乃も少しは驚いているようだ。

 佳凪太は「みなくんが悪いんだから……みなくんが悪いんだからね……」と未だ呟いている。

「お客様⁉︎どうなさいました⁉︎」

 今の轟音を聞いて店員が聖奈人へと駆け寄った。

 それに伴って野次馬集団が聖奈人を取り囲む。

 佳凪太達も最初は見ていたものの、今聖奈人の味方についたら自分が琴葉の餌食になると思うと怖くなり、見捨てた。

 一方、見捨てられた上に一人野次馬に囲まれた聖奈人は無意識のうちに言葉を発していた。

「すみませんでした」と。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ