ワタシだけのメシア
おいこら……。
人の目の前で堂々とナンパしてんじゃねぇよ。
俺、田中太郎、は目の前のナンパにイライラしていた。
最近、イライラする事が多くなった。
まぁダサ男になりきってるからかもしれないけど。
教室でも隣の奴がうざったいし。
若いのに十円ハゲまで出来てしまう始末。
俺はいわゆる元ヤンで、いわゆる今はダサ男だ。
「あ? ダサ男みてんじゃねぇよ。」
ほら絡まれた……。
あたし、ミサキはイライラしていた。
「何なのあのダサ男ぉ!!」
「まぁまぁ」
なだめる友達の声もそこそこにあたしはダサ男、田中太郎に思いをはせた。
田中太郎。あたしのクラスの転校生。そして、隣の席。
今日も……。
「田中くん」
「ビクッ!!……は、はい。」
へ、へたれぇええ!! なんでいちいちいちいちビビるの!? どもるの!?
むっかつくっ!!
「あたしなんかしたぁ!?」
「(そういう、気が強いとこなんじゃ……)な、なんなんだろうね?」
せかいのへいわをまもるためぇ
ナンパに睨まれている時にとっても理解不能だと思われる着信音がなった。
って俺かっ!!
「めんどくせぇな……」
俺はブツブツつぶやいた。
端からみたら危険人物だな。
「おめぇら人の目の前でナンパしてんじゃねぇ!!」
そう言ってぶっ飛ばした。
今まで俺をあざ笑っていた目が恐怖にそまった。
だからケンカは嫌なんだ。
俺のせかいのへいわは守られてねぇよ……。
へたれ上等。
ダサ男万歳、だ。
あたしは無性に困っていた。
これ、どうしよう……。
何故こうなる。
「おいねぇちゃんどうしてくれんだ?」
ぶつかっただけ。なのに。
「骨折れた」
まてまてまてぇい!!
「ちょっと!! あたし女よ?? 女にぶつかって骨折れたはないでしょう!?」
どんな軟弱ものよ! とはさすがに言わなかった。見るからに強面なのでできればかかわりたくない。
「いや、いてぇ……。骨折れた」
そして最初に戻り。
「おいねぇちゃんどうしてくれんだ?」
こういうとき都合よくカッコ良く救世主様がどぉーんぴかぁーんきらきらきらって感じでこないかなぁ……。
「俺のせかいのへいわは無理なんかなぁ……」
声が聞こえた。
そして……。
「てめぇら邪魔」
何度も進行方向を見る。
目をこする。
やはり現実か……。
「現実、ってムカつくな」
イライラ増加中。
ハゲ範囲増加中……それは困る。
「俺のせかいのへいわは無理なんかなぁ……。てめぇら邪魔」
蹴飛ばした。
ダサ男必須のメガネを外して、ケンカ。
元ヤン田中太郎様なめんなよ!?
気づいた時には俺、勝利。
流石おれ!
よし、帰ろう。
「……とう」
後ろから声が聞こえた。
が、ひどく面倒くさいため無視。
してたら。
「ありがとうって言ってんでしょー!!ヒーローとか救世主なら最後までなりきりなさいよっ」
鞄投げられてキレられた。
何故?
後ろ姿は田中太郎。
確実にあれは田中太郎だけど。
「ありがとうって言ってんでしょー!!ヒーローとか救世主なら最後までなりきりなさいよっ」
キレた。
普通女の子置いてスタスタいく!?
まじでデリカシーないっ!!
でも、ま。
へたれでも助けてくれたことには変わらない。
へたれの救世主ってとこかしら?
そこは感謝しないとね。
―――――
「どう委員長!!」
「却下!」
「え! なんで!!」
「かっこよくない! セリフ少ない! 登場人物少ない! そして!! かっこよくない!」
大事だから二回言ったわ、と言い張る委員長にあたしとソイツは溜息をついた。
2011/06/23
前作を書いたあとに勢いで書いた作品です。
よろしければ感想いただければ幸いです。
芽実