表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
13/14

反省会 怪盗は何を盗む

 ここは家具工房。そこには似つかわしくない人物が語り出す。

「影の主人公、『通称』怪盗ホチキスが司会を務めます。」

「はい!先生!」

 工房の主、高城春樹が勢いよく手を挙げた。

「なんでしょう。それと私は先生ではありません。」

「『通称』は、外せないのでしょうか。」

「無理です。」

「そうですか……では、せめてホチキスさんでいかがでしょうか。」

「それならば親近感がありますね。それで行きましょう。」

「わーい。」

「そしてあなた、脇腹君。」

「いいえ、私は高城です。高城春樹、またの名はバラーです。愛の戦士でも構いません。」

「駄目です。ここでは略さずに、脇腹君と呼ばせてもらいます。」

「さっぱり分かりませんが、痛み分けということにしておきましょうか、ホチキス先生。」

「そうですね。」

 二人が謎の舌戦を終える頃、西條令と替え芯転売屋さんの教頭が入室した。

「皆さん揃ったところで、ここでは、これまでを振り返って反省して頂くことにしましょう。」

 一同は神妙な面持ちで、ホチキスさんの開会の弁を聞く。

「ではまず、第五話について。西條さん。」

「はい、西條です。次期生徒会長候補の西條令です。」

 西條は、はきはきと名乗り挙げた。ホチキスさんは、にこりと笑い、引き継ぎさながら続ける。

「風紀委員長もよろしく。」

「現会長のような兼務は、私には難しいので、高城にお願いすることにしています。」

 それを聞いたホチキスさんは、脇腹君に小声でエールを送る。

「健闘を祈ります、伴侶さん。」

「ぐっはあっ!!」

 脇腹君が悶絶した。西條は聞き取れなかったのか不思議がるところ、ホチキスさんは質問へ移る。

「西條さんは、校長先生への救援依頼で、致命的なことを忘れています。」

「……なんでしょうか。」

 西條は声を少し低めて返す。

「被害未遂の女生徒への救護を、求めなかったことです。」

「私が介抱するつもりでしたから。」

「回答早いですね。しかし矛盾があります。」

「ぐっ。」

 息を詰まらせる西條。ホチキスさんは、西條の当時の役割を説く。

「私と対峙しているときはもちろん、また、私を見失ったあと、あなたは警戒を続ける必要がありました。」

「……」

 西條は沈黙した。そこへ静かに、ホチキスさんは核心の質問を投じる。

「あの状況での、あなたの見解をお伺いしたい。」

「……いつ再び襲撃が起こるか分からないあの場面では、私ぐらいしか介抱することはできませんでした。」

「苦しい答えですね。」

「何をおっしゃりたいのですか。」

 西條は憮然とした。ホチキスさんは一呼吸置いて、看破する。

「……ずばり、言いましょう。あなたは、彼女 (のフトモモ)をモノにしたかったのでしょう!状況を利用して!」

 いえ、ただの嫉妬でした。まさにホチキスさんのしようとしていたことですね、単に。しかし。

「……いでっ!」

 脇腹君に、西條のひじ打ちが決まっていた。西條は恥ずかしさと悔しさから八つ当たりした模様。すると脇腹君はスイッチが入ったか、がなり出す。

「わたしは、わたくしは、……って俺はそんな言い方しねえ!唐突に俺の思考回路を破壊するな!俺は、俺は、……西條 (のフトモモ)が好きだ!」

 そしてこの脇腹君の不意打ちに、西條は思考がトンだ。自爆なのか何なのか?

「はい、では次に参りましょう。教頭先生。」

「はい、教祖様。」

 不意打ちと自爆で別世界へ消えていく二人を差し置き、ホチキスさんは教頭へ質問した。

「あなたは、なぜ教頭として頭角を現せたのですか。」

「校長先生と仲良くなったからです。もう、ラブラブですからー。」

「教育委員会に報告します。」

「嘘です!本当のことを言います!」

「素直で宜しい。」

 緊迫した場面を自ら演出するのが教頭だ、ホチキスさんはそう思ったとか。教頭は、とつとつと述べ出した。

「地道に、日々のお小遣いを節制しながら、教育者としての、管理者としての、自己啓発プログラムを受け続けたからです。」

「なるほど。あなたは実直に精進を重ねた、まっとうな社会人だったと。フトモモ教に入る前は、ね。第五話での校長先生の推測は、的を射ていたのですね。どうも第五話は、示唆に富んだシナリオだったということでしょうか。話数的にも、ほぼ真ん中。ねたばらしを始める、ターニングポイントと言えましょう。」

「かなり無理矢理くさいです。」

 教頭が突っつく。ホチキスさんも頷く。いや、頷くな。

「そのようです。伏線を回収できていないとか、単に、推敲が甘いだけのことでしょう。ほかの話にも言えますが。」

「次行かせてください。」

「おおっと、校長先生ではないですか。あなたにも質問があります。」

「ありがとうございます。」

「不躾ながら、あなたはいつも影が薄くて、いてもいなくてもどうでもいい感すらありましたね。そこで質問ですが、あなたは校長室で席を立たずに、普段は何をなさっていたのでしょうか。」

「実は、この話そのものを構想していました。」

「なんですと!?」

「もともと怪盗ホチキスの台本は、私があの机で書きしたためたものです。」

「じぇじぇじぇ!」

「最上級出た!」

「しかし、その怪盗ホチキスの台本自身が、場面を、話を隠してしまったため、実況する必要に迫られたのです。だから私は、あの講壇を離れられませんでした。」

「講壇?……それに、隠したとは一体……」

「台本『怪盗ホチキス』は、その内容を隠させました。」

「どのようにして、隠させたのでしょうか……」

「ホチキスで、綴じさせたのです。」

「……何を?」

「台本の、開いて読む側の端を。」

「意味が分かりませんが。」

「つまり、台本を仕上げたとき、満足して興奮していた私は、製本に夢中になり、右綴じとすべきところを、台本の右側も左側も、綴じてしまったのです。」

「……はあ?」

「そのため中身が読めなくなり、作者自身が講壇で、うろ覚えの口頭陳述せざるを得なくなりました。」

「アホですね。」

「これが真実です。台本『怪盗ホチキス』自身は、何も盗んでいないのです。内容を盗ませたというか、隠させたのです。」

 そうなんです!いや、……なんだ?この反省会……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ