魔女と狼男と吸血鬼03
そして、その男の子の転校初日。
なんと、私達2人はその子と一緒に学校へ行けと秋さんからご命令があった。
その男の子は私の家まで来てくれるらしい。
玄関先でそわそわして待っていると、ポケットからメールの着信音が聞こえた。
取り出してみると、一通のメール。
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送信者:白賀山 尚
件名:おはよっす(○゜ε^○)v
本文:実はさー。母ちゃんに聞いたんだけどさー。
例の件に俺が関わるのって母ちゃんが
そうしてくれってこっちから提案した
らしい。
意味分からん。
てことで、俺の方は強制じゃないと判断
しました。
PS.今日は天気が良いので散歩がてら学校に
行こうと思います。
今日は一緒に登校しません。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
う ら ぎ り も の !!!!
携帯を握り締めている手がプルプル震える。
あの駄犬!!
図体ばっかりでかくて、心臓は豆だったようだ。
信じられない・・・!
怒りに燃えていると、綺麗ないい声で名前を呼ばれた。
「瑠日真理さん?」
勢いよく後ろを振り向くと、モデルかと思うような美少年が立っていた。
なんだろう、キラキラとした幻影が見えそうだ。
一瞬だけ見とれてしまったが、急いで理性を働かせる。返事をしなくては。
「は、はい。そうでございます。」
「・・・僕は呉柴薫っていうんだ。よろしく。」
私の変な返事をスルーした美少年、呉柴くんは何故だか私の至近距離まで近づいてきた。
「あの・・・?」
「良いにおい。手をつないで登校しても良い?」
「遠慮します!」
ささっと距離を開けると、呉柴くんは残念そうに苦笑した。
初日の美形転校生と手をつないで登校って。それ、どんだけ騒ぎになるか分かっているのだろうか。
初対面の人とどんな話をしたら良いのだろうかと心配していたが
話どころか歩くのでも大変そうな呉柴くんにそんな心配はいらなかったようだ。
少し距離を開けたところから、「ファイト」と声をかけることしか出来ない。
時々、「手を・・・」と呟く声は無視します。
いつもなら15分の距離を、25分かけて学校に到着した私達は職員室へ行き、呉柴くんを無事職員室に送り届けることに成功した。
その後、廊下を走り教室に付いた私が一番にした事は、無言で尚の頭を叩くことだった。
「痛い!」
「私の心の方が痛かったわ!」
先生が来るまで言い合いは続いたが、私の怒りは放課後まで引くことは無かった。
秋さんからの命令で帰りも一緒に帰らねばならないらしく、今度こそ尚にも付き合わせようとしたが
「ごめん。委員会だから。」
と満面の笑顔付きで言われた。
委員会なら仕方ない。と思いつつも簡単に許すのもどうかと思ったので
真顔で「許さん」と言い、呉柴くんを迎えにいこうとカバンを持ったところ
尚が焦った様子で私の腕を掴んでとめる。
「ごめん!本当ごめん!
で、でもさ。狼男も魔力強いんだって!
万が一、気に入られでもしたら最悪だろ!?男同士だぞ。」
尚の家系でそういうことがあったらしく。
他の狼族より吸血鬼に対して敏感になっているようだ。
「じゃあ、私なら良いって?友達見捨てる?普通。」
「え。真理の所なら逃げ切れるだろ。」
「吸血鬼相手に逃げられるわけ無いじゃん!」
「え。そうなの?」
「そうなの。だから、明日から一緒に登校だよ。一蓮托生!」
「・・・わかった。」
よし。これで、明日からは安心だ。やっぱり一人より二人の方が気分が軽い。
「でも、委員会は本当だから。ごめん。」
「分かってるって。」
「待っててくれたら一緒に帰れるけど。」
「なんだ、すぐ終わるの?」
「えーと。一時間ぐらい。」
ながっ!美少年と一緒に一時間何をしろと?
「いや。普通に今から帰るよ。」
「今すぐは無理じゃないか?」
「?」
「まあ。下手したら俺の方が早く終わるから、待っといて。」
じゃあ。と言った尚は走って委員会へ向かって行った。
尚の言葉に首を傾げつつ、呉柴くんを迎えに、5組から1組の教室へ行くと人だかりが出来ていた。
1組と5組は校舎が違うから気付かなかったが、どうやら朝からお祭り騒ぎとなっているようだ。
見知った女の子に声をかけ、呉柴くんの居場所を尋ねてみる。
「あの中心に呉柴くんがいるの?」
「ううん。あそこには呉柴くんの席があるだけだよ。」
席?本人じゃなくて?
「え。じゃあ、呉柴くんは?」
「呼び出されてるから、居場所は分からないなぁ。」
呼び出し!?
しょっぱなから何をしたんだ。
私が眉を寄せると話しかけた女の子も怒ったような顔になる。
「彼氏がいる人は参加する権利は無いからね。」
「え?」
「この学校にはイケメンがいっぱいで、それ目当てで入学して来た女子が沢山いるから
まあこうなるよね~。」
佐々木さんが急に話に割り込んできた。
怒っていた女の子は佐々木さんの言葉を聴くとぱっと笑顔に変わる。
「そうなの!見た目だけじゃなくて、雰囲気?なんだろう。引き付ける何かを持った人が多いよね。」
それはきっと魔力とか種族特有の何かだろう。
「のんびりまってても相手は来ないし、逆に捕まえる気で行かなきゃいけないんだよ!
転校初日だろうが、見た目に差があるとか、そんなの気にしてたら負けるんだから!」
そう女の子が締めくくって話は終わった。恋する女はたくましい。
女の子は集団の中に入っていったが、佐々木さんはどうやらこの騒ぎに混じろうとはしないらしい。
別方向へ歩いていく。
「佐々木さんは興味なし?」
「家に帰って閉じこもってなきゃね~。占い師さんにそういわれたから~。」
佐々木さんは私に手を振り帰っていった。
・・・私の占い、意外に信じてくれてたりするのかな?
5組の教室に戻り、自分の席に座り、上半身を机に横たえる。
「一時間かぁ。いや、そもそもいつまで待てばいいんだろう。」
大きくため息をつき。目を閉じた。




