魔女と狼男と吸血鬼04
ガコンッ!!
急に大きな音がしたので、飛び起きる。
いつの間にか寝入ってしまっていたようだ。
周りを見渡すと、目の前に倒れた椅子とそれに片足を乗せた尚。少し離れた位置に呉柴くん。
いったい何があったのか、尚の表情が怒りに染まっている。それに対して呉柴くんは申し訳なさそうなしゅんとした表情。
「尚?」
一触即発の空気だろうが、さっき起きたばかりで状況が分かっていない私はそれを無視して、いつも通りの調子で尚に声をかける。
その声に反応した尚は口を曲げて悲しそうな顔になった。
誰か説明を!
と思っても、尚と呉柴くんしかいないし。2人は口を開きそうに無い。
それなら
「・・・帰ろうか。」
言えないなら、私に残った選択肢は、帰る、しかない。
3人もいるのに誰一人として口を開かないまま、数分ただただ帰りの道を進んでいた。
帰りは下り坂なので、来る時より帰るときのほうが呉柴くんは楽そうだ。
だから、まあ、気まずい。
呉柴くんが話するのも辛そうな様子なら無言は堪えられるが、元気な3人が無言って。
しかも1人はなじみ無い人・・・。
何か明るい話題はないかと思い、尚に向けて話しかけようとした。
が、その尚によって私の声はさえぎられる。
「俺達、ちゃんと協力するから。お前のツガイ探し。」
「・・・うん。ありがとう。」
いきなり急な話題!
と思ったが、それは私だけらしく2人にとっては教室からずーっと引きずっていたようだ。
喧嘩をしていたのだろうか。それならきっと、この言葉で仲直りできたのかな。
尚の方をちらりと見ると。尚もこちらを見ていたようで、バッチリと目が合う。
じーっと何かを訴えるように見つめられる。
でも、残念ながら尚の情けない目線を受けても何も言いたいことが伝わってこない。
小さい頃から一緒にいたけど、目と目で通じ合うほどの仲ではまだないようだ。
首を傾げると尚が右手を出してきた。
「手、繋いで。」
今日はおかしい尚だったので、無言で握り返してあげる。
帰りはずっとこのまま。傍で見ていた呉柴くんは苦笑していた。
「僕ってもしかして、嫌われてる?」
微妙に開いた空間を見つめながら呉芝くんが呟いた。
「いや~嫌っては無いけど。」
「吸血鬼ってだけで、拒否反応が・・・ね。」
尚の言葉を引き継いで私が締めくくると、呉柴くんはビックリしていた。
「え!吸血鬼に拒否反応?なんで?」
そうか。呉柴くんは今まで魔女とか狼男とか人魚とか、魔力の高い種族にあってこなかったんだね。
そりゃあ、ツガイ探しはなかなか難しいだろう。
「魔力の高い種族は吸血鬼の粘着度の高さを語り継いでいて、知らぬ間に体が逃げるようになっているんだよ。」
一族の中に被害があった種族は総じて語る。やつらには近づくな!と。
気に入った血がみつかれば、どんな手を使おうとも、やつらは必ずツガイにする。
吸血鬼は人間含むほかの種族より個々の能力が段違いに高く。
地位もあり、金も持ってる、容姿も高い。
ありとあらゆるものを使って追っかけてくるのだ。
「そうなんだ。粘着・・・知らなかった。皆、出会った時にすでに意識してたって、
想い会ってたって言ってたけど。そういうこともあるんだね。」
大抵、金・地位・容姿、がよければ相手を探すのに苦労しないだろうけど。
魔女とか狼男とか人魚とか、変なの多いから。
私は違うけど。
でも、秋さんみたいに魔女でもイケメン大好き!って人がいるから諦めず頑張ればいい。
「うちの学校には人魚とか猫又とか色々いるから、紹介してあげるよ。本人が嫌がらなければ。」
「ありがとう。」
私がポンッと呉柴くんの肩を叩くと、その手を握られお礼を言われる。
5秒待ってみたが、手は握られたまま・・・。
「あの、呉柴くん。手を離してください。」
「あ!ごめん・・・。」
呉柴くんがゆっくり手を放してくれる。
そして緊張のためか、もう片方の手を握っている圧力が増して痛い。尚、お願いだから手の骨は砕かないで。
こわばった尚の顔を見て呉柴くんが慌てて弁解をする。
「違うんだ!ただ、やっぱり、魔力が多い人の傍にいるのは気分が晴れるって言うか。力が戻るって言うか。でも、大丈夫。君達2人の仲を裂こうとは思わないから。」
その言葉に尚がびくりと体がはねて、反応する。
「仲!?2人の仲!?いや。ちがっ」
「本当のこと言ってね。僕はさっき真理が言ったように。きっと、好きになると諦めないよ。」
尚が赤くなったり青くなったりして面白い。
ていうか。
「もう、名前呼び捨て・・・。」
私の言葉に今度は呉柴くんがあわてる。
「え!?ごめん。女の子って名前で呼ばれる方がすきなんだと思ってた。」
さすがイケメン。周りの女子が言うんだろうね。名前で呼んで!ってハートつきで。
「いや。まあ、いいよ。私達、”友達”になるんだし。」
”友達”を強調して言ってみる。
私がにっこり笑顔で言うと、その意味を正しく汲み取った呉柴くんは先ほどの申し訳ないというような態度から一転して、すっきり晴れやかな表情へ変わる。
「でもさ。もし、真理が僕のことを好きになったらいつでも言ってね。きっと歓迎できると思う。
長い間一緒にいたら、好きになってくれる可能性ってあるよね?
もちろん、僕がツガイを決める前までにね。」
呉柴くん・・・。イケメンなのに、魔力が強いだけで私を歓迎とか。
今の状況は彼にとってよっぽど苦しいのだとは思うけど、そういう事言うから魔力の強い人は吸血鬼を敬遠するんだよ。ツガイ選びは慎重にしないと。
まあ、けど、なるほど。普通に私が呉柴くんのことを好きになるってことか。
彼はいい人っぽいし、その可能性は無くはない。
けど、やっぱり小さい頃からの植えつけられた恐怖はぬぐえないと思うけど。
それを本人の前で言うのもどうかと思うから、一応話にのっておく。
「そうだね。そうなったら遠慮なく言うっっぃったぁ・・・!」
尚に掴まれている手が潰れるかと思った。
そんなこんなで、私達3人の”呉柴くんのツガイを探す”会が結成され。
私達の仲もここからスタートしたのだった。




