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魔女と狼男と吸血鬼

「えーと、佐々木さんの今月の運勢は先月よりも良いみたいです。

宝くじとか買うと良いかも。でも外出は控えたほうがいいかな。」


学校の昼休憩中。

ほどほどに仲が良い数人のクラスメイトに、月一ぐらいの頻度で占いをしている。


「え、じゃあちょっと買ってみようかな~。

でも、宝くじかあ~。今月、買いたいものあるんだ。あ、外出は控えるよ。予定もないしね~。」


その言葉に私は微笑む。まあ、そんなものだろう。

占った人、数名で集まってきゃあきゃあ騒いでいるのを遠巻きに見る人や、無関心な人、様々な人がいるが

この占いの事を本気で信じている人間は居ないだろう。

先ほど占った人達だって、100%ではなく、当たると良いな。ぐらいのゲーム感覚でいるだけだ。


人間である生徒は、私が”魔女”だと思うはずがない。


”人間”であれば。



「まあ、占いしか出来無い魔女だけどね。」

真理(まり)ー!俺も占ってくれよ!」


小さく呟いた私の言葉を打ち消すように、幼馴染である男の声が教室中に響いた。


(なお)くんは元気だねえ~。」

佐々木さんが駆け寄ってくる尚のために席を離れ、その空いた席に尚がどかりと座る。


「真理、占ってくれよ!」

「また?昨日も見たはずだよ。そうそう変わるもんじゃないんだから。」

「変わらなくても、もっと何か見えるかもしれないだろ。」


頬を膨らませて抗議する様子を周りのみんなは笑うけど、身長180cmの大男がそんな素振りを見せたってちっとも可愛くないし笑えない。


「真理~!」

「わかりました。わかりました。」


目の前の男の子が必死になるのは私の占いを100%信じているから。

そして、私の正体が魔女だということを知っているから。


この世界は魔女の他にも、狼男、鬼、天狗、猫又・・・などなど

色々な生物が人間社会に埋もれてひっそりと生活をしている。


私のような魔女は他の種族より人間に近いため、生活するのに困ることはほぼ無くて、本当にひっそりと生活が出来ている。

人間+少し特殊な能力が付いている=魔女だと思えば、ほら、何の問題も無いじゃない(?)


他の種族のように、月の夜に変身するわけでもないし、魂を求めてうろつくことも無い、羽が生えてるわけでも、尻尾が生えてるわけでもない。

それに、道端で突然倒れるようなことも、怪我や病気を持っていない私としてはそうそうおきる事じゃない。


でも、目の前で必死になって占いの結果を待っている狼男はひっそりした生活を送ることが難しく、とても苦労している。

満月が近づくと、力が数倍になって、制御が出来ず、よく物を壊してしまっているから。

先週は新品のゲーム機を壊してしまい、泣いていた。

力が出てる間ぐらい我慢すれば良かったのに・・・。



だから、学校帰りに道の脇でうつ伏せに倒れてピクリとも動かない吸血鬼を見つけた時、私は心底同情した。


「真理・・・。あれ、仲間だよな。」

「・・・うん。」


尚とお菓子を買いにスーパーへ寄ったその帰り、大きい道を避けて公園を通り過ぎようとしたところ。倒れている吸血鬼が目に入った。

外見が吸血鬼と分かる格好をしているから正体が分かったのではなく

私達は纏っている気配から人間かそうでない者か、お仲間同士でなんとなく分かってしまうのだ。


帰りに寄ったスーパーの袋を抱えて、さてどうしたものかと思案する。

どうせ貧血だろうから、仲間が迎えに来る前にさっさとこの場を離れた方が良い、とは思うのだけど。

同情心と、倒れた人が学ランを着ていることによって、私達はこの場を何事も無かったかのように去っていくことが出来ないでいた。


尚が腕を組み、うーん、と唸る。

「未成年でも男だから平気か?」

「でも、吸血鬼だよ。」

「だよな。」


吸血鬼は他の種族より体が丈夫で、怪我をすることも病気をすることも倒れることもめったにない。

だから、この吸血鬼はただ単に血の摂取量が足りなくて、このような事態に至ったのだろう。


尚は組んでいた腕をといて、自分の手のひらを見つめてつぶやいた。

「血をやった方がいいのか。」

「本気で言ってるの?私は遠慮するよ。」

「だな。俺も。」


血を少しでも与えると元気になるのは分かっているが、とある理由から、それは絶対に出来ないのだ。

命に影響があるのならまだしも、動けなくなるだけだからそこまでしてあげる義理は無い。


「でも、見て見ぬ振りはまずいだろうな。ほら、あの顔。」

「いや。いいよ。いいよ。見ないよ、私は。」


吸血鬼という種族は総じて顔が良い人達ばかり。

ただ倒れているだけなのに、スタイルのよさ、サラサラの髪、きめ細かい肌、上げればきりがないが、とにかく美少年だというオーラが出まくっているんだ!

吸血鬼とは言えども未成年、このまま放っておいて力の無い吸血鬼に人間が悪さをしないとは限らない。


「しょうがない。」

キョロキョロと周りを見渡すと公園が目に付いたのでその中に入る。尚も私の後に続いて公園に入る。

手に持った袋を脇に置きベンチに腰掛けて一息を着くと、倒れている吸血鬼が見えるように体の位置を少し調節して座りなおした。


尚は不思議そうに首を傾げる。

「ここで何すんの?」

「ここで、仲間に引き取られるのを見届けてあげるの。」

「おお!ナイスアイディア!」


未成年の吸血鬼は親や一族によって監視されているらしく、普段からGPSを持ち歩いているらしい。

だから、迎えが来るのも何時間もかからないと思い、見届けるという、無難で一番簡単な方法をとったのだ。


私の作戦に同意した尚はカバンを地面に置いて、勢いよく私の隣に座った。

そのせいでベンチがギシリと嫌な音を立てる。


「図体でかいし、満月近いんだから少しは行動に気をつけてよ!」

「まあ。まあ。」

「そんなんだからゲーム壊すんだよ。」

「・・・。」


スーパーで買ったジュースを飲みつつ、尚とおしゃべりしながら様子をみていると

発見から20分後にはお迎えが到着して、無事に学生吸血鬼は車で運ばれていった。

一件落着だ。


「吸血鬼様って感じのお綺麗な集団に高級そうな車だったな。」

「うん。さ、帰ろっか。」


と、私達はこの時点でこの件はもう終わりだと、何の疑いも無く思っていた。

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